96.村の選定と王子の暗躍
王から北方地区への技術導入の許可を得たオーロラ王女は、翌日からすぐに行動を開始した。
彼女が最初に着手したのは、村の選定だった。
王都の行政資料室で、北方地区の村の状況を調べた。
北方地区の中でも、最北端に位置するノースエンド村の税収が、他の村に比べて極端に少ないのだ。
その理由をオーロラ王女はユイに聞いた。
「ノースエンド村は、厳しい気候と物流の困難さから生活基盤が脆弱です。その結果、働く能力のある若い世代は、より温暖で王都に近い村へと急速に流出しています。現在のノースエンド村は、生産力の低い老人ばかりが残り、村の活力を失っている状態です」
オーロラ王女はユイの分析を聞き、この村こそが探していた村であると確信した。
「ノースエンド村は、エテルナ村のようにゴーレムが労働を担い、人が豊かさを享受する村のモデルケースとして理想的だわ」
ユイとオーロラ王女は、北方領地を治める領主に会うために動き出した。
幸い、領主は雪に閉ざされる領内を避け、王都に屋敷を構えていた。
王都の片隅にある領主の屋敷で、オーロラ王女は北方領主と対面した。
オーロラ王女は領主に対し、農業プラントの試験運用に、ノースエンド村を使わせてほしいとお願いした。
領主は、税収の少ない、いずれは消えていくだろう最果ての村に、王女が興味を示したことに驚きを隠さなかった。
彼は少し考えた後、王女に条件を提示した。
「ノースエンド村は、いずれ絶えるであろう領地だ。好きにしてもらって構わん。ただし、実験中に現在のわずかな税収が途絶えることは困る。現在の税収を王都が保証してくれるというのであれば、許可しよう」
オーロラ王女は、その場で領主の提案を受け入れた。
「もちろんです。王家の名にかけて、税収は保証いたします」
こうして、ノースエンド村は、エテルナ村の技術による大いなる変革の実験場となることが決定した。
オーロラ王女のこれらの行動はその日のうちに第一王子に伝わっていた。
第一王子は、王位継承の可能性が低い第三王女の、これらのパフォーマンスが気に入らなかった。
今は自分の利権を脅かしはしないが、いずれどうなるかなどわからない。
妹の成果を潰し、恥をかかせてやりたいと考えた。
何か邪魔をしてやろうと、側近と具体的な計画を練り始めた。
しかし、この第一王子の行動も、メイに筒抜けになっていた。
メイはユイに状況を伝えた。
オーロラ王女の成功は、自分の主人であるアレンにとっても得が多い。
メイは陰ながらオーロラ王女を支援することにした。
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