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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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占領

 同時刻、宿泊街からほど近い場所に構えるエノテカーナには一台の霊柩車が止められていた。

 そして、エノテカーナの店内ではガイウスとレオナルドが呆れた様子で店内に置かれたそれを見ていた。

「モルテ、ひと~つ聞きたいんだけれどぉ、これ何だぁ~?」

「見て分からんか。チーズだ」

 何を言うんだとサングラスの奥で白い目をしているガイウスに言うモルテ。

「モルテ、一つ聞きたいのですが、何故チーズが大量にあるのですか?」

「礼としてもらったからだ」

 大量のチーズについて茫然とした様子のレオナルドに大したことではないと言うモルテ。

「はっきり言いますモルテ。どうしてこんな大量にもらってきたのですか!」

 エノテカーナにレオナルドの悲鳴が響いた。

 それもそのはず、現在のエノテカーナ店内にはカウンターとテーブルだけでなく袋に入ったチーズが床にあったりと大量に置かれているのだ。

 下手に置いたら人が歩くスペースもない。そして、置かれているチーズがバランスを崩したならチーズの下敷きになる自信がある。

 しかも、これがまだ一種類だけならいいのだが様々な種類のチーズが大量に置かれているのだ。種類別に分けられている為に一度でも混ざれば探すのが大変であるのが悲しいとこである。

 さらに悲しいのは現在、チーズによりエノテカーナが占領されてしまい、店内にいるのがモルテ、ガイウス、レオナルド、そしてマスターだけである。

 ここで誰かが外から店内に入って来たなら置かれているチーズが崩れてチーズの海を泳ぐこととなる。

「仕方がないだろう。いらんと断ったところでさらに差し出すんだ。おかげで帰りの車の中が窮屈だったぞ」

「そこ自慢して言うところではない」

 大量のチーズを持って来ておきながら何を言うのだと睨むレオナルド。

 そもそも、どうやって車にエノテカーナが占領されるほどのチーズを詰められたのかと聞きたいところである。

「ところで、本当にもらっていいのか?」

「ああ。私達だけでは食いきれんからな」

「そうか」

 大量のチーズを前にしてマスターだけは違った。

 食材を吟味する目でモルテに問い、返された答えにさらに目を輝かせた。

「ありがたい。明日のメインはフォンデュかシチューだな」

「マスター……」

 そして、せっせとチーズの種類と味の確認と数の確保を始めたマスターに呆れた様子で目を向けるレオナルド。

 前代未聞、酒場がチーズに占領されているというのに気にもしていない。

「マスタ~、俺もチーズ試食しったいからぁ、チーズプラトたのみますぅ~」

「それはいいですね。準備をしますのでお待ちください」

 ガイウスの提案に同意したマスターはすぐさま占領している全種類のチーズを手にするとカウンター奥にある調理場へと持ち込んだ。

 そんな提案をしたガイウスにレオナルドは何とか座るスペースを作ろうとチーズを寄せながら呆れた様子を向けた。

「ガイウス……」

「いっや~、ムッカファーリアのチーズじゃないか~、食べたくなるってもんじゃないかぁ~」

「この様な状況でよく言える!」

「こぉ~んな状況だっからじゃないかねぇ~?」

 同じようにチーズを寄せて座るスペースを作るガイウスにレオナルドが突っ込むもあまり利いてはいない。

「そぉれに~、見た所、高級品もあったぞ~」

「そんなもので釣られませんから」

 しかも、チーズで釣るガイウスにこれ以上の追求をやめた。

 そもそも、何故釣ろうとしているのか分からない。

「ですが、後程いただきます」

 座れるスペースが出来るとレオナルドはそこに座った。

「大量のチーズの入手についても後程聞きますがまずはこれについて話ましょう」

 座るスペースが出来てそこに座ったモルテとガイウスを見てレオナルドは今朝届いた封筒を見せた。

「どう思いますか?」

「い~んじゃないかねぇ~」

「悪くはなかった」

 レオナルドの言葉にモルテとガイウスがよかったと口にする。

「それでは、あとは被らないようにですか」

「もぉ~初めからそれやっとけばよかったんじゃないかね~」

 ガイウスの一言をスルーして封筒から何枚もの紙を出して広げるレオナルド。

 手紙の紙には白黒の絵が描かれていた。

 実はこの手紙、工業が盛んであるギベリアンに店を構える金具店の新商品に関するものである。

 アシュミストでは葬儀や棺に使用する為に必要な望む金具や細工があまりない為にギベリアンから直接購入している物もある。そして、数カ月に何度かこうして新しい品に関して紹介の手紙が送られ、気に入ったのなら購入出来るようにとしているのである。

 この日はその数カ月に何度かある手紙が送られてきて、モルテの提案でエノテカーナに集まり互いに被らないようにと集まったのである。

「お待たせいたしました。チーズプラトです」

「待ってましたぁ~」

 その時、丁度いいタイミングにマスターがチーズプラトを持って現れた。

 待ち焦がれていたチーズプラトがカウンターに置かれたのを見たガイウスは一番に手を伸ばしチーズを食べた。

「全く」

 ガイウスの様子に呆れながらレオナルドもチーズを口にした。最も高級なチーズを。

「他にご注文は?」

「コーヒー・ラム・フロート」

「ヴァージンビニャコラーダを頼みます」

「スレジハンマーを頼みますぅ~」

「かしこまりました」

 マスターの言葉にいつも頼んでいるものを頼む三人。

 そうして、カクテルとチーズプラトをつまみとしながら金具について話をするのであった。

明日投稿出来るかな……

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