第3話 ファイト・スタート
イーストエリア。
イースト大森林公園内の軍事研究基地。
基地内部では、レーザー銃を構えた軍人たちが、慌ただしく行き来していた。
基地内部に、未知なるモンスターが侵入した。
「警戒を続けろ。お前ら、しっかりしろっ」
軍人たちに指示を続ける、高位軍服の女性。
若いエリート女性軍人。軍の長官。
短髪と切れ長の目。
男勝りな女性。
初の実戦。
あせっていないと言ったら嘘になる。
「長官!未知なるモンスターをロストしました」
下位軍人が、報告する。
「何だとっ!」
「現在、総員で捜索中」
「続けろっ」
「了解しました」
軍人たちは、騒がしく行き交う。
未知なるモンスターなど、対応するのも皆んなはじめてだ。
第3話 ファイト・スタート
「戦う…?」
フィナンシェは、サイレンが鳴り響く病室にいた。
真っ白な室内。
とにかく、ベッドから足を降ろして、スリッパを履く。
かすかに、左足が痛む。
顔がゆがむ。
「大丈夫ですか?」
シスターのオリビエが、包帯の上から、左足を優しくさすってくれる。
「あ、ありがとう。そこまでの痛みではないよ」
落ち着いてきたフィナンシェは、口を開く。
変な話を聞いていた。
内容は、よくわからなかった。
獣人…。
頭の上の耳が動く。
その状態だけは、自分のこととして感じている。
戦う…。
それは、自分に関係あるのだろうか。
「痛みませんか?」
心配そうなオリビエ。
心優しい少女だ。
「少年。何か戦うスポーツか何か、したことはないか?」
セシールは、変なことを聞いてくる。
戦うスポーツ?
どんなスポーツだろうか。
柔道とか。レスリングとかだろうか?
フィナンシェに、そんな経験はない。
そもそも、スポーツをほとんどしていない。
「スポーツは、しないよ」
「じゃあ、戦うゲームは経験あるだろう?」
「戦うゲーム…?」
アクションゲームか。
ゲームは、好きだ。
スマホでのミニゲームとか。
しかし、アクションものは、得意じゃない。
「アクションゲームは、苦手だよ」
「そうか…」
セシールは、そのまま、黙ってしまう。
「何か、騒がしいけど、ここにいていいのかな?カギをかけておこうか」
フィナンシェは、病室のドアに向かう。
ドアは、自動ドアで、すぐ開く。
部屋の外には、紫色のかたまりがあった。
キャーオ…
「…う、うわああっ!」
フィナンシェは、思いっきりのけぞる。
そのまま、しりもちをつく。
紫色のかたまりは、四足歩行で室内に入ってきた。
「モンスターか…!」
セシールは、警戒する。
「レーザー銃が無い。病室に現れるとは…!」
「この紫色のヤツ、僕の足を痛くしたヤツだ…」
震えが止まらないフィナンシェ。
恐怖心である。
これは、フィナンシェの左足に噛みついたモンスターだ。
未知なるモンスター。
モンスターは、四足歩行で、病室内をうろつく。
「少年。戦ってくれ…!現在、ワタシは、レーザー銃を携帯していない」
「戦う…?」
戦う。
フィナンシェには、遠いフレーズだ。
ただ、お菓子屋の配達員をして。
強気な恋人がいて。
穏やかな日常を送って、穏やかな時間を過ごしていく。
それは、変わらない毎日。
「戦うって、何だよ。僕は、ごく普通のお菓子屋の配達員だよ」
キャオー…
モンスターが、鳴き声をあげて、フィナンシェにとびついてきた。
「…わああ!」
それを受けて、フィナンシェは暴れた。
両手両足をじたばたさせる。
恐怖を振り払うべく、右手で、紫色のモンスターをなぐる。
ドゴーーーンッ…
紫色のモンスターは、激しく吹き飛ばされ、病室の壁にめり込む。
モンスターは、溶けて、絵の具のようになって消えた。
病室が、静寂に包まれる。
「…何という“攻撃力”だ」
セシールは、ただ驚く。




