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結城組  作者: マー・TY
20/20

20話 結城組の戦闘狂

 翌日。

 蓼丸は夕刻前に動き出していた。

 その隣には、仙堂と夏目が付いている。

 向かう先は、半グレ“黒悪火”のアジトだ。

「夏目ェ。間違えてお前を破壊しちまったらごめんな〜」

 何故か知らないが、仙堂がさらっと恐ろしいことを言う。

「ヒィ!かっ、勘弁してください!仙堂の兄貴!この顔です!この顔覚えてください!」

 夏目はビビって必死に自分の顔をアピールする。

「やかましいわ。ほら着いたで。切り替えや」

 そうこうしているうちに、3人は“黒悪火”のアジトに到着した。

 外観はボロっちいビル。

 元は雑居ビルか何かだろう。

 アジトはここの3階だ。

 3人は堂々とボロビルに入っていく。

 そして、アジトのドアの前に立った。

「カチコミは最初のインパクトが重要や。仙堂、やったれ」

「解りましたァ。ぶっ壊します」

 仙堂が構えを取る。

 そして、目にも止まらぬ速さでドアを蹴り抜いた。

 真っ二つに凹んだドアが、砲弾みたいな勢いで部屋の中へ飛んでいく。

 これが開戦の合図となった。

「結城組だ!お前ら覚悟しろ!」

「邪魔すんで〜」

「ヒャッハーーー!!荒れるぜェ!!!」

 それっぽく啖呵を切る夏目に、冷めた感じの蓼丸、それから奇声を発する仙堂。

「うおぁ!!」

「なんじゃあ!?」

 異様過ぎる侵入者の登場に、中の半グレ達はどよめいていた。

「半グレがたくさんだァ。こりゃ暴れ放題だなァ」

 仙堂が嬉しそうに呟く。

 それからナイフを取り出すと、肉食獣のような踏み込みで突っ込んでいった。

「うわっ!速っ!」

 尋常じゃない速さに、前方の半グレの対応が遅れる。

「顔面ドーナツだァアアアアアアアアアア!!!」

 そう叫びつつ、仙堂が放ったのは刺突。

“ドシュッ!!!”

「ギュエッ______!!!」

 ナイフの先端が、半グレの顔面を貫通する。

 奴の顔に、ドーナツのような穴が空いた。

「次ィ!!!」

 仙堂は半グレ達の群れに飛び掛かる。

 奴らのうち、何人かは得物を抜いていた。

 だが仙堂が纏う空気に呑まれ、まともに動けなかった。

 猛者を相手に、それはダメだ。

「テメェら静止画だったんかァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 仙堂は叫びながら、なんと横薙ぎで3人を両断しちまったんだ。

「くそっ!」

 1人の半グレが、後ろからナイフを振り上げた。

 だが、仙堂には見えてる。

「そりゃダメだなァアアアアア!!!」

 繰り出したのは、強烈な蹴り。

 それが半グレの腹に突き刺さる。

「グボァ!!!」

 ただの蹴りじゃねェ。

 骨が砕け、内臓が潰れる。

 奴はナイフで斬るよりも先に、血を吐き散らしながら吹っ飛んだ。

「うっ…うわっ……」

「化け物だ……」

 あまりの凄惨さに、残りの半グレ共が日和る。

 結城組 仙堂春幸。

 コイツの本質は戦闘狂。

 戦闘のベースは、キックボクシング。

 強烈な蹴りで人体を破壊し、ストレートの要領で繰り出す刺突で敵を貫通。

 まるで戦うために生まれてきたような、究極の戦闘者だ。

(仙堂の兄貴、凄すぎる。どう鍛えたらこうなれるんだろう…)

 仙堂のあまりの破壊っぷりに、夏目は感嘆する。

 それに対し、蓼丸はずっと冷静だった。

(これ仙堂1人で終わるなぁ。さて…)

 蓼丸は仙堂の戦いから目を逸らし、アジト内を見回した。

 “黒悪火”の奴ら等、最初から眼中にないようだった。

 仙堂が暴れ続けていると、奥のドアが開いた。

 出てきたのは、黒のタンクトップを着た、坊主頭のゴツい男だった。

 筋肉質な右腕に、竜のタトゥーが入っている。

「テメェら結城組か。人ン家で、随分好き勝手暴れてくれたなァ」

 コイツが“黒悪火”のトップ 大林おおばやし実篤さねあつ

 人を壊すのが趣味の狂人だ。

 だが狂人具合なら、こっちも負けちゃいない。

「強そうなのが出てきたァ。お前がボスか〜」

 強敵を前にして、仙堂はさらに上機嫌になった。

「結城組。わざわざそっちから出向いてくれるなんてなァ。捜しに行く手間が省けたわ」

 大林は仙堂を前にして、ニヤリと笑いやがった。

 コイツ、相当うちをナメてやがる。

「死なねェ程度に殺してやるよォ!!!」

 矛盾を吐きながら、大林がスタートを切る。

 奴が繰り出したのは、正拳突き。

「ウヒョ〜!空手かァ!いいじゃねェか!」

 迫る拳を、仙堂は際で躱した。

 奴の言う通り、大林は元空手家。

 裏社会に入って人を壊し続けた結果、奴の拳や足は凶器と言えるくらいに進化した。

「だったら殴り合おうぜ!!大将ォ!!!」

 強敵の登場に、仙堂は昂ぶっている。

 奴はナイフを捨てると、何の躊躇もなく右ストレートを放った。

「グボッ______!!!」

 それは大林の顔面をまともに捉えた。

 奴はたまらず一歩下がる。

 鼻からは血が吹き出し、口から前歯が3本零れ落ちた。

(何なんだこの威力…!)

 予想外のダメージに、大林は驚愕する。

 普段だったら、頬で受けて流してる。

 だが、仙堂のストレートはあまりに速過ぎた。

 それ故に受けが間に合わなかったんだ。

(何度も食らえねェ!一撃で終わらせる!!)

 大林が前に出た。

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 奴は雄叫びを上げながら、再び正拳突きを撃つ。

“ゴッ______!!”

 今度は仙堂の頭部を捉えた。

 鈍くデカい音が響き渡る。

「……!!?」

 だが、大林から焦りが消えることはなかった。

 拳は確かにまともに入った。

 普段ならこれで終わってる。

 にも関わらず、仙堂は倒れなかった。

「いいねぇ。流石は大将。目が覚めるいい正拳だァ」

 仙堂が静かに大林を称賛する。

 奴は拳を額で受けていた。

 額から流れてきた自分の血を、ペロリと舐め取る。

「ぐおっ……なっ、ナメるなァ!!!」

 大林が再度拳を振り上げた。

「いいじゃねェかァアアアアアアアアアア!!!」

 仙堂も拳を握って前に出る。

 キックボクシングと空手。

 異なる格闘技を得手とする2人の、正面からの殴り合いが始まった。

「ヒャハハハハハハハハ!!!」

 奇声に近い声で笑い、攻める仙堂。

 殴られても、笑い声を絶やさない。

 完全に狂っちまってるが、デタラメに拳を撃ってる訳じゃねェ。

 撃つところは撃つ。外すところは外す。

 キックボクシングに喧嘩技を組み合わせた、独自の技術。

 コイツの凄いところは、狂いながらもそれを崩さないところだ。

 大林はどんどん追い込まれていく。

(なんだこれ!?…俺の空手が通用しねェ!)

 空手の打撃が、外され、いなされ、弾かれていく。

 大林は、今まで空手で人を壊してきた。

 だが、目の前の仙堂が崩れる様子はない。

 寧ろ崩れそうなのは、大林自身だ。

(クソッ!畜生!)

 大林の顔に焦燥が浮かぶ。

 あまりの猛攻。攻撃に転じることがてきない。

 まさに防戦一方。

 気づけばガードのみとなっていた。

 しかし、奴の防御に綻びが生まれる。

 仙堂のボディブローが、大林のガードをすり抜けて通ったんだ。

「ガハッ!!」

 これは効いた。

 大林は吐血しながら、再び後ろに下がる。

「おいおいどうしたァ?守ってばっかじゃねェかァ。もしかしてよォ、俺が死んじゃ困るから手加減してくれてんのかァ?」

 仙堂も無傷じゃない。何発か諸に食らってる。

 だが、闘志が衰える気配はない。

 奴はゆっくりと、大林の方に歩み寄る。

「奇遇だなァ。俺もお前を生かせって言われてんだよォ」

「うっ…!」

「だけどよォ、人体って意外と頑丈なんだわ。だからお前も遠慮なく殴ってこいよォ」

 仙堂は悪魔のような顔でそう言った。

「うおっ……」

 大林の体が強張る。

 殴られまくったから…だけじゃない。

 仙堂の危険性に、体が危機感を覚えたんだ。

 大林は今更ながら理解した。

 結城組を敵に回すことが、何を意味するかを。

(幹部昇格なんざ、気にしてる場合じゃねェ!コイツは、殺さなきゃヤベェ!)

 もうなりふり構っていられないんだろう。

 血相を変えた大林が、ナイフを取り出した。

「化け物がァ!!死ねェエエエエエエ____!!!」

 大林が絶叫しながら突っ込んでいく。

「おいおい。終わりかよォ」

 その時仙堂の目に、失望の色が浮かぶ。

 そして大林のナイフを持った右手目掛けて、高速の蹴りを入れた。

「あぎゃァアアアアア!!!」

 大林が悲鳴を上げる。

 奴の右手の骨がへし折れ、ナイフが部屋の奥へ飛んでいく。

「楽しませてくれると思ったのによォオオオオオオオオオ!!!」

 仙堂が怒鳴りながら、ローキックを放つ。

 その一撃が、大林の右足を砕いた。

「いぎィイイイイイイ_____!!!!」

 大林が前のめりに倒れる。

 右手右足を砕かれた。もう動けない。

「蓼丸の兄貴ィ、終わりましたァ」

 すっかりクールダウンした仙堂が、振り返って言う。

 奴はたった1人で“黒悪火”を制圧してみせた。

「おぅ。ご苦労やったな仙堂」

 蓼丸が仙堂に歩み寄る。

 夏目もそれに続いた。

 3人が大林を見下ろす。

「蓼丸の兄貴ィ、コイツ急につまんなくなりましたァ」

「お前が強過ぎて絶望したんやろ」

「それじゃあ早速ですけど、尋問始めましょうか」

「せやなぁ。まぁでも、コイツに訊かなくても良ぉなったかもしれへんわ」

「はいィ?」

「えっ?どういうことでしょう?」

 仙堂と夏目が、疑問の眼差しを向ける。

 実は今回のカチコミ、蓼丸には思うところがあった。

(大林の幹部昇格試験。引き渡しだけならまだしも、わざわざスタートの時間まで設定されとった。となったら考えられるのは1つやろ)

 蓼丸は部屋中を見渡しながら、口を開いた。

「“刃裟羅”のお偉いさんよぉ!おるんやろ!?隠れてないで出てきてらどや!?」

 大声でそう言い放つ。

 仙堂も夏目も、キョトンとした顔をする。

 すると一拍空いてから、“黒悪火”アジトの入り口に影が現れる。

「あァん?」

 野生の勘か、仙堂がそれにいち早く気づく。

 それを見た蓼丸が、腰のチャカに手を当て、入り口に目をやった。

 そいつは当たり前のように中に入ってきた。

 革ジャンを着た、白髪の中性的な顔立ちの男。

 微笑を浮かべる奴の目は、どす黒く濁っていた。

(ッ…!?コイツ、まさか……)

 蓼丸はそいつの顔を知っていた。

 そして、予想外のことだった。

 何故なら、目の前のコイツと会うのが一番難しかったのだから。

「気づいてたんだ?流石は結城組の蓼丸さん」

 奴はシンプルに蓼丸を褒める。

「……幹部に会えさえすれば、とか思っとったけど、まさかこうしてお目にかかれるなんてなぁ。神木かみきれん!」

 蓼丸が奴の名前を言い放つ。

 “刃裟羅”トップ 神木蓮。

 奴が堂々と現れやがったんだ。

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