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違和感の先にあるもの

今になってわかる。ちょっとした違和感がいつの間にか日常に散りばめられていたこと。シャーペンも吊り革も階段も一つ一つは小さな違和感に過ぎない。でも、それらがすべて合わさることによって、私の中には大きな違和感が生まれた。もしかしたら、何か筋肉の病気になったんじゃないか。でも、疲労なだけかもしれない。定期テスト期間はほとんど家から出ないで座ってたから全然あり得る。上手く言葉にできない迷いと不安で青ざめていくのを感じた。けれど、一度そう思ってしまうと、頭から離れなくなった。


筋肉の病気。


その言葉が、頭の中で何度も繰り返される。

私は慌てて首を横に振った。そんなわけない。きっと疲れているだけだ。最近は睡眠だって十分に取れてるとはいえなかった。だから、テストが終われば、きっと元に戻る。そう自分に言い聞かせる。


それでも、胸の奥に引っかかった違和感だけは、どうしても抜けてくれなかった。


翌朝、制服に袖を通す。

いつもなら何気なくできる動作なのに、今日は妙に時間がかかった。ボタンを留める指が思うように動かない。


「……あれ?」

思わず呟いた。


もう一度やってみる。今度はできた。


だから、気のせいだったことにした。

朝食を済ませ、靴を履く。

「行って来ます」

玄関を出て、駅へ向かう。


昨日までと何も変わらない道。


同じ信号。同じ電柱。同じコンビニ。


なのに、私の中だけが昨日とは違っていた。


駅に着くと、いつものように階段を上る。

そこで、足が急に重くなった。

後ろから来た人を避けるため、端に寄る。

大丈夫。ちゃんと歩ける。

そう思って、また階段を上った。


教室に入ると、友達がいつも通り声をかけてきた。

「おはよう!」

「おはよう」

笑って返す。


何も変わっていない。

私も、いつも通りのはずだった。


それなのに。


机に鞄を置こうとしたとき、手から力が抜けた。

鞄が床に落ちる。


「あ……」


教室の何人かがこちらを振り返った。

「大丈夫?」

「うん。ちょっと手が滑っただけ」

笑ってごまかした。

昨日までなら、「疲れてるんだな」で終わっていた。

でも今日は違った。


シャーペン


吊り革


階段


ボタン


鞄


バラバラだった出来事が、一本の線になっていく。

私は、その線の先に何があるのかを考えるのが怖かった。だから、考えないことにした。テストが始まれば忘れられる。終われば全てが元に戻る。


きっと、そうだ。


そうであってほしい。


机の上の問題用紙に目を向けて、開始の合図を待つ。

「キーンコーンカーンコーン」

チャイムが鳴った。開始の合図だ。


シャーペンを持ったその瞬間。

また、指先から力が抜けた。

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