表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エイプリル・ループ ~僕と彼女の4月0日~  作者: 尾久沖ちひろ
ループ3 4月1日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/21

#8 「もしかして」

「でも、どうしてループするのが4月1日なんだ? 今日という日に何かあるのか?」



 登校途中も頭の中で仮説を立て、根本的な疑問に突き当たった。



「エイプリル・フールだからこんな嘘か冗談みたいなことが起こる、と考えられなくもないけど……僕だけが4月1日を繰り返していて、そして僕にとって今日は高等部の入学式。ということは──もしかして『入学式』というイベントに何かループの原因があるのか?」



 高校生生活がスタートする節目の日は、誰の人生に於いても重要な一日と言えるだろう。

 ただし僕の場合は中高一貫校ということで、中等部から高等部へと校舎が移る程度で、敷地自体は変わらず、生活にも特段の変化は無い。

 あの友人三人のように、学校そのものが変わって通学路や学習環境が一変したり、外部進学者のように生活環境が全く変わった訳ではないのだ。



「徹夜してもループする。となると、ループ阻止のためには、もっと大きな変化が必要ってことか?」



 これまで僕が加えてきた変化は、結局は最初の4月1日の延長線上、些細な変化でしかなかった。



 盤面そのものを引っ繰り返すほどの大きな変化、となると──



「いっそ学校をサボる、とか? い、いやダメだ。母さんだって後で来るんだ。急に休んだら後で絶対怒られる。例えそれでループが終わったとしても、4月2日以降の生活がヤバくなる……!」



 祖父も言っていた通り、人は第一印象で評価が決まる。

 入学式をサボッたとなれば、担任教師からもクラスメイトからも一年間は白い目を向けられる。



 学校そのものをサボるのは、もう他に思い付かないという場合の最終手段。

 後々のダメージを考慮して、今はもう少し安全な策を取りたい。



「よし、こうしよう。急な腹痛に襲われて保健室で休む。入学式そのものはサボるが、治ったってことでその後のクラス紹介には顔を出す。これなら印象もそう悪くならない。式典中は僕がどこに居たか分からなかったみたいだから、母さんにも多分バレない」



 方針は決定、後は行動あるのみ。



「どうもありがとう」

「い、いえいえ、どう致しまして……」



 ただし、前回やった記念撮影の申し出は今回も行った。

 これは完全に私欲である。

 美人ママから笑顔で感謝を述べられれば、悪い気はしないものだ。



「すみません。急にお腹が痛くなって……保健室に行ってもいいですか?」

「これから入学式ですよ? 我慢できませんか?」

「式典の最中に漏らしたら大惨事ですよ。それでもいいと言うなら出席しますけど……」

「……それもそうですね」



 半ば脅迫じみた態度で担任教師から許可を貰い、僕だけは保健室へ。

 そもそも僕は式典で何が行われて、誰が何を言うか、これまでのループの中で全て把握しているのだから、出なくても何ら問題無いのだ。



「私は式の方に行って来るが、大丈夫かな?」

「はい。しばらく横になっていれば収まると思います」



 長身の養護教諭が退室して、室内には僕一人だけが残された。

 式典が終わり、教室に戻ってクラス紹介が始まる時刻も当然バッチリ把握していたため、その頃に保健室を後にした。



染井春一(そめいはるかず)です。今日は体調が悪くて、式典中は保健室に行ってましたけど、今はすっかり落ち着きました。あと、今日という日を迎えるのは、これで『四回目』です。宜しくお願いします」



 クラス紹介の場面で、僕は再び台詞を変えた。

「四回目」という部分で、やはりクラスメイトたちに変な顔をされたが、そんなものは些細なこと。



 そして最後に自己紹介したのは──



吉野仁香(よしのにか)、です。その……」



 眼鏡越しの視線がチラリと僕へ移る。

 偶然──にしては、視線が交わるが少し長いような、そんな気がした。



「ま、まだ、こっちに来て生活に慣れていないので、色々教えて貰えると助かります。宜しくお願いします……」



 一礼して、吉野さんは着席する。



「彼女、前はあんな台詞だったっけ……?」



 三回のループの中で、クラスの自己紹介は大体頭に入っている。

 一言一句に至るまで完全に記憶している、とまでは言わないが、聞いて違和感を覚える、と変化を感じ取れる程度には脳に刻まれていた。



 帰宅した後も、吉野さんのことを考えていた。



「思い返してみれば、今回と前回は彼女を校門で見た覚えが無かったな……」



 あの美人ママの印象が強過ぎて、彼女のことを見落としただけかも知れない。

 しかし、最初から校門に現れていなかった、という可能性も捨て切れない。



「僕が影響を及ぼさない限り、人々の行動は一切変わらないはず。自己紹介に関しては、僕が仮病で式典をサボッたことが何か影響を与えたから、とも考えられるけど、校門前の出来事は式典をサボる前だ」



 僕が影響を与えていないのに、それ以前のループと違う行動を取った者が一人。



「もしかして、吉野さんも僕と同じ、ループから外れた存在……?」



 彼女もループを自覚しており、この4月1日を繰り返し体験しているとしたら。



「まさかとは思うけど、彼女がこのループを仕組んでいる? いや、流石に考え過ぎか……」



 何にせよ、今日やるべきことはやった。

 入学式をサボったことが功を奏して、このループが終わればそれで解決、最も理想的な展開だ。



 だが、明日もまた今日だったならば、今度は──



「吉野さんが鍵かも知れない。また校門前で会えたら訊いてみよう。……会えたら、だけど」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ