収集結果
カーテンが閉められた店内でファズマは受話器を手に取っていた。
「おう、ゆっくりしてこい」
ディオスからの連絡にそう言うとファズマは受話器を置くとため息を吐いた。
連絡を受けたファズマは正直言って、
(助かった)
と思っていた。
ディオスからミクと共に家族と夕飯を食べると聞いたファズマはこれ以上人数が増えて料理の追加が出されるのはよして欲しいと思っていた。
そう思うのは当然である。店内からリビングに戻る途中で騒ぎ声はどんどん大きくなり、そして、
「ファズマ、チキンカツ追加!」
「私にはフリット!魚をお願いね!」
「俺にはピカタ!」
「牛肉のカルパッチョを頼む」
「魚のスープ」
リビングに戻ると食事をしているヒース達から更なる注文が矢のごとく飛び交い、ファズマはため息を吐いた。
「お前ら……」
ヒース達用にとあらかじめ市場で必要な食材を買いよく食べるものを作り大量に準備したというのに、作った料理が今やテーブルに半分しか残っていない。
それだけでは足りずファズマに何度か料理の注文をしている。
しかも彼ら、ご丁寧なことに各々で食材を持参して葬儀屋フネーラに訪れたのである。自分が食べたい料理のメインとなる食材だけ。
「それとパスタ!何か食べてえ!」
「それならトマトソースのパスタかい?」
パスタを食べたいと言ったザックにギベロックが問うた。
その言葉をきっかけとして会話はヒートアップした。
「それもいいが俺ならペペロンチーノだな」
「私ならカルボナーラかな」
「キノコのパスタ」
「トマトソースもいいがどうせならミートソースだな」
「なるほど。俺はラザニアだな」
各々が食べたいパスタについて語る中、全員の視線がギベロックに向けられる。
「お前だけ違うくねえか?」
「そうかい?同じパスタだが」
ヒース達は麺のパスを希望したがギベロックだけが平たいパスタ、しかも調理法が違う料理を希望したのである。
ギベロックの屁理屈を聞き流したヒースはファズマに頼んだ。
「いいんじゃねえか。作るのがファズマだからな」
「おい!」
「つうわけだ。全部頼む」
「だから俺は料理人じゃねえ!」
ヒースの言葉に今日で三回目となる言葉を叫ぶのであった。
それからしばらくして、ヒース達が腹いっぱいになり落ち着いたところでファズマは本題を切り出した。
「それで、調べてどうだった?」
ファズマから調べてと聞いたヒース達は真面目な話をするからと身を正した。
「ファズマが予想した通りだ。むさぼりガッロと繋がっていやがった」
ヒースはそう言うとギベロックに視線を向けて、互いに頷いた。
「ファズマもいくつか予想していたこともあるだろうからそうであるという前提で話をする」
ヒース達から説明を託されたギベロックが話し始めた。
「今回の件はガッロのおこぼれに与かっていた奴らが店長に向けたことだ」
やっぱりと頷いたファズマは視線で続けてくれと促した。
「店の向かいの店だが背後には調べただけで四つ、店から指示を出しているのはノイザック・ラスターラ」
「店からっつうことはあのクソグノシーか」
やはり偽名であったかとファズマは思った。そして、予想通りなら紳士的態度も演技である。
「しかし四つか。少ねえと見ていいのか多いと見ていいのか……少ねえな」
そして、手を組んで葬儀屋フネーラに攻撃を仕掛けてきた者達の数に少ないと言い切る。
昔は十、二十が当たり前であったから四は少なすぎる感覚なのである。
そもそも、それだけモルテが恨みを売ったというのに全てをあしらっているのだから復讐よりもモルテの手腕が恐ろしい方である。
「少ないってよく言えるな。」
「やっぱり店長がいるから?」
「それしか考えられない」
少しだけモルテと共に生活をして規格外を知っているとはいえ、ファズマのズレにザック、リチア、リアナが肩を下げた。
「それで一つ聞いていいか?」
「何だい?」
「調べた中に薬物を扱っている所がねえか?」
ファズマの質問に頭を抱えたギベロックはヒース達に顔を合わせた。
どうやら簡単に名前だけしか聞いていなかったようである。
そして、リチアがファズマに向いた。
「薬物も扱っているかは分からないけど薬を扱っていたところがあったよ」
「薬?」
「うん。名前はメディーシュン。表向きは日用雑貨、石鹸とか芳香剤を売ってるお店なんだけど、裏じゃ許可を得ていない滋養強壮剤の薬を売ってるって聞いた」
「そうか」
滋養強壮剤と聞いてファズマの表情が強張った。
聖ヴィターニリア教会で死体を確認してからずっとおかしいと思っていた点があった。
もしかしたら遺体の男は薬物で命を落としたのではないかと思い、ファズマは確信が得られるまでメディーシュンを要重要とした。
「他にはねえか?」
話はそれだけだと区切ると改めて尋ねた。
すると、ギベロックがまだあると話を続け、深夜まで続いたのであった。




