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※レインディア視点
ジーク様が大迷宮に挑まれて半日が経ちました。
「………浮かない様子ですね」
「心配ですもの」
現在は自室でできる範囲の執務をこなしている最中。部屋には私とアネモネさんだけ。綺麗なお顔なのに眼帯をされているのは聞いたところによると隠さなくてはならない理由があるため、とか。
残念ではありますが元の落ち着いた雰囲気と相まってこれはこれでありかもしれないと考え直しているところです。
「ご主人様の側にいらっしゃる限りは特に危険はございません」
はっきり言い切るアネモネさんからは万が一などという仮定さえ一笑に伏せるほどの信頼を感じます。素敵ですね、こういうの。
「なるほど、それなら良いのです。
そういえばアネモネさんはガーベラさんの妹のようなものとお伺いしておりますが、聞いてもよろしいですか?」
お話している時にガーベラさんとアネモネさんの雰囲気が似てるとジーク様にお話したところガーベラの妹のようなものと仰っておりましたがそこは気になるのです。
「生態が異なりますので厳密にそう言えるかは微妙なところです。素体は確かにガーベラ様ではございますがそれだけなのです」
「生態………?少なくとも家族と言えるものではないですか?」
そう返すと少し考える素振りを見せ、再びこちらを向く。
「私とガーベラ様は聖霊ということはご存知ですか?」
「初耳です」
さらっととんでもないことを言われたのですわ。驚きなのですわ。でも流石ジーク様なのですわ。
「この肉体はジーク様のお役に立つためにお作り頂いたもので、それに私達は憑依しているイメージとなります。
そして、聖霊は己を昇華するために魔力を蓄積するのですが蓄積できる魔力にも上限はあります。その溢れた魔力を切り離したものに自我が宿り、新たな聖霊になります。
余剰分というわけではございませんが、ガーベラ様とジーク様は魔力炉心が繋がっている………所謂パスのようなものがございまして、それを通じて魔力を賜わっておりますのでそうした余裕を作りやすい状態でございます。そして人員補給の為、ガーベラ様に配下として作られましたのが私です。
といっても、お仕えしているのは自分の意思ですよ」
「それは………本当に自分の意思なのですか?」
ジーク様の配下を増やすためにアネモネさんは産まれたということであればそれは産まれた時からそういう使命を与えられたのと同じ。………まるで、自分のような―――
「いえ、間違いなく私の意思です。ジーク様は選択肢を下さいました。その上で、私はお仕えしたいと望んだのです。そのように生み出されたからではありません。あの方にお仕えしたいと、奉仕がしたいと、―――褒めて、もらいたいと、そう思ったからです」
少し頬を赤らめて恥ずかしそうにしておりますが決して嘘でないことは顔をみればすぐ分かりました。私としたことがとんだ勘違いです。ジーク様ならば、きっと幸せになれるような選択肢を下さっています。
「………失礼いたしました」
「いえ、構いませんよ。私も無粋なことをいってしまいましたから。
………それで、そちらの動きについてはお尋ねしてもよろしいですか?」
そういうとアネモネさんはこちらをジーっとみて、その後数分経ってまた口を開いた。
「ジーク様より開示条件としてこちらの動きを察知した場合のみとありました。条件を満たした為回答いたします。
―――現在罠にかかったと思われる勢力を2つ確認。一方はガーベラ様が担当する予定になります」
それを聞いても私は驚きません。基盤が緩んでいましたし、外部への流出もある程度は想定はしていました。
そして、ジーク様ならばそういった勢力が留守の間に侵攻してくる可能性さえ考慮しているであろうことも。
「できることがあればお手伝いすると、伝えていただいても?」
「承知いたしました」
さて、私も帰りを待つばかりではなくやれることをしましょうか。




