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※リーベ視点
「停戦………だと?」
ここに来てまたしても驚かされる。魔王個人と魔族全員が休戦協定を結ぶというのは本来であれば滅茶苦茶な提案だし一蹴するような話だが先ほどの光景を目にしては話が変わる。
「条件は………なんだ?どのみち魔王様のご意志を確認するまでは回答はできないぞ」
「そこはちゃんと融通を効かせるから安心していい。今、この場においてリーベちゃんが軍を引き上げてくれればこれから設ける回答期限まで停戦と同じ扱いにする。
停戦の条件は3つ。1つは俺の邪魔をしないこと。裏で糸を引いてたりしたらアウト。2つ目は俺の指定する者や建造物に危害を加えないこと。3つ目はこの休戦協定はお前達の魔王が直接交渉にくることだ。
一応ざっくりとした要望はこんなところ。後は交渉次第で譲歩したり追加したり、といったところだな。回答期限までにこの条件を破ってもアウトだからちゃんと周知しておくように、
………敵に回したくないなら、な」
聞く限り決して無茶苦茶な要望は1つもないし、人間への侵攻を止めるつもりもないというところ。これだけの条件で今後この男を敵に回さずに済むなら安いものだ。
「………分かった。一先ず軍を引き揚げ、魔王様にこのことを伝える。
ナイアス、異論はあるか?」
この場において自分に並ぶ指揮権を持つのは同じ八星魔将のナイアスのみ。意思確認をすると首を横に振るだけで………あぁ、心を折られたか。
「じゃあ1週間後にここにいるからその気があるならここにおいで。これでいいかな?」
「………問題ない。一応、念のための確認だが1週間後にここに魔王様が来られない場合は―――」
「お前達は俺の敵ってことになる」
「分かった。では1週間後にまた会おう」
彼に背を向けて軍へ戻る。2度も彼に邪魔されてしまったが………ある意味では都合がいい。
戻り次第幹部を集め、今回のことを伝えると全員快諾。当然といえば当然か。
「此度の戦いはあの男………もう一人の魔王、ジークの前に敗北したが停戦の打診があった以上致命的な敗北ではない。皆、ここは耐え忍ぶのだ」
帰路にて私は考えていた。2度も私達を見逃した理由。前回の戦いであの男に頼まれた伝言は一応伝えたが当然一蹴された。戯言だと、八星魔将の誰もが嘲笑った。
………これがその代償ということだろうか。忠告を無視したが故に今回の痛手を受けた。だがそれだけでは納得しきれない部分もある。
「………まさか、な」
私と魔王様の考えていることを、やろうとしていることに気づいているなんてそんなはずはない。
―――そう思いつつも、何処か期待する自分がいた。




