135 五日目:食事中の出来事と兄の鑑定スキル
食事を終えたエメリア、マルスと会話しながら食事を楽しむナターシャ。
斬鬼丸が食事出来ない理由や、ナターシャ達が春先まで宿泊しに来る事は一週間前に来たリターリスからの速達郵便で知っているとの事。
しかし何故そんな一方的な連絡でガリバーさんが宿泊許可を出してくれたのか、とナターシャが尋ねるとマルスが返答する。
「それはな、ユリスタシア家からの客人を受け入れれば必ず息子のロビンさんが帰って来るからだよ。他の兄妹と違ってロビンさんだけエンシア王国に住んでるからな。ガリバーさんが会いたくて仕方ないのは当然だ」
「……あ、言われてみればそうだね。ロビンさんってガリバーさんの息子だもんね」
ナターシャは納得しながら返答する。
すると、家主であるエメリアもそうそう、と言いながら会話に混ざる。
「そうなんです。お父さんロビン兄さんにばっかり優しくて。私も同じ娘なんですけど、いっつも厳しくて優しくないんですよね。商品の仕入れ時期を見誤ると物凄く怒られますしホント大変なんですよねぇ……」
最終的に軽く愚痴を零し始めるエメリア。
大変そうだなぁ……とナターシャは同意しながら、エメリアが作ったスープを一口食べる。
鶏肉とブロッコリー、ニンジンとカブを塩と胡椒で煮込んだだけだが、これがまたシンプルに美味しい。
因みにガレットさんは先ほどから随分と静かに食事している。どうやらこのスープについて何か考えている様子。
一口食べる度に眉がピクリと動くのが面白い。
そのままエメリアが仕事の愚痴を一通り吐いた後、今度は未だ光を放つオタマへと話題が移る。
「……しっかし、この魔法は不思議だな。光に触れるなんて初めてだ。こんなの誰から習ったんだよナターシャ」
マルスはオタマの先端から魔法を摘まみ、動かして遊ぶ。
ナターシャはどう答えようか迷って言い淀む。
「ん? んーっと……」
え、えぇと、どう説明する?
と、取り合えず斬鬼丸の事情は兄とエメリアさんも知ってる。
なら、天使ちゃんの紋章を軸に話を進めればOKだ。よし何とかなる。
理由付けが出来たナターシャは説明を始める。
「……えっとね、この紋章が何か分かる?」
そう言ってドヤりながら左手の紋章を見せる。
それを受け、マルスがエメリアの代わりとして返答する。
「あぁ知ってる。熾天使アーミラル様に授けられた紋章だろ? それになんか、今家に居るって手紙で読んだ。見慣れない魔道具も貰ったとか。どういう事だ?」
ナターシャは表情を笑顔で固定しながら、兄の質問に答える。
「うん、なんか全部天使ちゃ……熾天使様と神の御業らしいよ。魔道具を私に授けたのは、神がお認めになったから、とか」
「何でナターシャが認められたんだ?」
直球ストレートを投げてくるマルス。
ナターシャは少し緊張しながらも言葉を紡いでいく。
「……ほ、ほら。私って神の加護ってスキル持ってるじゃん? だからだって」
「へぇー……それで、それと紋章貰った事の何が関係してるんだ?」
兄の抉るような質問攻めに辛くなるナターシャ。兄貴手強い……まるでパパンのよう……
だがしかし、此処で話の主導権を取り返すのだ。ナターシャは想定済みのストーリーを纏めて話す事に決める。
「……ま、まぁ、斬鬼丸が生まれたのも熾天使様の介入があったからなんだ。神様や熾天使様に認められた理由は分からないけど、結果として私は魔道具と熾天使様の加護を得て、魔力も増えて、天界から魔法の詠唱を授かれるようになったの。まだ家に居る理由は私にも分かんないっ!」
そのまま相手の疑問を遮るように器を持ってスープを一気飲み。
ゴク、ゴク、と飲み、最後は満面の笑みで一言。
「美味しいっ!」
これでどうだ……これ以上の演技は出来ないぞ……
不安がるナターシャを他所に、マルスはある程度納得した様子。
「成程なぁ……。まぁ、神様が認めた理由とか、魔道具を授けた理由とか、熾天使様の事情なんてナターシャに分かる訳ないよな。お父さんも知らないみたいだし。良く分かった」
腕を組んで目を瞑り、頷いている。良かった、これで面倒事は去った……
二人の会話を微笑ましく見ていたエメリアは、完全にやり切った感を出しているナターシャに対して話しかける。
「あ、ナターシャちゃん。スープのおかわり要る?」
「お腹いっぱいです!」
「そっかぁ。なら仕方ないね」
「うん!!!」
ナターシャに訪れた唐突な危機は無事過ぎ去り、再び平和な時間が流れ出す。
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テーブルに並んで座り、楽しく話し合う兄と妹。ガレットさんと斬鬼丸はオセロ中だ。
ナターシャは、風呂にお湯を張って帰って来た兄に灯魔法を教えていた。
因みに一番風呂はエメリアさん。家主なので先を譲っているらしい。まぁ当然だな。
「へぇー……“消灯”って言うと消えるのか。色んな場所に着くし、便利だな」
「消せるのは使用者だけみたいだから、お兄ちゃんならもっと便利に使えると思うよ?」
「あぁ、これがあるなら暗い場所でも読書出来そうだな。消費魔力も少ないし」
「そうなの?」
兄はこくりと頷き、灯魔法を詠唱。
燈った灯に向かって“鑑定”スキルを発動する。
するとステータスウィンドウのような板が空中に浮かび、灯魔法の詳細な情報が表示される。
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“灯”
光魔法の一種。“浮かべや蛍、眩い光よ”という詠唱で
発動する。
最初に発生する小さな光は、何かしらの物体に接触す
ると光度を増す。
起動後、光源は自由に移動する事が出来る。どのよう
な物質にも接着し、光を灯す。
“消灯”と詠唱すれば消える。
消費魔力 1/毎分
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ナターシャはその画面を見て、驚くと共に兄を褒め称える。
「おぉ! お兄ちゃん凄い! こんな事出来たんだ!」
今までこんな画面出した事無かったのに!
マルスは少し嬉し気に、鼻を擦りながら話す。
「ふっ、店番中、店の商品に向かって鑑定スキルを使ってたら突然出せるようになってな。ま、これも俺の才能って奴だ。“消灯”」
そのまま自慢するようにドヤっている兄。
おぉ、鑑定情報ってステータス画面と同じような薄い板で表示されるのか。
……でも、突然出せるようになったか。鑑定スキルに一体どんな変化があったんだろう。
ナターシャはちょっと気になり、少し兄を炊き付ける事にする。
「そうなんだ! お兄ちゃんとっても凄い! 鑑定でお兄ちゃんのスキルも見せてよ!」
ナターシャは褒めながら兄のステータス開示を要求する。
「あぁ良いぞ。“鑑定”」
褒められるとちょろいマルスは自分に向かって鑑定を掛け、ウィンドウを召喚する。
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Lv5/99 名:ユリスタシア・マルス
年齢:10歳 職業:一般人(冒険者登録済)
称号:なし 71/300exp 利き手:右
HP20/20 MP158/200
ATK:30 VIT:20
STR:10 DEF:8
INT:60 RES:9
DEX:8 AGI:30
SPD:80 LUK:20
武器1(左):なし 武器2(右):なし
頭:なし 体:布の服
左腕:なし 右腕:ミサンガ
腰:革のベルト 脚:布の服
足:革のブーツ アクセ:なし
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所持スキル一覧
魔法適正Lv1 会話術Lv3 鑑定Lv8(10MP)
広域鑑定Lv5(100MP) 速読:Rare
知識欲:passive 閃き:passive 並列思考:Unique
商運:Unique ファイアーボールLv1(10MP)
???の血筋Lv5:Unique
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50万文字目にしてようやく公開される兄のステータス……スタッツ辿り着くまでが長過ぎたんや……




