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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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教会

 アシュミスト旧住宅街には一つの教会がある。名を聖ヴィターニリア教会。ロード教を宗派とする教会である。

 その聖ヴィターニリア教会の近くには車一台も止められていない駐車場が存在する。駐車場があるのは週に一度ある礼拝に許しを請う為に訪れた住人、裕福な財閥など熱心な信者が利用するまだ所持台数が少ない車を置けるようにと元々馬車置場であった場所を改装したのである。

 そこに今、一台の霊柩車が止まったのである。

「とうちゃーく!」

 霊柩車から元気よくミクが降り立った。それに続くようにディオスとファズマも降りる。

「何だか近かったような」

「そりゃそうだ。ヴィターニア教会は旧住宅街にあるんだ。どうもまだ新住宅街がねくて河がまだ水堀としての機能していた時に建てられたつってたからな。当時は中心に近かったらしいがな」

 まだ旧住宅街の地理を知らないディオスの言葉にファズマはモルテと教会関係者から聞かされた話を思い出しながら話した。

 そんな話を聞きながらディオスはここを訪れるのは父親の葬式を営んだ時以来であると思い近くにある墓場に目を向けた。

「どうして人は死ぬんだろう」

 ディオスは当たり前のことではあるが何故か疑問に思ったことを小さく呟いた。

 モルテから死神であると聞かされ、死を司るイメージではなく死を与える存在と聞かされ、何故死神が人に死を与える、死なせるのであるのか考え込んでしまった。

「おーいディオス」

 考え込んでしまったディオスに少し離れた場所からファズマが叫んだ」

「何墓見てんだ。こっちだ」

「い、今行く!」

 ファズマの言葉にディオスは慌ててファズマとミクがいる場所へと駈け出した。

「ディオお兄ーさんボーとしてたけどどうしたの?」

「少し干渉に浸ってたみたいで」

 ミクに心配されて苦笑いをして答えたディオスにファズマが主張するように大声を上げた。

「さあ、さっさと終わらせて帰るぞ」

「ええぇー!」

「何だ?」

「すぐ帰るの?」

「市場に寄ってからな」

 帰ると言ったファズマにミクが頬を膨らませた。

「せっかく出かけたのに何で!」

「ファズマ、市場に寄るってもしかして……」

「食材の買い出しだ」

 ヒース達が勝手に集合場所を葬儀屋フネーラに指定し、さらにその流れで報酬が料理となっている為に現在ある食材では心もとないとファズマはため息をついた。

「いつも食材!たまには違うところに行きたい!」

「そう言ったってな……」

 ミクの我が儘にファズマはすぐにでも食材を買って何にでも備える準備でいたのにこのままではすね続けると困ってしまいディオスを見て、ひらめいた。

「よし、市場で下すからミクのことはディオスに任せる!」

「え!?」

 ファズマから突然話を振られてディオスは呆気にとられた。

「そうと決まればさっさと済ませるぞ!」

「え?え!?せ、説明!説明を求めるよファズマ!」

 背後からディオスの必死な声を聞き流しながらファズマは振り払うかのように聖ヴィターニリア教会に早足で駆け込んだ。

「ファズマ説明!」

「ファズ、本当にいいの?」

 その後を慌ててディオスが、嬉しそうな表情を浮かべたミクが後を追う。


 聖ヴィターニリア教会に入るなり、ファズマは門の近くにいた女性の助祭に声をかけた。

「すみません。連絡を受けた葬儀屋フネーラのファズマです。遅くなり申し訳ございません」

 聖ヴィターニリア教会から連絡を受けていたことを営業スタイルで言った。

 さすがにファズマのあとに聖ヴィターニリア教会に入ったディオスとミクもファズマの話し方を耳にして、既に仕事に入っていると悟りさっきまで外での騒ぎを一時中断した。

「お待ちしておりました。只今司祭様にお伝えして参ります。しばらくここでお待ちしてください」

「分かりました」

 女性助祭の言葉にファズマは頷くと、司祭に知らせに行った後姿を見届けた。

「ファズマ……」

 女性助祭がいなくなったのを見届けてディオスがじと目でファズマに尋ねた。

「ミクを任せるってどうゆうこと?」

「これが終わったらミクの用事に付き合えってことだ。せっかくの休みなんだ。ミクと二人で楽しんでこい」

「だから、何で余裕なんだ……」

 一時中断した会話を再び開始したディオス。だが、ファズマから出てきた答えに今は知るのをあきらめた臨時休業の真実をまだ聞かないことを思い出して頭を抱えてしまった。

 一方でミクはファズマの話からこのまま出かけていてもいいこと、でれにディオスが付き合ってくれると知って喜んでいた。

 そんな二人の落差がある様子を見ていたファズマの背後から三人に向けて声がかけられた。

「待たせて申し訳ない」

 その声にファズマは振り返り、ディオスとミクは声のした方向を見た。

「よくおいで下さいました。ようこそ。聖ヴィターニリア教会へ」

 聖ヴィターニリア教会司祭クロスビー・ハイエルンが出迎えたのであった。

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