表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗闇の道標  作者: 砂滑
1/4

セト

どこかの世界。

中央大陸の一国エイシム。とある事情で詰所に集まってきた人達の物語です。

 薄暗い裏路地を一人の男が歩いていた。

 男の名はセト。闇ギルドの構成員である。

 セトは自首をする途中だった。とはいうものの、彼には身に覚えのない事件であり、かと言って誰かの身代わりという訳でもなかった。

 昨日、闇ギルドの幹部会に招聘されると、頭目が開口一番、「牢屋にいってくれ」と、こうである。

「アバニフの賭場なんか行くんじゃなかったな」

 日の暮れた宵の空を見上げながらセトはつぶやいた。セトはアバニフが運営していた賭博場で、ある種の悪戯をして大金をせしめていた。証拠はないが露骨なイカサマにアバニフは激怒していたらしい。らしい、というのは今となっては確かめる術がないからである。

 三日前の晩、アバニフは自室の床の上で死体になっていた。背中を鋭利な刃物の様なもので刺されていたのである。となればアバニフを指し抜いた者がいる。闇ギルドはほぼ総動員で犯人を捜した。しかし、近隣諸国にまで及ぶ闇ギルドの情報網を持ってしても、手がかり一つ見つけることはできなかった。アバニフは闇ギルドにおいて幹部の地位にあり、内部抗争を懸念した頭目は犯人を捏造することにした。それがセトである。セトはアバニフに恨みをかっている。無論、嫌疑は事件当初からセトに及んでいたが、彼には明確なアリバイがあった。事件当日の晩は他でもない、頭目とカードゲームに興じていたのだ。

 裏路地を抜け、表通りにでると不意に白い生き物がセトを遮った。馬だ。辺りは暗くなっていたが白毛の馬は光を放っているかのように鮮明だった。白馬を眺めていたセトは、その白馬がいるすぐ後ろの建物が警固隊の詰所であることに気づいた。


 詰所の中からは話し声が聞こえた。セトは気づかれないように詰所の中を入口から覗いた。中には軽装の騎士と兵士がいた。

「貴様一人で事件があった時どうするのだ。もう一人はどこにいった」

「それは、あの、女房が風邪をひいたというものですから」

「バカモノ!夜間は最低、二人は配備せよとの通達をしらんのか。本所に連絡して代替要員を確保するのが正規の手続きであろう。これは報告しておくぞ」

「そんな殺生な」

 騎士の声が細いな、と思っていたら女だった。

 クアル・アグリウス。エイシム国東部の営農地帯を領地としているアグリウス家の次女でありながら、昨今、騎士の叙勲を受けた変り者である。会話が一段落したのを見て、セトは詰所へとはいった。

「ごめんください」

 入口に背中を向けていた騎士が振り返り、兵士は俯いていた顔をあげる。セトは騎士クアルを見たことはないが女騎士という希少性から多分、この騎士はクアル・アグリウスだろう、と当たりをつけていた。また、騎士クアルは大変な美人であるらしいとの噂から彼女の容貌を見るに本人で間違いはないとの確信を得た。

「なんだ、お前。私のことをまじまじと見おって。無礼な」

 まじまじと見つめるセトにクアルは言い放った。

「減るもんじゃないだろ。ケチだな、あんた」

「不快だといっている。減らなければいいという問題ではない」

 一蹴されたセトは目を細めた。

「で、なんのようだ?」

「賭場の親分が殺された事件があっただろ」

 クアルは虚空を見たあと兵士に救いを求めるように視線を向けた。求められた兵士は首を傾げた。

「あれ、俺がやったんだよ。捕まえてくれ」

 二人は事件を知らないようだったがセトは用意していた台詞を言い切った。クアルは折り曲げた人差し指を口元にあてた。何かを思い出しているようだ。

「ああ、あれか。なんだ、お前だったのか。よし、連行しろ」

 クアルは言うと、兵士に顎をしゃくった。

「私一人でですか?」

 犯人護送は二人で行うように、との通達があることを兵士は暗に示した。彼自身は本来、勤勉で知られる兵士だ。クアルは面白くないといった顔をした。

「私がこの者を見ているから本所にいって誰か連れて来い。馬を貸す」

「では行ってまいります」

 敬礼をすると兵士は詰所からでていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ