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邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -テスタ村とハビリス族の隠れ里と、スタンリー秘密工房のアントレ-
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197 ローワンの覚悟と、ナターシャの次の日

 その表情を見たカバの手下は好機とみなし、追い打ちを掛けた。


「グヘヘ……ローワン、オ前ハ、今日ノ捜索ガ始マル前ニ“二人ガ逃ゲ込ムダロウ、ゴブリンノハ全テ魔法デ見張ッテイマス。今の所、二人ガ訪レタ様子ハアリマセン”ッテ、長ヤ俺達ノ前デ言ッタヨナァ?」

「デモシバ兄妹ハ、既ニゴブリンノ隠レ里ニ居タ。コレハオカシイヨナァー?」

「ウゥッ……」


 手下二人はローワンを挟んで、肩を抱く。

 老オークは、恐怖で縮んで何も言えなくなっていた。

 カバはよくやったと内心でほくそ笑んだが、体裁は整えた。


「ブッヒッヒ、アマリ老人ヲ虐メテヤルナブヒ、二人共。離レテヤルブヒヨ」

「ヘヘ、スミマセン兄貴」

「裏切者ッスカラ、ツイ」


 手下二人はローワンから離れ、カバの後ろに付く。

 ローワンがホッと一息ついたのを見て、カバは話を持ち掛けた。


「……ソレデブヒ、ローワン。取引ヲシヨウジャナイカブヒ」

「トリヒキ……?」

「ソウブヒ。コノ事ヲ長ニバラサレタクナカッタラ、オ前ハ今カラ――――」


 緊張で唾を飲むローワン。

 カバは、悪い顔を浮かべながら言った。


「――――今カラ、タダデ俺ノ傷ヲ治スブヒ」

「……ナ、ナント?」

「当然、出来ルブヒヨネ?」

「……?」


 決まった、という表情のカバとは対照に、ぽかんとするローワン。

 手下二人も兄貴の天才っぷりに喜んでいた。


「一方的ナ取引デ、高イ治療費ヲ無料ニシヨウトスルナンテ、流石アニキダ!」

「アァ、流石ハカバ兄貴ダ。俺達ニハ考エ付カナイダロウ」


「オッ、……ッ」


 思わず『お前達はバカなのか!?』と突っ込みかけたローワンだが、ここはグッと堪えて、


「……分カッタ、無料デ治療スル。カバ、椅子ニ座レ」

「ブヒヒ、ソウコナクッチャブヒ!」


 カバの言う通り、治療してやる事にした。



 回復魔法での治療を終えたカバは、ゆっくりと肩を回して、傷の痛みが消えた事を宣言した。

 手下二人も、兄貴の仮復活を喜んだ。


 何故、仮復活なのかと言うと、オークの回復魔法は体力をとても消耗する。

 その消耗した体力を取り戻す為に、これから1日は安静にしていないといけないのだ。

 ローワンもそれは良く分かっているので、カバ一味に病人用の部屋を貸し、この家の食ベ物を自由に食べて良い事も伝えた。

 たくさん食べればそれだけ体力の戻りが早いので、一介の医者としても当然の選択だった。


 カバ一味は喜んで食糧庫に行き、残されたローワンは、食事も取らずに自室へと向かう。


(ソウカ、モウ二人ノ居場所ガバレテシマッタノカ……)


 彼は部屋に入ると、ベッドの脇を漁って、一本の杖を取り出した。


(出来ル事ナラ、二人ノ元ヘ急ギタイガ――)


 それは、これといった特徴の無い木の杖。

 身体の支えとしても使えるように、上部に持ち手が付いている程度。

 ローワンはそんな杖を持ち上げ、持ち手を見つめる。


(――今、私ガコノ里カラ逃ゲタ所デ、状況ハ好転シナイ。ナラバ――――)


 誰が見ても、何度見ようとも、何の特徴も無い木の杖にしか見えない。だが……


(――――ナラバココニ残ッテ、少シデモ抗ウトシヨウ)


 ローワンは持ち手を捻って、白い刀身を僅かに引き出す。

 その刀身に映る老オークの目には、強い覚悟が宿っていた。



「んぅ……」


 その頃のナターシャは、ご飯を食べ終えてぐーすぴしていた。

 最近、お昼寝を取っていなかったのが響いたらしい。


 ソファの上で眠っている銀髪少女の傍には、開いたままの派生図ウィンドウと、幾つかの素材説明ウィンドウが開いている事から、それなりのやる気があったと伺える。


「んみゅ……」


 しかし、どれだけやる気を出しても身体は子供、どうしても睡魔には勝てないのだ。


 暖炉にて、長く燃え続けてくれた薪達が、赤く燃える炭となって落ち着き始めた頃。

 主が眠ってしまった事に気付いたリズールが、地下から出て来て、眠っているナターシャに毛布を被せた。

 彼女はナターシャの頭を数度撫でた後、また研究室に戻っていった。



 ナターシャが目を覚ましたのは朝になってから。

 寝起きの少女は、大きくあくびをしながら身体を起こして、両目を擦る。

 その時、自身に被さった毛布を見て『あぁ、リズールがやってくれたんだな』と納得しながら、顔を洗いにキッチンへと向かった。


 キッチンでは、地下での作業を終えたらしいリズールが朝食を作ってくれていた。

 ソファで寝たせいで寝癖が大変な事になっているナターシャは、ゆるゆる滑舌で朝の挨拶をする。


「おはよ~」

『おはようございます我が盟主マイロード。どうしましたか?』

「顔洗いに来たー」

『そうでしたか。ではフェイスタオルを置いておきますね』

「ありがとー」


 ナターシャはぼんやりしたまま、流し台で顔を洗い、うがいもした。


「はぁ~ねむ」


 そして髪をブラシで梳きながら、リビングへと戻っていった。


 少女がソファに座ると共に、メイドが朝食を並べる。

 今日は主食にパン、おかずにはスクランブルエッグ・こんがり焼いたソーセージ。

 更に、マグカップに入ったオニオンスープ付き。とても美味しそうだ。


「豪華だねぇ」

『はい。今日はお祝いも兼ねていますから』

「お祝い?」


 まだアホ毛の残るナターシャが不思議そうに首を傾げると、リズールはパチン、と指を鳴らす。

 すると、地下室の方から一人の少女が現れた。


 髪は黒でショートカット、服も黒のゴスロリ軍服ワンピにニーソックスと軍靴、リズールと同じようなスレンダー体型。

 見た目の年齢は16歳で、顔立ちはとても良いが目つきがちょっと悪い、そんな少女だ。


「どなた?」


 ナターシャの問いかけを聞いて、リズールは黒髪の少女を紹介した。


『彼女こそ――ウィスタリアの親友、大魔導技師ウェスカ・スタンリーの十傑作が一。第四使徒“魔銃まじゅう”の異名を持つハイゴーレム・ギュネー、名はヴェノムです』

「へぇ~」


 眠いせいで理解が追い付かず、ゆるい感嘆を示すナターシャ。

 魔銃のヴェノムは、とりあえず軽く礼をしてから話した。


「ども、紹介に預かった魔銃まじゅうのヴェノムです」

「よろしくー」

「ウッス」

「……」

「……」


 それ以上の会話が続かない二人。見かねたリズールが間に入った。


『ヴェノム、貴女が得意とする事を説明してあげて』

「ん、了解」


 ヴェノムは自身が得意とする事を言ってくれた。

 名前の通り、魔銃まじゅうという武器を扱える他に、偵察、索敵、後方支援を得意としているらしい。


「魔銃って何?」


 ナターシャが尋ねると、ヴェノムが教えてくれた。

 魔銃とは、色んな属性を込めた水晶弾を、引き金を引いた時に発生する小規模な爆発魔法で撃ち出す銃。

 見た目や原理はパーカッションロック式のマスケット銃と似ているらしいが、雷管の装着が不要なので、単発式ライフル銃と同じ速度で発射出来るらしい。


「へぇー凄いねー」

「ウッス」

「……」

「……」

『はぁ……』


 相変わらず会話が続かない二人。

 リズールは早くも諦めたようで、ナターシャに朝食を食べる事を進めた。



 朝食を食べ終わる頃にはナターシャも目が覚めて、ヴェノムに色々と尋ねた。

 彼女の性格、好きな物、嫌いな物、ヴェノムという名前の由来について。


 彼女は、創造主のウェスカ・スタンリーによって会話が苦手という設定を付けられたらしく、そのせいか性格は内向的かもしれない、と言っていた。

 好きな物は特に無いが、好きな事は他人と関わる事。

 嫌いな物は何故か、とある銃弾と自分の名前と、創造主のスタンリー。

 そして、名前の由来はと言うと――


「俺の名前は、とある水晶弾が持つ毒性を表してんだけど、本当は銃という武器の恐ろしさを示した“悪意”って意味が込められてるんだ。だから、ポイズンじゃなくてヴェノムっていう名前。……だから俺は、自分の名前も、名付けてくれた創造主も嫌いなんだ」


 と、饒舌に語ってくれた。

 ヴェノムちゃんって俺っ娘なのね。覚えた。


「そうなんだ……じゃあ、復活記念に名前を変えてみる?」

「お、良いね。お願いするよ」

「分かった、んーっと……」


 ナターシャは暫し考え、一つの名前を示した。


「シュヴァルツ・ヴィント、略してヴィントちゃんはどう?」

「あー、それは知り合いと被ってるんで駄目だ。別の名前でお願い」

「そっかー……んー……」


 ヴェノムに却下されて、また考え直すナターシャ。

 魔銃使いだし、カッコよくて良い名前だと思ったんだけどなぁ……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、最近の速い更新はお疲れ様です! 美少女が増えるのは良い事ですw 会話が苦手なのに、他人と関わるのが好きですか?それは難しいかも? 魔銃使いは格好いい職業だと思います!名前が被った…
[良い点] とても面白く一気に読んでしまいました これからも更新頑張ってください 応援しています [一言] 出来れば次の更新日など作品の最後に書いていただけると嬉しいです
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