↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

第1話 魔王を倒してほしい? いいですわよ♡

異世界に行ってチンポを食べる。

以上!!

「やはりチンポは下の口より上の口で味わうにかぎりますわ〜!♡」

私は今、人生最高の幸せを噛みしめていた。

目の前にあるのは、ラクダさんのチンポを使った珍味料理。

「んん〜っ♡ この歯応え! 素晴らしいですわぁ……!」

改めて自己紹介をしよう。

私の名前は綾小路美食(あやのこうじ・みく)。

二十九歳、独身。

職業は珍味ハンター。

挿絵(By みてみん)世界中の珍しい食材を探し、その味を確かめることを生きがいとしている。

中でも私が愛してやまない食材が、動物の生殖器。

つまり、チンポである。

誤解のないように申し上げておくが、私は決して変態ではない。

ただ少々、人より食への探究心が強いだけだ。

「さて、もう一口……♡」

私は大きな一切れを口に運んだ。

その瞬間だった。

「……んぐっ!?」

喉に詰まった。

「んぐぐっ!? んん~~っ!?」

く、苦しい!

お水! お水はどこですの!?

慌てて手を伸ばすも、グラスは床へ落下。

ガシャン!

ま、まずいですわ!

私にはまだ、食べたいものが山ほど……!

世界には、未知のチンポがまだまだ……!

そこで、私の意識は途絶えた。

享年二十九歳。

死因――ラクダのチンポによる窒息。

珍味ハンターとして、あまりにも不本意な最期であった。

     ◆

「……目覚めましたか?」

「……んん?」

目を開けると、そこは真っ白な空間だった。

目の前には、金髪に白い衣をまとった美しい女性が立っている。

「はじめまして。私は女神です。残念ですが、あなたは先ほど命を落としました」

「…………」

私はしばらく考え込んだ。

「……ラクダさんのお料理は、どうなりましたの?」

「そこですか!?」

「あんな貴重な珍味、もう二度と食べられないかもしれませんもの……」

女神様は、なぜか可哀想なものを見るような目をしていた。

「実は、あなたに特別なお願いがあります。別の世界へ転生していただきたいのです」

「異世界転生……ですの?」

「はい。剣と魔法が存在し、エルフや獣人、そして数多くの魔物が暮らす世界です」

「魔物……?」

「ドラゴンやオーク、ゴブリンなど、あなたの世界には存在しなかった生物たちです」

「…………!」

私の知らない生き物。

ということは、私の知らない食材!

そして当然――私の知らないチンポ!!

「ぜひお願いしますわ!!」

「即答ですね!?」

「ええ! 願ってもないことですもの!」

「ただし、一つ条件があります。その世界を脅かす魔王を討伐していただきたいのです」

「魔王……? ちなみに、その魔王様というのは、オスですの?」

「……オス? 男性ですよ。それが何か?」

「…………!」

魔王。

魔族の王。

しかもオス!

果たしてどんな身体構造なのか。

どのような肉質をしているのか。

想像するだけで胸が高鳴る。

「やりますわ!! 魔王討伐、喜んでお引き受けいたします!」

「な、なんと……! 危険な使命だというのに、なんと勇敢な方なのでしょう!」

「いえいえ、そんな♡」

魔王様。

いつか必ず、お会いしましょうね♡

「あ、それと女神様。あなたよりも上の存在はいらっしゃるんですか?」

「ええ。私たち神々を統べる、最高神様がいらっしゃいます」

「まあ! ちなみに、その方は男性ですの?」

「男性というより、雄性の存在ですね。人間とは根本的に異なる御方です」

「…………!」

人間とも違う。

地球の生物とも違う。

それでいて雄性の存在……!

「女神様! その最高神様にはどうすればお会いできますの!?」

「魔王を討伐するほどの偉業を成し遂げれば、謁見の機会が与えられることもあるでしょう」

なるほど。

つまり、魔王様の先には、さらなる究極の珍味が……!

「絶対に魔王を倒しますわ!!」

「なんという使命感……! あなたは本当に信仰心の厚い方なのですね!」

「うふふふ♡」

人の夢を否定しない。

素晴らしい女神様である。

     ◆

「では、魔王討伐のため、あなたに三つの能力を授けましょう」

女神様が手をかざすと、三つの光が現れた。

「一つ目は《時間停止》。周囲の時間を止められます」

「まあ!」

「二つ目は《絶対切断》。どんなに硬い相手でも切り裂くことができます」

「まあまあ!」

「三つ目は《オール・バイト》。どんなに硬いものでも噛み砕くことができます」

「まあまあまあ!!!」

す、素晴らしい!

じっくり観察して、食材を傷めずに仕留め、どんな硬いものでも味わえる。

まさに珍味ハンターのための能力ではありませんか!

「ありがとうございます! 大切に使わせていただきますわ!」

「ふふっ。どうかその力で世界を救ってくださいね」

「もちろんです!」

足元に光の魔法陣が広がった。

「では、よい旅を。勇者様」

こうして、私の第二の人生が始まった。

     ◆

「おおっ! 勇者様!」

転生先は立派なお城の大広間だった。

玉座から立ち上がった王様が、私を歓迎してくれる。

「女神様よりお告げを受けております! どうか魔王を討伐し、我が国をお救いください!」

「もちろんですわ!」

「今宵は歓迎の宴を催させていただきたい」

「まあ! ありがとうございます♡」

     ◆

その夜。

王宮の大広間には、色とりどりの料理が並んでいた。

「勇者様、お好きな食べ物はございますか?」

給仕の女性が尋ねてきた。

「…………!」

私は思わず固まった。

ど、どうしましょう。

日本では、好きな食べ物を正直に答えるたび、散々な目に遭ってきた。

気持ち悪い。

頭がおかしい。

変態。

そんな心ない言葉を何度浴びせられたことか。

でも……。

ここは異世界!

エルフや獣人が暮らし、ドラゴンまで存在する世界!

ここでなら、私の食文化も理解していただけるかもしれません!

「……あの、実は私……」

「はい?」

私は勇気を振り絞った。

「お、おちんちんが大好きなんですの!♡」

「…………」

「…………」

給仕の女性が固まった。

近くの貴族も、グラスを口元に運んだまま動きを止めている。

「……あら?」

給仕の女性が恐る恐る尋ねてきた。

「あの……食べ物のお話、ですよね?」

「もちろんですわ! 特に珍しい生き物のものが大好きで……♡」

「…………」

あっ。

この反応。

知っていますわ。

日本でも何度も見たことがありますもの。

(異世界でもダメでしたのねぇぇぇぇ!!!)

どうやら食文化への理解というものは、世界が変わった程度では進歩しないらしい。

実に残念である。

     ◆

翌朝。

私は王様から、村を襲うオークの討伐依頼を受けた。

「オーク……ですの?」

「はい。豚に似た顔を持つ屈強な魔物です。三体ほどの群れが確認されております」

「豚さんに……!? ぜひ討伐させてくださいませ!」

「おお! なんと頼もしい!」

こうして私は、護衛の兵士二人とともに村へ向かった。

ただ、兵士さんたちは昨夜の宴のことを聞いているらしく、私が微笑みかけるたびに妙に緊張した顔をするのだった。

     ◆

「勇者様、この付近にオークの群れが潜んでいるはずです」

村外れの森。

地面には大きな足跡がいくつも残されていた。

「まあ……ずいぶんと大きな足跡ですこと。相当な筋肉量がありそうですわ♡」

「……魔物の強さを推測しているのですか?」

「ええ、まあ。そんなところですわ♡」

その時だった。

ガサガサッ!

「ブゴオオオオッ!!」

茂みから巨大な魔物が姿を現した。

一体、二体……五体!

身長はいずれも二メートル前後。

豚に似た鼻と、突き出した牙。

丸太のような腕には巨大な棍棒が握られている。

「オークの群れだ!!」

「勇者様! お下がりください!!」

兵士さんたちが剣を抜く。

しかし、私は感嘆の声を漏らしていた。

「まあ……!」

本当に豚さんそっくり!

それでいて、一体ごとに体格が違う。

なんて興味深いのでしょう!

「ブゴオオオッ!!」

五体のオークさんが一斉に突進してきた。

「勇者様ッ!!」

「ご安心くださいませ」

私は静かに右手を上げた。

「《時間停止》」

カチンッ。

世界が止まった。

棍棒も、木の葉も、兵士さんたちも。

すべてが静止している。

「……さて♡」

私はオークさんたちに歩み寄った。

「初めまして。少々お身体を拝見させていただきますわね」

一体目は筋肉質。

二体目は小柄で引き締まっている。

三体目は腹回りに脂肪が多そうだ。

「ふむふむ……同じオークさんでも随分と違いますのね」

私は手帳を取り出し、それぞれの特徴を書き込んだ。

そして、最も気になっていた部位へ目を向ける。

「まあ……!」

地球の豚さんの生殖器に見られる独特の螺旋状の構造が、オークさんには見当たらない。

しかも、形状や大きさにも個体差がある。

「これは食べ比べてみたいですわね♡」

私はさらに顔を近づけ、香りを確かめた。

「くんくん……」

「…………」

「くっさぁ……♡」

強烈な獣臭。

十年以上はちんぽを洗ってなさそうな匂いですわ。

「でもそれも嫌いじゃなくてよ♡」

私は観察結果を手帳に書き込んだ。

「……ちょっと生でも齧ってみたいですけれど……異世界の病気にでもかかったら大変ですし、今回は我慢しますわ♡」

前世では食べ物を喉に詰まらせて死んでしまった。

同じ失敗は繰り返せない。

「やはり食の安全は大切ですものね」

さて。

観察はこのくらいにしておこう。

私はオークさんたちの顔を見上げ、静かに両手を合わせた。

「オークさんたち。あなた方の命、ありがたくいただきますわ」

食材の命をいただく以上、無用な苦痛を与えることは私の信条に反する。

「《絶対切断》」

     ◆

「ブゴッ!?」

ドサァッ!!

時間が動き出した瞬間、五体のオークさんが一斉に倒れた。

「…………え?」

「オークがすべて……一瞬で……!?」

兵士さんたちが呆然としている。

「ふふっ。ちょっと特別な能力を使いましたの♡」

「す、すごい……!」

しかし、私にとってはここからが本番だ。

「では、村へ戻りましょうか。せっかくですから、皆様にもお肉をお分けしたいですわね♡」

     ◆

夕方。

村の広場では、オークさんたちのお肉を使った料理が振る舞われていた。

私は村人の皆様から鍋や香草をお借りし、特別な一皿を作ることにした。

「勇者様、何を作っていらっしゃるのですか?」

「オークさんの香草煮込みですわ♡」

まずは流水で洗い、血や汚れを取り除く。

余分な脂や筋を切り落とし、塩で臭みを抜いたら、香草とともに下茹で。

アクをすくい、湯を替えてじっくり煮込む。

「下処理こそ、美味しいチン味への第一歩ですわ♡」

今回は体格の異なる四体を選び、同じ条件で調理してみた。

果たして、味にも個体差はあるのだろうか?

「さあ……いただきましょう♡」

私は両手を合わせた。

「オークさん。あなたの命、大切にいただきます」

そして、一切れを口に運んだ。

「んんん~~~~っ♡」

歯を立てた瞬間、コリッと小気味よい弾力が返ってくる。

「こ、このカリコリとした歯応え……! なんて素晴らしいんでしょう!」

噛むたびに濃厚な旨味が染み出してくる。

しかし、次の瞬間。

「くっさぁ……♡ しかも、なんてえぐみ……!」

強烈な獣臭が鼻を抜けた。

決して万人受けする味ではない。

しかし――。

「んん……っ♡ このえぐみが、たまりませんわぁ……!」

野性的な風味が、噛み続けるうちに癖になってくる。

香草の爽やかさと脂の甘みが混ざり、複雑な後味を生み出していた。

「この下品なまでの濃厚さ! なんとも味わい深いですわぁ……♡」

一口食べれば、もう一口。

「これぞ珍味の醍醐味ですわね……♡」

続いて、別のオークさんのものを味わってみる。

「…………!」

こちらは先ほどより柔らかく、香りも穏やかだ。

「やはり! オークさんにも、個体ごとの味があるんですのね!」

これは大きな発見だ。

今後は産地や年齢、食生活の違いまで確かめる必要がありそうだ。

「なんて奥深いのでしょう……♡ 異世界に来て、本当によかったですわぁ……♡」

頬を一筋の涙が伝う。

最後の一切れを噛みしめ、私は皿を置いた。

「ごちそうさまでした」

深く頭を下げる。

「オークさんたち。本当に、ありがとうございました♡」

     ◆

「……勇者様」

後ろで見ていた兵士さんが呟いた。

「あなたは、本当に食べ物がお好きなんですね」

「ええ。食べることは生きることですもの♡」

「……なんだか深いお言葉ですね」

「命をいただく以上、食材には最大限の敬意を払わなければなりませんわ。必要以上に苦しめたり、面白半分に命を奪ったりすることは許されません」

「……勇者様」

兵士さんの目が潤んでいた。

「最初は変わった方だと思っておりましたが……あなたは本当に立派な方なのですね!」

「まあ。ありがとうございます♡」

「命を粗末にせず、食材に感謝する……俺も見習いたいと思います!」

「うふふ。嬉しいですわ♡」

私はにっこり微笑んだ。

そして、鍋に残っている料理を見つめる。

「……そうですわ! せっかくですから、あなたにも食べていただきたいですわ♡」

「えっ? よろしいのですか?」

「もちろんです!」

私はフォークに一切れを刺した。

「はい♡ あーんして♡ あーんして♡」

「えっ!? ゆ、勇者様!? 自分で食べられますので!」

「まあまあ、そう遠慮なさらず♡」

私はにっこり微笑んだ。

「大丈夫、怖くないから♡」

「い、いえ、その……!」

「一度口に入れたら病みつきだから♡」

「…………」

兵士さんの表情が引きつっていく。

「……ちなみに勇者様」

「はい?」

「そのお肉って……どこの部位なんです?」

「オークさんの、おちんぽですわ♡」

「…………」

「…………」

「ち、ちんぽォォォォォォ!?」

兵士さんが飛び上がった。

「そ、そんなもの食わせようとしてたんですか!?」

「まあ! そんなものだなんて失礼ですわ! オークさんが大切に育んできた、立派な食材ですのよ!」

「そ、そういう問題じゃ……!」

「とっても美味しいのに……」

「俺にはまだ、口にする勇気がありません!!」

「まあ……残念」

とはいえ、食事を無理強いするのはよくない。

「では、また食べたくなったらおっしゃってくださいませ♡」

「一生ないと思います!!」

なんとも頑固な方である。

「それでは……」

私は傍らにあった、もう一つの包みを持ち上げた。

「今度はこちらを試してみましょうか♡」

「……まだあるんですか?」

「ええ。先ほどとは少し条件を変えて、食べ比べてみたいんですの」

「……条件?」

私は満面の笑顔で包みを開いた。

「じゃあ今度は、こちらの血抜きしてないおちんぽを調理いたしますわよ♡」

「…………」

「…………」

兵士さんが固まった。

「先ほどのものと、香りや食感がどの程度違うのか確かめてみたいんですの♡」

「…………」

「もちろん、下処理はきちんと行いますわよ♡」

「……あら? どうなさいました?」

兵士さんは震える手で頭を抱えた。

「さっきまで感動してた俺の気持ちを……」

「はい?」

「返せェェェェェェ!!!」

その絶叫は、村の広場中に響き渡った。

     ◆

その夜。

宿屋の窓から、私は満天の星空を眺めていた。

今日いただいたオークさんの珍味。

地球の豚さんとは似て非なる、まったく新しい味だった。

この世界には、どれほどの未知の味が眠っているのだろう?

「……素晴らしい世界ですわね」

ゴブリンさん。

ミノタウロスさん。

ドラゴンさん。

そして――魔王様。

さらには、女神様がおっしゃっていた最高神様。

想像するだけで胸が高鳴る。

「……とはいえ、焦りは禁物ですわね」

まずは目の前の珍味を、一つ一つ確かめていくことが大切だ。

「千里の道もチンポから、ですわ♡」

私は夜空に向かって拳を握りしめた。

「いつか必ず、この世界の珍味をすべて味わってみせますわ!」

魔王様も。

ドラゴンさんも。

そして、神様だって。

食への探究心に限界などないのだから!

「チン味王に、私はなりますわ!!」

こうして、異世界史上最も恐ろしい美食家の冒険が幕を開けた。

なお、この日から王都近郊の魔物たちの間では、奇妙な噂が広まることとなる。

『人間の女にだけは、絶対に捕まるな』

『特に、笑顔で近づいてくる女には気をつけろ』

『あの女は……』

『――食うぞ』

その噂が、やがて魔王城にまで届くことになるのだが……。

それはまた、別のお話。

そして、その夜。

美食が見上げる満天の星空には、不思議な星座があった。

二つの丸い星と、その上に細長く連なる星々。

どう見ても、おちんちんの形をしている。

その先端から――

キラリッ☆

まるで彼女の旅立ちを祝福するかのように、一際強い輝きを放つ彗星が流れた。

――第1話 完――

補足情報

美食は下の口で一度だけ彼氏のちんぽを味わったことがあるが「上の口でも食べてみたい…」という呪われた思考を振り払えず、彼氏に自ら別れを切り出した事がある

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。