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邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -テスタ村とハビリス族の隠れ里と、スタンリー秘密工房のアントレ-

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196 眼鏡を合成した杖の派生先確認と、その頃のオーク三人組

 必要素材は“植物素材”、“宝石”、“魔物素材”など、大雑把にしか書かれていなかった。

 そこからウィンドウを色々と弄っていると、シルバーグラススタッフの派生先は、主に三つの系統に分類出来ると分かった。


 一つ目。強化派生。

 これは杖と同じ素材――この杖ならオーク材を合成する事で、純粋に強くする派生だ。

 杖の強度が増すので、鈍器として使えるようになったり、ウェポンブレイクへの耐久性が上がる。

 他にも、別の植物系素材や一部の鉱石系素材を合成すると、装飾が増えたり、杖の構成素材が入れ替わったりするらしい。


 そして二つ目。宝石派生。

 これは宝石を合成する事で、魔法の杖特有の魔法触媒(マジカル・カタリスト)を武器に宿す派生。

 更に、合成する宝石の種類・色を絞る事で、一つの属性魔法に特化した杖を作る事も可能らしい。


 最後となる三つ目が、魔物派生。

 これは魔物素材を合成する事によって、その魔物が持っているスキルを杖に付与する派生。

 合成した素材によっては、詠唱不要の攻撃魔法が使えるようになったり、魔力の消費量が減ったり……と、とても有用な派生なのだが……

 生物由来らしく、武器が自我を持つ可能性があるという、とても危険な派生だ。


「――以上。ウィンドウ右上のヘルプボタンをタップしたら表示された、解説文の一部抜粋でしたー。皆、分かったー?」


 そう言いながら、目の前の使い魔カメラに手を振るナターシャ。

 殆どの人は忘れていたかもしれないが、今は動画撮影中。

 一介の動画投稿者として、動きのある場面を生み出す努力を惜しんではいけないのだ。


「じゃあさっそく、次の派生先を決めていくんだけどー……」


 ウィンドウに視線を戻したナターシャは、三つ目の派生――魔物派生をタップしてみて、改めて疑問に思う。


「この、オススメに表示されてる黒・猫・魔・導《ブラック・キャット・マジック》って何?」


 そう――この派生図には、各派生先ごとにオススメ合成なる物が載っている。

 全てはリズールの親切設計によるものなのか……魔物派生でオススメされたのは、なんと猫派生。

 一応、合成素材も猫系の素材らしきものなのだが……


「暗黒猫毛玉(ニャークマター・コア)……?」


 なんだその謎物質……

 素材名をタップすると、説明ウィンドウが表示された。



―――――――――――――――――――――――――――


 暗黒猫毛玉(ニャークマター・コア)


 ニャークマターという宇宙猫物質で出来た毛玉。

 闇より黒い漆黒を持つその塊は、

 見た者の興味を引いて離さない。


 月影黒猫《ルナシャドー・ブラックキャット》


 という猫系の魔物が吐き出す。


 このアイテムは日光に当たると消えてしまうので、

 手に入れたら箱に入れておこう。



―――――――――――――――――――――――――――



「ルナシャドー・ブラックキャット……?」


 ウィンドウを見ながら眉を顰めるナターシャ。

 誕生から7年経ったが、この異世界は分からない事ばかりだ。


 気になって仕方が無いので、月影黒猫《ルナシャドー・ブラックキャット》の説明も確認した。



―――――――――――――――――――――――――――


 月影黒猫《ルナシャドー・ブラックキャット》


 影の世界に生きる猫。

 日中は影の中で活動していて、

 夜になると月の光を浴びに、こちらの世界へと現れる。

 食性は不明。


 魔物と分類されてはいるが、住んでいる世界が違うからか、

 魔物避けの結界に引っ掛からない。

 そのためか生息地は広く、

 人の住んでいる場所なら何処にでもいる。

 夜にふと、猫の姿を見た気がしたのなら、大体はこの魔物。


 日が昇り始めると物陰に集まって、

 集団で毛繕いをした後に、影の世界へと戻っていく。

 その時に吐き出されるのが暗黒猫毛玉《ニャークマター・コア》だ。



―――――――――――――――――――――――――――



「なるほどねー……」


 人目に付く場所なら何処にでも居る魔物だから、オススメに表示されたのか。

 とっても勉強になった。


 説明を読み終えたナターシャは、追加で表示されたウィンドウをポチポチと消していく。


「……じゃあ、私の近くにも居るのかな?」


 ふとそんな考えにも至ったが、今までそんな猫の影と出会った事が無い、と思い出した。

 更に、察知魔法に猫が引っ掛かった記憶もない。

 つまり、俺の目に届く範囲に月影黒猫《ルナシャドー・ブラックキャット》は居ないのだ。


「うーん、黒猫魔導への派生は保留かー」


 そう言って、残念そうに口をすぼめるナターシャ。

 とってもファンタジーな魔物だから、動画のネタとして面白いと思ったのになぁ。

 

 諦めたように最後のウィンドウを消し終わると、ぐぅ、とお腹が鳴ったのに気付く。

 スマホで時刻を確認すると、午後6時。ご飯の時間だ。


「まずは晩ご飯食べよっと」


 ナターシャは気持ちを切り替えて、今日の晩御飯――ショートブレッドとリンゴジャムを取り出す。


「紅茶紅茶~」


 更に、お湯を沸かしにキッチンへと向かう。

 敢えてその場に残った使い魔カメラは、ナターシャの意志を汲み取ったように影の猫を探し始めた。


◇


 それと同時刻。

 逃亡したオーク三人組は、オークの里に到着していた。


「ヤット着イタナ、アニキ」

「カバアニキ、ダイジョウブカ?」

「ブヒィー……」


 手下二人に肩を貸してもらいながら(全ては演技だ)、カバは一息つく。

 里の入口では、彼らと同じようにシバ兄妹を探しに出ていた者が多く居て、彼らの傷付いた姿に驚き、慌てた様子で駆け寄って来た。

 皆は何かあったんだ、と尋ねたが、カバは疲れたように笑い、何でもないと手を振る。


「悪イガイソイデイル! 道ヲ開ケロ!」

「カバ兄貴ノ治療ガ優先ダ!」


 カバの手下二人は、兄貴分の怪我を理由に先を急いでいく。

 何故わざわざこんな演技をしているのかと言うと……


「待テ。カバ一味ダナ。何ガアッタ」

「ウッ……門番ノ“ナラ”カ……」


 里の入口での、ナラという名の門番との問答を避けるためだ。

 この門番は、非常に頭が固く、真面目だ。

 普通に里に入ろうとした場合、根掘り葉掘り聞いてくるのは間違いない。


『シバ兄妹を見つけたという手柄を、一番に報告するのは俺達だ!』と考えているカバ一味にとって、天敵と言っても申し分ないオークだった。


 そこでカバが考えたのが、


「ブヒヒ……悪イ、“アノ”狩人ニ襲ワレタンダブヒ……」

「ア、“アノ”狩人ニカ……!?」


 自分が大怪我をしているように見せかけて、門番との会話を最低限に収めよう、という作戦だ。

 特に“あの狩人”というワードは、何物をも恐れないオークでも“森でたまに出会うマジのガチでやべー奴”ランキングの3位にランクインしている存在なので、門番も深くは聞いてこないと踏んでいた。

 そしてそれは、カバの想像通りとなった。


「……分カッタ、深クハ聞カナイデオコウ。早クドルイドノ所ヘ向カウンダ、カバ」

「ナラ、スマナイブヒ……」

「気ニスルナ」


 作戦はとても単純だったが、カバの傷が刃物傷だったことが幸いして、大成功を収めた。

 オーク三人組は、バレないように演技しながらも、とても悪い笑みを浮かべながら里の中へと入る。


◇


 三人は門を通り過ぎると、途端に演技を止めて、一人のオークドルイドの家へと走った。

 治療をしてもらうついでに、とある追及をしようと思ったからだ。


 カバ一味は木造平屋の玄関を蹴り破り、中で夕食の準備をしていた、一人の老オークに詰め寄る。


「ブフフフ……! コンバンワブヒ、ローワン?」

「「グフフ……」」

「ソノ豚鼻……オマエ達ハ“カバ一味”カ。何ノ用ダ」


 ローワンという名のオークドルイドは、少しも驚きもせずに、食事の準備へと戻ろうとする。

 しかし、カバの手下がローワンを引き留め、彼をテーブルにムリヤリ座らせた。


「ナ、何ヲスルンダ……!」


 ようやく苛立った様子を見せたローワン。

 カバは、手下と共に彼の前に陣取って、衝撃の事実かのようにこう話した。


「ローワン。オ前ハ、シバニ魔法ヲ教エテイタブヒネ?」

「ソレガドウシタ。皆知ッテイル事ダ」


 流石にこの程度では、ローワンの心は動かせないとカバも分かっている。

 なので、次の情報を出した。


「ブヒヒ……実ハ、昨日ノ事ブヒ。俺達ハトアル“ゴブリンノ隠レ里”デ、シバ兄妹ヲ見ツケタンダブヒ」

「ッ!?」

「コレガドウイウ意味カ……分カルブヒネ?」

「ナン、ト……」


 ローワンの顔に焦燥の色が浮かぶ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 影の世界に生き、神出鬼没の月影黒猫!中々カッコ良いの感じがします〜 狩人さんは意外に有名ですね、恐ろしいランキングの第三位か。第一と第二が気になりますw オーク族の社会も案外に人間臭いです…
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