閑話 復讐案
全く分からない。
グノシー・リナシータ改めノイザック・ラスターラは店内の窓から葬儀屋フネーラを出る三人の住人を見ながらおかしいと思っていた。
葬儀屋フネーラの向かいに店を構えることは成功した。だが、店を開いた当日に臨時休業は想定外であった。
ノイザックは元財閥であるガッロのおこぼれを貰いながら運よく警察に捕まらなかった悪事を働いた名が平凡な店の従業員である。
ノイザックの目的は葬儀屋フネーラを営むモルテへの復讐である。
モルテが当時ガッロを後ろ盾として勢力を広げていた借金取りを警察に告発したことで連鎖的にガッロが捕まることとなり、同じようにガッロからおこぼれを貰い悪事に手を染めていた関係者が逮捕されることとなった。
これによりガッロという大きな後ろ盾を失った関係者はこの事態を起こしたモルテに復讐を考えたのである。
一見逆恨みのようであるが彼らはそのようには思っていない。むしろ自分達を含めガッロは悪いわけではなく、非はモルテにあると歪んだら思想を持っている。
復讐を考えたまではよかった。しかし、モルテという人物を調べれば調べるほど復讐が難しい相手であると思い知らされた。
モルテは数多の人物から恨みや妬みを買い、その度に復讐をしようとする輩が現れたのだがその全てを何事もなくあしらってきた強者であった。
恨みや妬みを買ったのは五年前に起きたアシュミスト統治方針改正を行うために前議長と議員数名を追放し、本人ら関係者から逆恨みをされたのである。
当然彼らもモルテに復讐をしたのだが尽く失敗。しかも、どういうわけか警察嫌いのモルテの背後にはその警察がおり、一度でも復讐をしたなら警察に捕まり牢屋へと投げ込まれるのである。
あげくのはてには葬儀屋フネーラに勤める従業員を狙おうものなら人格が変容するとまで言われている。
その為に現在も復讐をしようとする者達は復讐をする機会を見ているのだがその機会は得られてはいない。
こういったことがあった為にノイザック達も警察には引っ掛からず人格が変容しない復讐方法を考えた。そして出たのが、「葬儀屋フネーラを潰す」ことであった。
それにはどうするかも考えられた。
しかし、出るもの全てが今までモルテに復讐した者達が失敗したものでもった。
案が尽きたころ、仲間の一人が口を開きこう言った。
「近くに店を開き客を奪えばいい」
一見時間がかかる復讐案で成功するかどうか分からないが考えてみれば今までにない方法であった。
そもそも、今までは時間をかけても周囲から孤立させたり直接狙った復讐であったのだ。これなら直接的ではなく間接的に、人の目をこちらに向けさせて葬儀屋フネーラに目がいかないように出来る。
やることは決まった。
早速行動を開始した。
いい物件、どうも葬儀屋フネーラの近くにある空き物件はその向かいにしかなかったがむしろ見せびらかしてやると意気込み内装を改装。
葬儀屋フネーラを潰す為に客を呼び込む仕組みを懸命に考え、葬儀屋がどういった仕事を行っているのか調べた。意外にも葬儀屋の仕事に関する内容が少なかったのに驚いたが本職でやるわけではないので形だけでいいと早々に割り切った。
そして、それら全てを集結したのが葬儀屋リナシータなのである。
ノイザックが葬儀屋フネーラのことを考えていると背後から声がかけられた。
「ここにいたのかノイザック」
「タンバンか」
同じようにモルテの復讐を誓うタンバン・ハンドは鋭い目付きのまま静かに店内を歩きながら話始めた。
「向こうの様子を見てたのか?」
「ああ」
「どうだ?」
「今さっき全員が外出した」
「全員?留守番をしていた子供も出かけたのか?」
「そうだ。先に出ていた二人の従業員が戻って来たんだがすぐに子供を連れて出て行った」
完全に紳士的な振るまいと言葉遣いではないノイザックは葬儀屋フネーラの従業員に気づかれないように見張っていたことを全て話した。
ノイザックの話を聞いたタンバンは手を顎に当て考え込んだ。
「全く分からねえな。奴らが考えていることが」
「俺もだ」
向かいに今にも客を奪うぞと意気込むライバル店、実際にそれを目的としているのだが、そんな店があるのに葬儀屋フネーラは全く気にしている様子を見せてはいない。
しかも、余裕なのか挑発を一度しただけでいきなり臨時休業にしたり、警察にこちらを紹介して利用までさせている。
正直言って、葬儀屋フネーラが何を思ってこんなことをしているのか分からない。
「確か、遺体の預かりを頼んできた警官は従業員から聞いたと言ったな?」
「そう言っていた。臨時休業はあのモルテの指示のようだが、紹介は従業員かららしい」
そう言うと二人はまた考え込んだ。
どうやら臨時休業と店の紹介は別々のようであるが、いくら臨時休業でも向かいの存在には気にするはず。これもモルテの指示なのかと警戒する。
利用客、それもよく遺体を預けに来る警察は常連のようなもの。そんな常連の申し出を断りこちらを紹介した。臨時休業でも預かることは出来るはず。それなのにそれをしなかった。
「おかしいのはこの街に存在する二店の葬儀屋が遺体を預かることが出来ないと言ったことだ」
警官は遺体を預ける際の理由として二店から断られたことを言った。
「あると思うかそのようなことが」
「昨日起こった土砂崩れと河の反乱で多大な死者が出ているなら分かるがこればかりは調べてみなければ分からない」
「やはりそうか」
タンバンの言葉にノイザックは指示を出した。
現在、葬儀屋フネーラを潰すための指示を出せるのはノイザックだけである。
「葬儀屋フネーラの目的が分からん以上は無闇に接触、店に忍び込むな。出来るだけ距離をとれ。あまりにもおかしすぎる」
「しねえよ。下手にやって警察に尻尾を捕まれたくないからな」
「だが、尾行は続けろ。目的が分かる手がかりが掴めるかもしれない」
「部下に伝えておく」
頷くタンバンを見てノイザックは改めて葬儀屋フネーラを見た。
葬儀屋フネーラ、モルテへの復讐はまだ始まったばかり。じわじわと奪い尽くすとノイザックは決意を改めた。
その頃モルテは……
???「お願いします」
モルテ「またか……」
何があったかは今後の閑話にて




