やっと会える。②
廊下を進んでいく。
懐かしい景色。
懐かしい声。
懐かしい匂い。
何も変わっていない。
「結香ちゃん。もうすぐだね。」
夏希先生がそう言って、私の顔を覗き込んだ。
「……はい。」
返事をしながら、膝の上でぎゅっと手を握る。
緊張する。
楽しみ。
怖い。
いろんな感情が混ざり合って、胸がいっぱいだった。
教室の前に着く。
中から、聞き慣れた声が聞こえてきた。
誰かが笑っている。
椅子を引く音。
机の上に筆箱を置く音。
何度も聞いた、何でもない朝の音。
「では、入りますね。」
先生が扉を開ける。
「みなさん、おはようございます。
今日は柊木結香さんが来てくれました。」
一斉に、視線がこちらを向いた。
思わず息を呑む。
懐かしい顔。
見慣れた制服。
机の配置も、黒板も、窓から見える景色も。
全部、覚えている。
「結香……!」
春乃が立ち上がった。
目が合うけど、春乃の表情がほんの一瞬だけ曇った。
ほんの、一瞬。
すぐにいつもの顔に戻って、私に笑いかけてくれた。
……今の、なんだったんだろう。
気のせいかな。迷惑って思われたのかな。
いや、きっと、突然で驚いただけ。
そう思うことにした。
「春乃ちゃん、久しぶり。」
春乃が私のそばまで来る。
「結香、久しぶり!」
ちゃんと笑えたかな。
変な顔、してないかな。
そんなことばかり気になってしまう。
「元気だった?」
「うん!春乃は?」
「私はいつも通りだよ!」
いつも通り。
その言葉が、少しだけ胸に刺さった。
春乃にとっては、いつも通り。
みんなにとっても、いつも通り。
でも、私にとっては。
もう、ずっと前のことみたいだった。
「結香、髪伸びたね!」
「そうかな? 最近、自分で切れなくてさ」
「あ、そっか……」
春乃の声が、ほんの少し小さくなった。
やば、口が滑った。そう思って私は慌てて笑った。
「でも、お母さんが切ってくれたんだよ!意外と上手でびっくりした!」
「よかったね。」
春乃も笑ってくれた。
それが嬉しかった。
もっと話したい。
学校のことも、友達のことも、授業のことも。
私が知らない間に、みんなが過ごしてきた毎日のことを。
「ねえ、春乃。私ね――」
言いかけて、言葉に詰まった。
何から話せばいいんだろう。
いや、これが最初だよね。
「ずっと……会いたかった。」
気づけば、口からこぼれていた。
春乃は一瞬目を丸くして、それから、優しく笑った。
「私もだよ」
その言葉を聞いて、胸の奥がじんわりと温かくなった。
ああ。
今日、ここに来られてよかった。
その言葉を春乃から聞けてよかった。
そう、思った。
花弁雪です。
今回は前回、途中で途切れてしまった、続きです。
2日がすごい長かったです、、、、。
今日からは、通常通りに投稿させていただきます。
本当に申し訳なかったです。
読者の皆様、これからも、作品を見守っていただけると嬉しいです。よろしくお願いしますm(_ _)m




