表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -テスタ村とハビリス族の隠れ里と、スタンリー秘密工房のアントレ-
196/263

195 返ってきた銀縁眼鏡の使い道

 それからしばらく商品紹介を聞いていると、ついにクッキーが無くなった。

 ニャトはここが帰り時だと思ったらしく、『今日は店仕舞いニャ』とパパッとお片付け。

 リュックを背負って玄関に向かった。

 ナターシャもその後ろに続くが、ふと気になった事を聞く。


「ねぇニャトさん」

「どうしたのニャ?」

「もしかして、帰りは徒歩なの?」

「ンニャ? ナターシャさんはケットシーがどういう精霊か知らないのかニャ?」

「ん……あっ」


 そう言われてみれば――――知っている。

 ケットシーは、自由奔放な猫の妖精。普段こそ、人間界で猫として生きる彼らだが、実は人知れぬ地に秘密の王国を築いていて、人気のない路地の隅っこ、そこら辺の木の洞など、よく気に掛けていても気付かない所から、その王国へと自由に行き来出来るのだ。

 だから、今から帰るニャトは……外に出て、近くの木の洞に入るだけでいいのだ。


「そっか、忘れてた。ケットシーはどんな場所からでも王国に行けるんだったね」

「そうニャ。ただ、流石に火山地帯から帰るのは大変ニャから、そこで呼び出すのは控えて欲しいニャ」

「うん分かった!」

「ニャハハ、良い返事ニャー」


 うんうんと頷いたニャトは、玄関の扉を開けて、元気よく別れを告げた。


「ではナターシャさん、今後とも御贔屓に! また呼んでくれニャ~♪」

「またねー! ばいばーい!」


 ナターシャも元気に見送って、


「……さて、そろそろ魔法でも創ってみるか」


 また一人の時間を享受する。

 ソファに戻ると、日記帳と鉛筆を出して、色々と考えた。

 しかし、1時間経っても全然思いつかなかった。


「はぁー……ぜんっぜん思いつかねぇ……」


 そう言いながら鉛筆を投げ捨て、ソファに身体を預けるナターシャ。

 リズールが傍を離れた事で、改めて自分が凡才だと思い知る。

 いや待て、そんな事は無い。リズールが居ない時でもちゃんと思いついていた。

 もしかすると……


「眼鏡を装備してないから、思いつかないんじゃないか……?」


 ルーティンが完璧じゃないから、やる気スイッチが入らないんだ。


「絶対そうだ」


 メガネを装備してないから知能バフが掛かっていないんだ。そうに違いない。

 謎の結論に至ったナターシャは、少し前、ふらりと地上に現れたリズールのように、地下の研究室へと向かう。



「りずーるー?」

『はいなんですか我が盟主マイロード


 地下室の扉を開け、構ってちゃんモードをマシマシチョモランマな声で名前を呼ぶと、淡々とした従者の声が返ってきた。

 どうやら作業中のようで、先ほど購入したアメジストに魔術刻印を刻んでいるようだ。


 魔術刻印とは、魔導士や魔法使いの個人証明のような物だ、とクレフォリアちゃんに聞いた事がある。机で作業している彼女は、魔道具製作にあたって自分だけの刻印を作ったのだろう。

 まぁ何せよ、なんかとってもカッコいいよね! 俺も自分の刻印を作りたいなぁ……

 そんな事を考えていたナターシャは、


我が盟主マイロード、どうしましたか?』

「あ、ごめん。つい見とれてた」


 作業を終え、振り向いたリズールに話し掛けられた事で、ようやく正気に戻る。


「実はね、眼鏡を貰いに来たんだ」

『そういえば預かったままでしたね。お渡ししましょう。“異空間収納”』


 リズールはゲートを開き、主が求めている物を取り出した。


『はい、どうぞ』

「ありがと。ふふんっ」


 受け取ってすぐに装備するナターシャ。賢くなった気がしたのでドヤる。

 その様子に軽く微笑んだリズールは、機能の説明をした。


 一つ目は解析機能。

 曰く、Lv・HP・MPだけを表示する簡易解析機能と、相手のスキルなども表示する詳細解析機能の2種を実装した、との事。

 利便性も考えられていて、発動詠唱は“解析”で統一されている。

 聞いた限りでは使い分けが大変そうだが、魔法には“使用者の意図を汲み取る”という絶対法則があるので、同一詠唱でも意外と問題ないらしい。


 二つ目は探索機能。

 薬草や地面に落ちた木の実など、肉眼では見つけにくい採取物の輪郭に白線を付け、レンズ内に表示する機能だ。

 索敵魔法では省かれる情報を抜き取って表示させている、とリズ―ルは言っていた。

 これがあれば、採取クエストが格段に楽になるだろう。


 最後は合成・分離機能。

 鉱石や魔物の素材など、色々な物同士を合成する事が出来る機能らしい。

 合成後は性質が変わったり、時には武器に変化したりするんだってさ。

 分離機能は言わずもがなだ。


 説明を聞き終わったナターシャは、現実をゲームに変えてしまうような機能にワクワクした。

 特に、最後の機能が気になって仕方がなかった。


「ねぇリズールリズール。合成機能についてなんだけどさ、その機能に限界はあるの?」

『あります。通常時――変化が起こらないパターンの合成は、通常・合成後の素材も含めて、最大3回までしか出来ません。回数を初期化するにはメンテナンスが必要になります』


 なるほど。


「じゃあ、無限に素材を合成出来る武器を作るにはどうすれば良いの?」

『現状では……何かしらの武器と、その眼鏡を合成すれば作れます』


 なるほど?


「その場合ってさ、他の機能は使えなくなっちゃう感じ?」

『いえ、ステータスウィンドウへの強制介入も行い、解析情報を代理表示するように設計していますので、合成後でも問題なく使えます。ご安心下さい』

「おぉー!」


 流石は大賢者の魔導書!


「ありがとうリズール! 早速合成してみるね!」

『はい、沢山お試しください』

「うん! じゃあねっ!」


 銀髪少女は合成して遊ぶため、うっきうきしながら地上へと戻っていった。

 リズールは手を振って見送った後、アメジストを部屋の中央に置いて、アイテムボックスから魔導核――浅緑色(ライトグリーン)の宝珠を取り出した。


『これから楽しまれるであろう、我が盟主マイロードには申し訳ないのですが……』


 そうは言いながらも、罪悪感の無さそうな表情のリズールは、


『早速、大魔導技師ウェスカ・スタンリー十傑作が一、第四使徒の覚醒作業を開始しましょうか。魔導核起動装置への魔力供給を開始……成功。続いて、機能停止中の魔導核への魔力照射及び、魔力波の再始動工程を開始――――


 最終工程であり、最初の復活作業を行い始めた。

 彼女の手の中にある(くす)んだ宝珠は、工程が進むにつれて本来の輝きを取り戻し始める。



 一方、地上のナターシャ。

 研究室で行われている異常なほどの魔力消費など、無限の魔力を持つ彼女にとっては微々たるもの。時々『なんか脱力感があるなぁ』と気付きはしたが、『多分、やる気が無いからだろうな』と思う程度だった。


 そんな魔力チートな銀髪少女は、つい先ほどまで魔法創造していた事などとうに忘れていて、今はどういう風に合成していくべきか考えていた。

 最初から考えにあったのが、アイテムボックスに眠っている、盗賊から強奪した(スタッフ)

 これとメガネと合成して、普段使い用の武器にしようと一考していた。


 リズールアージェントという最強武器があるにはあるが、彼女はもう一個人として独立している上に、大賢者の魔導書らしく何でもできるので仕事が多い。

 ハビリス族の強化計画や新企業設立などで忙しい彼女を、わざわざ武器として運用するのは忍びないと思ったのだ。


「だから……やっぱりまずは、眼鏡と杖の合成からかな。よし決めた」


 そうと決まれば行動だ。

 ナターシャは杖を取り出して、眼鏡に合成する。

 えっと……ゲーム的に考えれば、合成方法はこうだ。


「“合成”?」


 机に置いたメガネに杖を当てながら呟くと、二つは宙に浮き、溶けるように混ざり合って――柄の部分に銀とガラス玉の装飾が施された、木製の杖へと姿を変えた。成功だ。


「とりあえずはこんなもんかな?」


 手に取って、取り回しも確かめるナターシャ。

 俺の身長よりも長い杖だが、まぁ何とかなるだろう。


「んじゃあ、次はどういう風に合成していこう……」


 杖をテーブルに置いたナターシャは、考え込む。

 まず最初の武器は出来た。でも、これから合成していくにあたって、どういう風にするか考えないといけない。


「何か参考になる物とか無いかな……」


 今の所、参考になる物や人に出会った事が殆ど無い。

 一つあるとすれば、今着ている魔導服を貰ったお店だけ。つまり、現状では手詰まり。

 ……いや待て。ゲーム的な機能が付いてるんだから、もしかしたら何か、指標を出してくれる機能もあるのでは……?

  

「……“合成ツリー”!」


 冗談交じりに呟いてみたが、流石に出なかった。


「あはは、そんな都合良く“派生図”なんて出る訳ないよね……はぁー……」


 ぼやきながらため息をつくと、ブオンという音がして、目の前にウィンドウが表示される。


「……えっ?」


 その中には――――眼鏡と杖を合成した後の派生図が表示されていた。

 派生図は段階ごとに分かれていて、今は第一段階――眼鏡とウッドスタッフを合成したシルバーグラススタッフと、次の派生が3つ表示されている。それ以降はロックされていて確認出来ない。


「マジであるんだ派生図……!」


 流石リズール! よく分かってるじゃん!

 〇ンハン攻略本とかに乗っている、武器の強化派生図っぽい表記にテンションが上がったナターシャは、再びワクワクしながらウィンドウをタップして、次の派生に必要な素材を確認した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、最近の更新はお疲れ様です! 眼鏡は知力の象徴ですねw やっぱりリズールさんが超有能です!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ