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第17節

 「それで、お話というのは何でしょうか?」

 

 手酌で葡萄酒を飲みながら、目の前で渋い顔をするシモンに話しかける。

 場所はいつもの礼拝堂。

 明かりは窓から差し込む月明かりのみ。


 「今回は殺しではないが……殺しになる可能性が高い。オントワーン大公は知っているか?」

 

 その名前を聞いて、フィルは目を丸くした。

 オントワーン大公、隣国を治める大物貴族で教皇とのつながりも深い人物だ。


 「存じています」

 「ううむ、彼が君に会いたがっているようでな。是非とも自分の晩餐会に呼んでほしいと教皇様へ言ってきたようだ」

 「まさか、直にですか?」

 

 ああ、とシモンは頷いた。


 「無論偽物を一度送り込んだのだが……なんと見抜かれた。そしてそのあと君の名前から住んでいる場所までしっかりと言い当ててきたんだ」

 「なぜ分かったのでしょう?」

 「それが分かれば良いが……どうにもおかしい。君は彼からできる限り情報を引き出してくれ。それと彼はどうにも教皇様からは疎まれている。隙があれば……」

 「わかりました。始末します」

 「いつもながらいい返事だ。では頼んだよ。晩餐会は3月後だそうだから」


 またも血生臭い指令を受けたフィル。

 隣国へはかなり時間がかかるものの、幸いにして時間はたっぷりとあった。

 

 「それにしても最近仕事が多いですね」

 「ああ、教皇様はどうにも最近疑心暗鬼が酷い。少しでも気に入らなければ殺せ殺せとおっしゃられる」

 「危ないですな」

 

 君子危うきに近寄らず。

 そういうことであろう。


 




 「というわけでまた出張してきます。レアおばさん。またお願いしますね」

 「またぁ~?」


 家に帰ると先に作業を終わらせてきたレアと留守番をしていたミラベルが頭を痛そうにしながら机に突っ伏していた。

 レアは元々、フィルから店番をまかせられることが多かったのだが……それでもこの頻度は初体験だろう。


 「次の仕事はどこなんだい?」

 「隣国」

 「国をまたいでいくのかい!?」


 聞いてきたレアがすっとんきょうな声をあげた。

 

 「そういうことだから、僕は寝るよ。それじゃ」


 明日の朝にはまた出張。

 フィルは英気を養うために寝ることにした。

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