不思議な気持ち
夏希先生は、私たちが席につくと、口を開いた。
「検査の結果ですが、右手だけではなく、腕や脚のいくつかの筋肉で、神経からの指令がうまく伝わらなくなる異常が見られました。」
「、、、え?」
「血液検査では、筋肉そのものが傷んでいることを示すような異常はありませんでした。首のMRIにも、今回の症状を説明できるような異常はありません。」
「ですから、筋肉そのものよりも、筋肉を動かす神経のほうに問題がある可能性を考えています。」
また、先生は少し考えてから、
「推測の域を出ませんが、今までの症状の経過と、今日までの検査結果を総合すると、運動ニューロンという神経細胞に障害が起きている可能性が高いです。
まず、神経伝導検査と針筋電図を行いましょう。」
今まで分からなかったことが一気に進んだ。
頭が追いつかない。
「似た症状を起こす病気もありますので、もう少し検査が必要です。このまま入院してもらって、検査をするという形を取ろうと考えています。」
「はい。わかりました。」
そう言うのが精一杯だった。きっとお母さんもお父さんもそうだ。だって、今までわからなかったんだもん。
でも、どうせなら、もっと早くに分かって欲しかった。
「ごめん。ちょっとトイレ行ってから戻るね。
先、病室戻ってて!」
そう言って病室の少し奥にあるトイレに駆け込んだ。
個室に入った瞬間、体の全ての筋肉が緩んだ気がして、私は膝から崩れ落ちた。
少しほっとしたような、不安がなくなったような。
とても不思議な気持ちに私は包まれていた。
少しして、病室に戻ると、お母さんがお父さんに抱きつくようにして泣いていた。
それを見て、私はもっともっと泣いた。
みんなきっと「よかった。」って。
さっきの私と同じことを思ってる。




