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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
4章 葬儀屋である理由
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三人一緒に

 警官二名が葬儀屋フネーラから完全に出て行ったのを見計らってディオスが叫んだ。

「な、何してるんですか!」

「何がだ?」

「どうしてリナシータを紹介しているんですか!」

 ディオスとしても葬儀屋リナシータがガッロと何らかの関係があることには気づいている。しかも葬儀屋フネーラに何かをしようとしているのも薄々と感じているのだが、ファズマがとった行動には理解できないでいた。

 そんなディオスの言動にファズマはいつも通りに答えた。

「休業だから」

「お客取られたらどうするんですか!」

「潰れるっつっただろ。むしろ遺体が運ばれればなおよしだ」

「よしって言う理由が分からないよ!」

「ディオお兄ーさんうるさい」

 慌てるディオスに全く問題はないと言い切るファズマ。そしてディオスがうるさいとじと目で見るミク。

 この瞬間、はっきりと事情を知らないディオスと事情を知るファズマとミクに大きな差がある事を証明した。

「ところでミク、店長は?」

 ミクにうるさいと言われてブツブツと呟いているディオスを無視してファズマはさっきから姿を見ていないモルテの所在を尋ねた。

「師匠ね、出かけたよ」

「どこにだ?」

「ムッカファーリア」

 ムッカファーリアはアシュミストから少し離れた東側にある牧草を営む村である。

 余談であるがモルテが前回牛を一頭買ってきたのもそこである。

 ミクからモルテの所在を聞いたファズマは出かけた理由を悟った。

「と言うことはファーリアチーズか?二年物と五年物を買いに?」

「多分ね。師匠ね、お休みだから味わってくるって言ってた」

 もはや完全に休業を楽しんでいるモルテである。

 ファズマとミクの話を耳にしたディオスは力なくそれについて突っ込んだ。

「楽しんでませんか?」

「休業だからな」

「久しぶりにお休みにしたから師匠ね、楽しみって言ってたよ」

「目の前に同じ店が出来たのに余裕じゃないかな?」

「何度もいわせんな。あれはすぐに潰れるつっただろ。だから余裕なんだ」

「だからお休みなんだって。」

 疑問をぶつけ余裕のないディオスだが、ファズマとミクはモルテと同じく余裕で受け答えに難なく答えている。

 そうしていると、ミクが思い出したようにファズマに催促をした。

「ファズ、師匠がチーズ買ってきたら何か作って!」

「チーズでか?それならチーズフォンデュだな」

「お菓子も」

「菓子もかよ……マフィンかチーズケーキでいいか?」

「うん」

 チーズについて盛り上がるファズマとミクにディオスは話が脱線したのを見て葬儀屋リナシータ関する話をするのをあきらめた。

 どうもディオスとファズマ達とでは感じている危機感や余裕のあり方が違うからである。これはさすがに全てが分かってから聞いた方がいいと考えなおした。

「……ピッツァとグラタン」

「だから俺は料理人じゃねえ!」

 あきらめてチーズ料理を要望したディオスにファズマが突っ込んだ。

 どうやらディオスは一ヶ月半の間に要望をすれば何でも作って出してくれるファズマの料理の腕と葬儀屋フネーラの食事に完全に染まっているようである。

「あとカプレーゼ」

「話聞け!そもそも店長が今回買ってくるチーズは固い方だ。柔らかくねえからカプレーゼは無理だ!」

 さらに出された要望にファズマは食材が適していないと撥ね退けた。さすがに適した食材がなければいくら工夫をしたところで無理なものは無理である。

「師匠が帰って来たら買ってきてもらおう」

「……ミク、食いてえのか?」

「うん!」

 ミクの無邪気な言葉にファズマは恐る恐る尋ねて頭を抱えた。何故これほどまでに料理に対する注文が多いのかと考える一方でディオスはミクという味方を付けた為に喜んでいた。

「そういえば、教会から電話がきてたよ」

「教会から?」

 突然ミクがチーズの話から教会へと話題を変え、考え込んでいたファズマが顔を上げた。

「うん。遺体が運び込まれたから切って欲しいって」

「切ってって……」

 教会が切ると聞いたディオスは怖さを感じて恐る恐るファズマを見た。そもそも、何故教会が葬儀屋に切る、恐らく遺体であろう。それを切るのは何故かと考えてしまう。

 一方でファズマはミクが誰が教会に運び込んだのか言わなかったことから葬儀業、警察関連ではなく個人で運び込んだのであると考えていた。

「分かった。これもいい機会だからディオスを連れて行く」

「え!?」

 行くとは一言も言っていないのにディオスはファズマから教会に行くことが強制的に決められてしまった。

「それとミクは……」

「あたしも行くー!」

「おいおい……」

 ミクに留守番を頼もうとしたらいきなり行くと言われた。

「師匠もファズもディオお兄―さんも出かけてずるい!あたしも外に出たいー!」

「あのな……」

 我慢をしろと言おうとして、やめた。

「わーた!それなら全員で教会に行くぞ!」

「やったー!」

 ファズマの言葉にミクが喜んだ。

 正直言ってミクを連れて行くのはファズマの思い付きで深い意味はない。それに、このまま留守番をさせてこっそり外に出られた方が困る。

 一方でディオスは完全に置かれていて、自分には拒否権はないのかと思っていた。

ディオスが死神事情に振り回されるのは分かるが、何故ファズマが料理で振り回されるんだ!?

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