#008.クラス最強の候補たち
「ーーで、結局猫塚くんの最後の一撃は何だったの?」
私たちの試合が終わって次の試合が行われている真っ最中。
南と晃太と合流すると、一緒にいた猫塚くんのジャージが濡れているのを可哀そうに思ったのか、南が手から炎をほんのりと出して猫塚くんごとジャージを乾かしはじめる。
その中で、気になっていたことを訊ねた。
なんか凄い一撃だったのはわかるけど、いかんせん私の視界はあの時辺り一面水だらけwith時々電気だったため、何が起きたのかよくわかってない。
「最後の?あれはねえ、ただ思いきって大きい弾丸を作ってぶっ放しただけだよー」
まるで猫のようにしゃがみながら丸くなってる猫塚くんは、そう言って鼻をすする。
「そうそう、大きさはこんぐらいだったんだけど威力凄かったなあれ!」
両手を広げて、相も変わらず元気な声の晃太。
その規模は恐らく直径1mぐらいだろうか。
「……いや、あの爆発の仕方はぶっ放したってだけじゃないだろ、多分」
「てへ、バレた?」
説明に納得出来なかったのか、南が猫塚くんに視線を合わせるとわざとらしく自分の額を小突く素振りを見せて舌を出してみせた。
「……まあ僕負けちゃったわけだし、教えてあげるよ」
右手の人差し指を立てて、猫塚くんは自分のアビリティの説明を始めた。
「僕のアビリティはさっきも言った通り超能力で、念力で弾丸を作り出してそれを撃つ!っていうのがメイン。その中で、弾の威力、大きさとかを自由に変えてるわけだけど、最後に使ったのは大きい砲弾……が目標に命中すると爆発を起こして中にある散弾が前方目掛けて発射、そしてその散弾も命中した瞬間にボーンってなるっていうやつ。まあ、二重仕掛けの爆弾って感じだね。ちなみに、当たっても大怪我はしないように威力調整はしてたつもりだったんだけど、思いのほか追い詰められちゃったからちょっと本気出しちゃった」
「……それはこっちも同じだよ。あのまま普通の弾丸だけで来られたら、正直ジリ貧だったし、良くて“プロテクト”で5分凌いではい試合終了……だったかも」
「でもそうはならなかった。美穂ちゃん、途中で気づいたでしょ。リロード時間」
ニヤリと可愛らしい笑みをこちらに向ける猫塚くん。
「うん。弾丸の威力の強さによって、ほんの少しだけど撃つまでに時間差があったのが引っかかってね。あと、すごい話しかけてくるから最初はお喋りなだけかと思ったんだけど、これ時間稼ぎかな?って思って、確信に変わったのが2発目の“サンダーアロー”を猫塚くんがかわした時。弾丸で相殺させなかったのは、“サンダーアロー”と相殺させるだけの威力の弾丸を出せなかったから、だよね?」
まあ正直、こうは言ったけど確信というよりは2択に絞っただけで、もしただ避けてそのまま撃たれてたら私の負けだった。
けど、負けても支障のない試合だからこそ強気に出て、結果勝つことが出来た。
言うなれば、択勝ちってところだろう。
「ピンポンピンポン!そこまで読まれてたらしょうがないねー。でもまあ、次があれば負けないよ。本当は武器……銃とか持てればもっと行けるんだけど、武器がないのはお互い様だしねえ」
銃……といっても、実弾を撃つものではない。
猫塚くんが言ってるのは、銃に自分のマナを込めて弾丸を放つことが出来るアビリティ用のものだろう。
実弾だったらもちろん死んでしまうが、銃もといアビリティガンも威力は相当なものらしい。
猫塚くんがやってたように素手で撃つのとは比べ物にならないはずだ。
……想像しただけで寒気がするのでこれ以上はやめておこう。
「あ、それと僕のことは伊織って呼んでよ。そっちのほうが嬉しいからさっ。ねっ?」
私たち3人を見渡してそう告げる猫塚くん。
だからそのウィンクは可愛すぎるからズルいって。
「え、あ、うん、わかった、伊織……」
名前を呼ぶと、伊織は満足げな顔をして南と晃太にも名前で呼ぶよう積極的に絡みに言ったのだった。
▽▽▽
さて、クラスメイト各々が激しい戦闘をしたりしなかったり、己の実力とアビリティを披露していく中、次の試合の組み合わせの名前が呼ばれた。
「次、七木田勝路と結城晃太」
「お、俺の番か!」
名前を呼ばれ、ギャラリーの手すりにもたれかけていた体を起き上がらせる晃太。
「行ってくるぜ!」
「おう」
「いってら~」
元気の良い声掛けに、南とそのまま一緒に観戦していた伊織が返事を返す。
「がんば」
それに私も続けると、晃太は背中を見せたままひらひらと手を振ってコートへと向かっていった。
晃太の対戦相手は七木田勝路くん。
何を考えてるのかよくわからない表情をしている少し背が高い人物だ。
使うのは雷のフォースって言ってたっけ?
それに対して、晃太の魔法は“魔装変身”。
高度なプログラミングの魔法陣をSギアに組み込んでおくことで、詠唱しなくても“魔装変身”を使えるようにしてる……ってことは?
「南、晃太今回Sギア使えないけど、大丈夫なの?」
今回の試合において、武器は使用禁止。
それは、装具も含まれていて晃太のSギアスイッチもその対象に入っていた。
「まあ問題ないよ。というか、そもそもあれは魔力消費が激しいから最後の手みたいなもんだし」
私の懸念をまるで何でもないかのようにそう答える南。
「ねえねえ、僕だけ話についていけてないんだけど、もしかして晃太くんって僕と同じで武器がないと何も出来ない感じのタイプ?」
「いや、お前のあれが何も出来ないはただの嫌味になるだろ……」
南の言葉にてへぺろとかわいい表情をしながら舌を出してみせる伊織。
「大丈夫。晃太は素でも結構やれるやつだから」
そう言って、コートのほうへと視線を送る南に釣られてそちらを見やると、そこには既にスタンバイ完了の晃太と七木田くんが相対していた。
「試合開始!」
そして、六花先生の号令が下された。
「先手は譲るぞ」
と同時に、そう宣言する七木田くん。
カウンタータイプなのかはたまた単なる自信なのか……。
「お、じゃあ遠慮なく!」
相手の思惑なんか何も考えてなさそうな感じで、晃太は詠唱を始めた。
「我が眠りし力よ、目覚めその力を我が手足に顕現せよ!“部分魔装”!」
発動される魔法。
晃太の両腕両足、もっと言えば肘から下と膝から下が光りだし、そしてそれは、初めて会った時見た衝撃の全身姿の一部分、手足の装具だった。
「“タイプリミテッド・サンダー”」
さらに追加で詠唱すると、晃太の手足から電気が迸るようになり、光り輝く。
「“サンダーブロー”!」
右手に拳を構え正面から突っ込んでいく晃太。
そのスピードは雷を足に纏った影響か凄まじく、七木田くんとの距離を瞬く間に詰める。
「お、早いな」
構えた拳を振り抜き一撃を叩き込もうとしたところで、七木田くんは即座に反応。
こちらも電気を手に纏わせて晃太の拳をその手のひらで受け止めた。
「お返しだ。“迅雷拳”」
そして空いていた右手を握りしめ、今度は七木田くんが電気が激しく迸る拳を振りぬく。
「おおっと!」
しかし、これまた晃太が反応良くもう片方の手で受け止め、そのまま硬直状態に陥った。
「なるほど、中々強いな」
「それはこっちのセリフだって!」
両者、口元を緩ませて互いの拳を離し、再び距離を取る……のも束の間。
バチバチと音を立てながら、また距離を詰めて雷属性同士の肉弾戦……文字通りのスパーキングがはじまった。
拳を振って蹴りが飛び交い火花が散るコート内。
少しの間、この状況が続きそうな雰囲気なので今のうちにと南に訊ねた。
「解説の南さん、晃太選手のあの魔法は一体どういうものなのでしょうか?」
手にマイクを持った振りをして南の顔に向けると、意外とノリが良くそのまま答えてくれた。
「どういうものって言っても見たまんまだけどな。あれは“部分魔装”って言っちゃえば“魔装変身”のお手軽版みたいなやつだ。伊織にも一応分かるように説明すると、あいつの“魔装変身”は全身に魔力で作り上げた鎧を装備することで身体能力、耐久力、魔法火力を底上げするものだ。フォームチェンジもあるけど、その話はいったん置いといて……“魔装変身”は魔力消費が激しいから、今の晃太じゃ長い時間維持することが出来ない。だから、必要な部分だけを鎧で強化して魔力消費を抑える“部分魔装”を普段使いの魔法として使ってるってわけだ」
「なるほど……」
フォームチェンジとかとてつもなく気になる単語が出てきたけど、それは南の言う通りいったん置いといて、“魔装変身”と“部分魔装”についてはなんとなく理解できた。
「南せんせー、晃太くんが使ってた“タイプリミテッド・サンダー”についても解説お願いしまーす。詠唱なしに発動してたけど、具体的にどんな魔法なのー?」
解説から今度は先生になった南に、伊織が疑問を投げかける。
「“タイプリミテッド”は、使う魔法の種類や属性を一つに絞ることで詠唱の一部省略とか威力を若干上げることが出来る補助魔法……なんだけど、そもそも“タイプリミテッド”自体を詠唱なしで発動させてたよね?……あれは?」
伊織の質問に補足を加えつつ南にさらなる疑問を投げかける。
「あれはそういうプログラムを“魔装変身”ないし“部分魔装”の魔法陣に組んでるから。代わりに、さっき言ったフォームの話にもなるけど、晃太はあのフォームの鎧を纏っている間は殴る蹴る系の魔法しか使えない。メリットデメリットの差し引きを“魔装変身”の魔法陣に全部組み込んでああいう仕様になってる。それを“部分魔装”の魔法陣でも応用してる……これ以上は説明すると長くなるから終わり。詳しく知りたければ、後でだな」
途中から面倒くさくなったのか、それとも目の前の試合に集中したいからなのか定かではないが、南は半強制的に話を区切ると試合を見るのに集中しはじめた。
私も何となく晃太の魔法については今のところは理解出来たので、試合へとしっかり目を向けた。
タイマーを見ると、残り時間は1分を切っている。
そのタイミングで、試合が動き出した。
3分近くのスパーキングが終わり、再び距離を取る両者。
「“迅雷波”」
地面に手をかざすように置く七木田くん。
そして、手のひらから電流が激しい光を纏って流れると、そのまま床を電気が迸り、まるで波を撃つように電撃の束が晃太を襲い掛かった。
これは私がやった戦法と一緒……!
限られた範囲内での広範囲攻撃。
これじゃ避けられないーー!
そう思った直後だった。
「よっ!」
晃太は横に助走をつけるように走っていき、高く飛び上がった。
……具体的には2mくらい。
雷の波の束を飛び越えると、晃太はそのまま七木田くんの懐に目掛けて飛び蹴りを放った。
「“ブリッツストライク”!」
激しい雷を纏った蹴りを、七木田くんは腕でガードするもその衝撃に耐えられず後ろへとのけ反った。
今がチャンスだ!
「“サンダーブロー”!」
晃太もこれを機として最初と同じ電気を纏った拳を振り抜く。
「……え!?」
だが、その拳は空振りに終わった。
否、そこにいたはずの七木田くんの姿がなかったのだ。
「ふう……今のは少し焦ったぞ」
そう思ったのも束の間、声のした方向に視線をやるとそこに七木田くんがいた。
晃太との距離はおよそ10m。
一瞬で移動出来る距離とは思えないけど……。
「“電光石火”を使わされるとは……」
そう零す七木田くんの息が若干上がっている。
「まじか……!」
七木田くんの姿を補足した晃太も息を上がらせつつ、笑っていた。
その笑みは驚きのあまりの笑みといったところだろうか。
--ビイイイッ
「そこまで。試合終了だ」
とそこで試合終了の合図。
引き分けで終わり、一見良い試合に見えたけどなんかどっちもイマイチ底が見えないような戦い方だった。
晃太に関しては、“魔装変身”があるから奥の手があるという意味ではその通りだけど、七木田くんの戦い方にはずっとどこかで余裕があった。
最後に見せた超高速の回避、あれでやっと本領の一端が見えたようなそんな感じだ。
「いやー、強かったぜ勝路!またやろう、今度は遠慮なしに!」
「……!ああ、そうだな。またやろう」
コートの結界が解除され、晃太が七木田くんの傍に駆け寄ると手を差し出して爽やかスマイル。
言葉を交わした後、熱い握手が交わされた。




