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死神の葬儀屋  作者: 水尺 燐
2章 葬儀屋の仕事
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閑話 ファズマの料理

「さてと……」

 この日、ファズマは早めに昼食の準備を始めていた。


 理由は開店直後に訪れたファズマの古い友人である仲間がアルバイト代として昼食と弁当を要求してきたからだ。

 ファズマとしては断る理由はなかった。モルテに床の修理を昼食まで直すと言ったがそれまでに直せる見通はあった。ファズマが昼食を作るから時間が後にずれても問題はなかったのだがディオスの反応を見て、

(何言ってんだ?)

 と、ディオスが木工に関しては素人で戦力外と感じた。これでは昼食前には終わらない。いや、後にずれ込んでも修理が終わるのは不可能。その前にモルテの空腹が怒気へと変わり襲いかかると悟ったファズマは八つ当たりに近い感情をディオスにぶつけた。

 その直後に訪れたファズマの仲間三人が訪れた。事情を聞くと仕事が休みだから働きに来たと言った。これはチャンスと思ったがバイト代が昼食と弁当には頭を抱えた。あまりにも予想通りの発言に料理屋じゃないと叫びたくなった。

 あげくのはてには……

「俺ヒレカツ!肉食べてぇ!」

「俺は魚だな。できれば焼いてくれ」

「私はオムレツ。あ、チーズは忘れないで。それとソースはトマト」

「あたし野菜食べたい!」

「ミクちゃん本当に野菜食べたいのね」

「そ、それじゃ俺はピッツァとパスタとラザーニャ」

 と全員が全員、ディオスとミクも混ざりファズマに昼食のメニューを注文した。さすがにディオスが多く挙げたのには驚きファズマは呆れながら突っ込んだ。

「おいおい、ずいぶん言ったな……」

 これで終わってくれればよかったのだが……

「追加でシチュー!」

「ずるいぞリチア!」

「カルパッチョ追加!」

「ギベロック!?なら俺はプディング!甘い菓子が食いてぇ!」

「それいいねザック!」

「菓子か。最後に食べたのはいつかな?」

「あたしは玉ねぎのパイ食べたい!」

 と更なる注文を出してきた。その中にはどう見積もっても時間がかかる料理も含まれていた。

(お前ら絶対に作り手の苦労を考えてないな!)

 あまりの数の多さに心の底で毒づくファズマ。

 殆どの料理はファズマ一人で作っており、店内の中ではダントツにファズマが上手い。しかも、ファズマの手伝いをしたいと思ってもファズマが一人で作った時よりも時間がかかるから誰も手伝えない。モルテを除いて。

「よし分かった!」

 ファズマは派手に手を叩いて会話を止めた。

「それじゃザックとギベロックはディオスと一緒に床の修理。リチアは新聞社に告知を出しに行ってくれ。それで早くすんだら床の修理を手伝ってくれ」

「おうよ!」

「分かった」

「りょーかい」

 ファズマの薄ら笑いを浮かべた表情から出された指示に三者三様に答える。

「それじゃ後は頼む。俺は昼飯作ってくるから」

 そう言って早々に店内の奥へと入りキッチンへと移動。それから昼食に使う材料を冷蔵庫から莫大を出しながら何を作ろうか考える。その理由は簡単。

「食いきれないほど出して後悔させてやる!」

 なかば真逆とも思える理由を述べて冒頭に至る。


 ファズマが最初に行ったのはオーブンの余熱。作るものを決めているだけに完成にいちばん時間がかかる料理から準備にかかった。

 次に野菜。達人並みの早さで皮を剥き終えると品に合わせて切っていく。

 次いで肉と魚。魚はグアルーギョのみ。肉は牛、豚、鳥を品に合わせて同じく切っていく。

 オーブンの様子を見ると急いで熱したフライパンで牛肉の表面全てを焼き、オーブンへと入れた。

 これをあいずにファズマは短い時間で大量の料理を作っていった。煮込みから始まり蒸す、揚げる、焼くと狭いキッチンで一体どんな裏技を使ったんだと聞きたくなるような早さで仕上げていった。途中でオーブンに入れて焼き上げた牛肉を取り出してパイを入れたりもしたが時間の無駄ロスタイムは全くなかった。

 そして……


 オーブンからピッツァを取り出したことで全てのメニューが完成した。

「よし!」

 ファズマの目は不気味に笑っていた。一体どの様な反応をするのかが楽しみで仕方がない。

 そう思いながらテーブルに置きもう空いているスペースがないのを見ると弁当を五つ作り始めた。五つなのは訪れていないファズマの仲間二人が含まれているから。

 そんな時、昼食の時間だろうとモルテがリビングへと訪れた。

「なんだファズマ、もう作り終えたのか?ん?随分と作ったな」

 リビングのテーブルに置かれている大量の品に軽い驚きを浮かべるモルテ。

「はい。今日はお客がいるのでそれで」

「なるほど」

 ファズマの解答にモルテの表面からはすでに驚いた表面はなく普段の様に席に座るった。

「ファズマ出来たか~?」

 次いで現れたのは店内にいたディオス達五人。そろそろだろうとミクが言ったことで昼食を食べにリビングに入ったのだが、

「って、作りすぎじゃない!?」

 テーブルに隙間なく置かれた昼食の数と量にリチアが驚いて声を上げた。それはもちろんディオス、ザック、ギベロック、ミクも同じである。

「ほう。客と言うのは悪ガキ達のことか」

 現れたザック達三人モルテは納得の表情を浮かべた。

「ああ、お前らがあれ食べたいこれ食べたいって言ったから全部作ってみたんだ」

「作りすぎだ!」

 あくまで希望をしただけなのにこんなにも作るとは思っていなかったザック達は一斉に突っ込んだ。

「短時間でこれだけ作ったってすごい!」

 ただ一人、ディオスは全く違う感想を述べた。


 そして、

「もう、ムリ……」

「食べられない…」

「……お腹いっぱい……」

「ファズ、作りすぎだよぉ……」

 数と量の多さにミクを含めザック達が悲鳴を上げた。

「何言ってんだ?こんなに作ったんだ。店長の前で残したら……怒られるぞ」

 ファズマの目が笑っていない表情にザック達はただ料理を食べたかっただけなのにどうしてこんなにも苦しんでいるのか分からず撃沈した。

 一方では、

「このピッツァおいしい……」

 ディオスが味わいながらゆっくりと食事をしており、

「ふむ。このローストビーフはいけるな」

 モルテは料理をもくもくと食べていた。


 結局、ザック達は苦しみながら料理を食べるも食べきれず、最後はモルテが表情を変えずに一人で全部を完食。その後、弁当を持たされ帰路についた。

ファズマは短時間でかなりの数を作っています。


ヒレカツ、牛肉の蒸し焼き、鳥肉のパン粉焼き、豚肉の香辛料焼き、ローストビーフ、グアルーギョのソテー、カルパッチョ、チーズのオムレツ(トマトソース)、トマトのグラタン、クリーム煮、玉ねぎのパイ、シーフードパスタ、ラザーニャ、ピッツァ、豆のサラダ、プディング、揚げ菓子



はっきり言って作りすぎです

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