葬儀屋の用事
ディオスとファズマは昼食後、残っていた用事をすませるために街へと出ていた。
始めに行ったことは職業案内所で葬儀屋フネーラへの紹介を下げてもらうように頼んだこと。これはディオスがいたからかすぐにすんだ。
何故ディオスがいたからかと言うと、葬儀屋フネーラに勝手に紹介状を書いているのがクラウディアにディオスを雇ったと言ったら、
「やっとなのね。雇ってくれたらいいのよ。本当に店長は何を考えて雇わないって言っているのか分からないわ。いいわ。雇ったならもう紹介状は書かないから。店長にもそう言っておいてね。」
とあっさりと頼みを聞いてくれたのだ。これにはさすがに職業案内所を出たファズマが、
「今までの苦労は何だったんだ?」
と今まで下げてもらえなかったことに対する愚痴を吐き、
「もっと時間がかかると見ていたのにあんなに簡単に下げるってどうゆうことだ!!」
と車に八つ当たりをしていた。
次に向かったのは街の郊外にある木材店。郊外にあるのは山の近くにある森林がありそこから切り倒して加工を行い売っているから。
ここでは棺の材料と床板にした木材を買うために。
「そう言えば、どうして棺を作っているんだ?」
棺の木材を買うと聞いてディオスは何故わざわざ木材を勝って手作りで棺を作るのかとファズマに尋ねた。
「棺を作る場所があまりないからな。それに、作ってもらうと費用がかかる。だから手作りをして費用を減らしているんだ」
予想外の理由に驚くディオス。
「それに、俺も何度か棺作ってるし、基本を覚えれば壁だろうが床だろうが天井でも直せる」
(棺を作る技術で壁とかを直せるって……って、床と天井もってことは建物直しているものだよな!?)
ファズマの思いもよらない発言に更に驚く表情を浮かべるディオス。はっきり言ってそんな技術で建物を直すとは一体どんな技量、いや、どんな壊し方をしてそのように至ることになったのかを知りたい。
「これからはディオスにも棺作りやらせるからな。しっかり身に付けろよ」
そんなディオスにお構い無くファズマは仕事の先輩として言った。
次に向かったのは街に存在する薬品を専門に扱う専門店。
「こんな所に店が……」
「普通は知らないだろうな」
この日何度目になるか分からない驚いているディオスにファズマは頷いた。
それもそのはず、専門店が商業街の人通りが多い場所にあるとは思わなかったからだ。
「ここは病院にも薬品を出しているんだが、劇薬なんかもあるから一般には売っていないんだ」
「あれ?それじゃ店は……」
「この店が認めているから買えるんだ」
ディオスに薬品専門店での買い物の仕組みを教えるファズマ。
そんな会話をしていると店員が薬品の入った四つの袋を持って現れた。
「お待ちどうさまです」
「どうも」
店員の声にファズマはディオスと共に各二つずつ持つと車へと戻った。
こうしてモルテから言い渡された予定は夕食の材料を買う以外は終わった。
「疲れたぁ~……」
ファズマは休憩と称して市場に近いベンチに座り長い溜め息を吐いた。
一方でディオスは浮かない顔であった。
「どうしたんだ?」
「え?あ、その……」
ファズマが突然尋ねてきた為に言葉に詰まるディオス。そして、一呼吸置いて悩みを打ち明けた。
「店に運ばれてきた男の人のことを考えた」
「あ~、あの……」
ディオスの言葉にファズマは思い出したという表情を浮かべる。
「どうしてあの人の家族は会いたくないのか分からなくて……」
「それを俺らが考えてもしかないだろ?」
「そうだけど、かわいそうと言うか何と言うか、本当にそれでいいのかと思って……」
「で、何かしたいと?」
「したくても多分何もできない……」
ディオスの言葉にそうだろうと心の中で呟くファズマ。これは葬儀屋としては専門外だから何も出来なくて当たり前なのだ。
「だけど、事情を知りたい」
「はあぁぁぁ!?」
だが、ディオスの予想外の言葉に叫んだファズマ。
周りの人間が何事かと注目するのもお構い無くディオスに今まで以上の口の悪さで詰め寄る。
「待ておい!今何つった?」
「事情を知りたい。聞きに行きたい」
「っざけんな!何考えてる!」
「どうして行きたくないか知りたいだけだ」
「知ってどうすんだ!」
「知りたいだけです」
それを聞いてファズマは呆れてガクリと肩を落とした。
「それはただの興味ってもんだぞ」
「分かっています。だけど、このまま会わないって言うのが嫌なんです」
ディオスの解答にファズマは溜め息を付いた。
「つまり説得するつもりだろ?出来ないっつときながらやる気だったな?やめとけ。それはエゴっつもんだ。それに、説得したところでディオスがへこむだけだ。やめとけやめとけ」
「だけど……」
現実を突きつけるファズマにディオスは抗議の目線を向ける。どうにも納得していない。
「それに、その男の家がどこにあるかも知れねえのにどうやって説得するつもりだったんだ?」
「あ……」
「あ……じゃねえ!」
ファズマの言葉にディオスはそのまで考えていなかった。とにかく説得したいという思いが強く深く考えていなかった。
「くっそ!このままどこかに行って下手に動かれたら困る」
しばらく考えた末にファズマは決意を口にした。
「しゃあねえ、俺があの男ん家に連れてってやる」
「ほ、本当に!?」
「あっさり受け入れるな!」
ファズマの思いもよらない言葉にディオスが飛び付くも警戒感がなくファズマに突っ込まれた。
「で、でもどうやって?」
そして、ファズマがどうやって連れていくのか気になり尋ねるディオス。
「朝来た警官覚えてるか?そいつらの手帳を覗いたから場所は覚えている」
その質問にファズマが人差し指で頭を叩きながら言う。
「ただし連れて行く代わりに条件が二つ。一つは葬儀屋であることを伏せること。二つは夕飯の材料を買う時間までだ」
ファズマは指を立てながらディオスに突きつける。
「これを守れねえと連れて行けない。それに、店長にバレたりしたら洒落にならない。いいか?」
「……はい」
ファズマの鋭い視線にディオスは一瞬言葉につまった。
自分がやろうとしていることはただのエゴ。けれど、それを我慢して見て見ぬふりも出来ない。そして覚悟を決めて頷く。
「よし!ここから男ん家はすぐだ。行くぞ」
「はい!」
ファズマの言葉にディオスは己の為に動き出した。




