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邪気眼少女の極唱魔法(エクスペル) ~異世界転生したらTSした上に厨二病を再発症する羽目になりました~  作者: 蒼魚二三
ナターシャ7歳編 -テスタ村とハビリス族の隠れ里と、スタンリー秘密工房のアントレ-
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185 ゴブリン村捜索終了、次なる目的地へ。

 偽蛇竜の丘の北西でゴブリン村を二つ発見した。

 この地域周辺は雑木林が多い関係もあって、ゴブリンが集結しやすいらしい。

 ようは餌が豊富なのだ。特定の地域に魔物が集まる一番の要因である。


 そして、座標石設置には先ほど仲間になったオークさんが活躍してくれた。

 彼が村の傍まで接近しても、ゴブリン達は恐怖するだけで抗戦せず、設置した魔導石に近付こうともしなかったからだ。

 魔法にまで長けているのは予想外だったが、先祖帰りした妹に教える為、オークドルイドから魔法の手ほどきを受けていたらしい。

 妹の為にそこまで頑張るとは凄い人だ。いや、オークだ。


「座標石ヲ設置シテキタ。コレデ最後ダナ」

「ありがとうオークさん。凄いね」

「ソレホドデモナイ」


 そして謙虚。人間ならモテるだろう。

 ただ、オークのセンスが人間と同じかどうかは分からないので、同種族内でモテるかは分からない。

 クエスト終了を理解したリズールは、手を合わせながらまとめ役を買って出た。


『ではこれで、私達の用事は終わりですね』

「そうだね。でも、案内して貰う前に……」

『やはりそうなりますよね』


 ナターシャとリズールが遠くを見ると、3人組のオークがキョロキョロと周囲を探していた。

 その顔には怒りの形相が見えるので、餌を探しているような雰囲気では無い。

 気付いたオークも、斧の柄を両手で握って身構えた。


「ググ……アレハ、里の捜索隊……」

「表情を見るに、相当憎まれているようでありますな」

「だねー」


 それだけオーク族は、力の象徴である長を崇拝しているんだろうね。

 まぁでも、俺に掛かればこの程度のピンチ、切り抜ける事など造作もない。


「じゃ、魔法で姿を消して、ゴブリンの隠れ里に急ごうか」

『はい。お願いします我が盟主マイロード

「オッケー任せてー。えっとねー……」


 今から使うのは隠密魔法。

 それを軽くリメイクして、効果を全体化するのだ。

 だからー……


「――“無貌むぼうの王の真髄しんずいよ。彼の王は、名は有にして無形むけい。その姿、盟友を除き一切知らず。その理に従い、我らの全てをくらまし、有形世界に融解ゆうかいさせよ。“無貌王・夢幻抱影フェイスレス・シャドウベーラー””!」


 超ノリノリで創った魔法が発動し、ナターシャ達の姿は空気に溶けるようにして消えた。

 二つ名が付いたお陰で性能も向上しており、元の効果が全体化しただけでなく足跡も残らないのだ。

 仲間の姿も半透明だけどちゃんと見えるし、我ながら完璧な隠密魔法を創った気がする。

 オークも驚いているようで、透けている自分の身体を見ながら呟いた。


「コレガ人間ノ魔法カ……凄イナ……」

『いえ、この魔法は我が盟主マイロードの特別製ですね』

「ソウナノカ。ナターシャハ凄イナ」

「ふふ、まぁね。じゃ、オークさん。隠れ里への案内を宜しくっ」

「アァ分カッタ。コッチダ」


 ナターシャ達は、オークの道案内に従って南西へ向かう。

 もっと分かりやすく言うと、テスタ村方面に帰っている形だ。





 オークはテスタ村を視認すると、真っ直ぐ北に向かって進み始めた。

 その方角には鬱蒼とした森が存在していて、奥には山々が控えている。


「これから山を越えるのでありますか?」


 進む方角を理解した斬鬼丸が、素朴な疑問を投げかけた。

 オークは頷き、今からどういうルートを辿るのか、分かりやすく話してくれた。


「アァソウダ。今カラアノ森ヲ抜ケ、山ノ境ヲ通ッテ、ソノ裏手ニアル盆地ヘ向カウ。ソコニ隠レ里ガアルンダ」

「ほう? ナターシャ殿、そこにゴブリン達が居るのでありますか?」

「ん、ちょっと調べる」


 試しに魔力を広げ、山の裏手を索敵範囲に入れてみた所、ゴブリンらしき生体反応が複数あった。

 その地域は索敵の感知外に設定していたので、隠れ里の存在に気付けなかったのも頷ける。

 ただ……おかしな点が一つあった。


「ねぇリズール、この魔力反応ってホントにゴブリン?」

『……判断が難しいですね。どちらかと言うと人間寄りです』

「だよねぇ」


 隠れ里のゴブリン達を感知したナターシャとリズールが困惑していると、オークが答えを教えてくれた。


「……アァ、言イ忘レテイタ。隠れ里ニ住ムゴブリン達モ、先祖返りヲ起コシテイル。トテモ小サイガ、人間ラシイ見タ目ダゾ」


「えぇっ!?」

「おぉ」

『驚きですね』


 衝撃の発言に、ナターシャ達は驚きの声を上げざるを得なかった。


 だが、今は時間が惜しい。オークの捜索隊が近くまで来ているからだ。

 詳しい話は後で聞くとして、急いで隠れ里に向かう。





 森の中にはブラッディデスベアーや、レッサーサーペントの超上位個体、ブラックサーペントの縄張りがあったりと世紀末級の恐ろしさだったが、彼らの縄張りに入らない安全なルートを通ったのと、隠密魔法を使用していたお陰で気付かれる事は無かった。

 まぁ、仮に襲ってきた所で撃退出来るが。


 そして森を抜けると、清らかな泉があった。

 山から流れ出る清水が地下に染み込んでいく場所だ。

 

 ここからは渓流を上りながら山の裏手に向かうのだが、7歳女児のナターシャにそんな体力は無い。

 なのでリズールが、チートスキル“重力操作”を使って主を運搬する事になった。


「わーい!」

『マイロード、空を飛ぶ感覚はどうですか?』

「たのしー!」


 川沿いでふわふわと浮かび、空中浮遊を楽しむナターシャ。

 娯楽が圧倒的に少ない中世風の異世界。

 このような不思議体験は、ナターシャのテンションを最高潮にするのに十分だった。


「見て斬鬼丸! 空中を泳いでるよ!」

「おぉ、凄いでありますなぁ」


 一応ナターシャには索敵の仕事があるのだが、魔法を仲介解析しているリズールが居るので、完全に一任してしまっている。

 まぁそれもこれも、まだ7歳の子供なので仕方ないとも言える。


 ……そして道中では、隠れ里に住むゴブリン達の話になった。

 リズールが語った歴史的背景も交えつつ、出来るだけ簡単に説明しようと思う。


 まずは昔、この地域で起こった悲劇について。

 隠れ里のゴブリン達は、“ゴブリンコマンダー”という特殊個体が指揮する、ゴブリン軍団によって引き起こされた“ムーア村大惨禍”によって攫われ、繁殖に利用された犠牲者達の末裔まつえい

 ゴブリンコマンダーやゴブリン軍団は、フミノキースから派遣された正規軍と、テスタ村を含む他の農村の勇士達によって殲滅されたらしいが、運良く生き残ったゴブリン達が彼らの先祖となったらしい。

 正規軍が万全を期す為、今は亡きムーア村への遠征準備に時間を掛けてしまった事が、人の血が混ざるに至った一番の要因なのかもしれない、とリズールは結論付けた。


 ここからは、オークさんが知っているゴブリンの歴史だ。

 最初期の子孫はゴブリンと謙遜無い見た目だったようだが、ゴブリン達が近親交配をしていくにつれて、先祖返りを起こす個体が増えた。

 そして先祖返りを起こした個体は、生まれ持った知能の高さから人間らしい道徳観を持ってしまい、蛮族と相違ない思考回路を持つ仲間と相容れられず、迫害され、最後は追放されてしまった。

 コミュニティを追い出された彼らは、何とか生き抜く為、同じく先祖返りを起こした同胞と群れを造り、何とか定住場所を見つけ出して、長い年月を掛けて隠れ里を造り上げるに至ったようだ。


『やはり、争いは悲しみしか生みませんね』

「……そうだね」


 とても悲しい目をするナターシャ。

 戦争による被害者は、どんな世界でも居るのだ。

 それが例え、加害者であるゴブリン側であろうとも。


 そういった重い話をしている内に、ナターシャ達は山間を登り切っていた。

 オークが言っていた通り、山の裏側は盆地になっていて、簡素な家々や畑がはっきりと見える。

 かなり文化的な生活を送っているらしい。


 ナタ―シャ達は足元に気を付けながら山を下って、隠れ里の入口へと向かった。

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