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エイプリル・ループ ~僕と彼女の4月0日~  作者: 尾久沖ちひろ
ループ1 4月1日

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4/21

#4 「あれ……?」

 ハラリハラリと舞う桜の花弁が、僕の肩にそっと乗る。

 校門とその道中に植えられた桜の木々は、予知夢で見た通り「九分咲き」。



「みんな、もうちょっと寄ってね~」

「だってさ。オリオン、もっと真ん中に寄ってよ。僕が見切れちゃう」

「やめろ伯雅(はくが)、そんなに強く押すな……」

「ほらほら七香(ななか)も。もうちょっとオリオンの方に詰めなさいって」

「ちょ、ちょっと晴蘭(せいらん)……!」

「フフッ、良い感じよ。じゃあ撮るわね~」



 記念撮影をしている四人の生徒は、僕と同じ一年A組に振り分けられていた。

 ここもやはり、予知夢の通り。



 撮影の邪魔にならないように通り抜けて校門を潜ろうとすると、同じく新入生と思しき女子生徒が目に入った。

 背丈は僕より少し低いくらいで、髪は長く、眼鏡を掛けている。



 外見的には特に目を引く要素は無いのだが、校門手前に立ったまま、何故かそこを動こうとしないあの彼女も、先程の四人と同じく一年A組だったが、名前が出て来ない。

 クラスの自己紹介では最後に名乗り、名前に「吉」の字が入っていたのは憶えているが──



「……吉川さん、だったっけ? 吉田さん、でもなくて──あっ、思い出した。吉野さんだ……!」



 下の名前は忘れたが、それはどうでもいい。

 予知夢の中では、中に入らないのかと声を掛けたが、余計なお世話だったらしく、大丈夫だと断られた。



 だったら無視してあげるのが優しさだ。



 門前に立つ吉野さんの真横を素通りして、僕は敷地内へ。



 それからは特に何事も無く、迎えた入学式。



「次、新入生代表、豊原伯雅(とよはらはくが)

「はい」



 その次も、



「次、在校生代表。生徒会長、豊原宮子(とよはらみやこ)

「はい」



 ここまでも予知夢の通り。

 全く同じ挨拶の数々を二度も聴くというのは、精神的に少し苦痛を感じずにはいられない。



 場所は教室に移り、担任の挨拶を終え、次はクラスメイトたちの自己紹介。



織辺利恩(おりべリオン)です。宜しく」



 予知夢と全く同じ席順、挨拶、態度。



染井春一(そめいはるかず)です。これから一年、宜しくお願いします」



 僕も夢の中と同じ、無難な挨拶に留める。

 気の利いた挨拶など僕の頭では思い付かない。



徳永晴蘭(とくながせいらん)です。まあ、仲良くして貰えると嬉しいかな」

徳永七香(とくながななか)です。そちらの晴蘭とは従姉妹同士なので、下の名で呼び分けて貰えると助かります」

豊原伯雅(とよはらはくが)です。先程の新入生代表の挨拶ですが、実は全部AIに書いて貰ったものです。──というのは嘘です。ちゃんと自分の頭で考えました」



 他のクラスメイトの挨拶も、それに対する一同の反応も、やはり予知夢と変わらない。



 そして、最後に自己紹介の順番が回ってきた生徒は──校門前に立っていた彼女。



「……吉野仁香(よしのにか)、です。その……」



 チラリ、と彼女の視線がこちらを向き、僕と眼があった。



「あれ……?」



 ここは予知夢と少し違うような気がしたのだが、僕の気のせいだろうか。



「どうしました?」

「い、いえ、宜しくお願いします……」



 担任教師に急かされた吉野さんが、やや慌てた様子で一礼、着席する。



 帰り際に母とも記念撮影を済ませ、入学式は終わりを迎えた。



 その後も、何もかも予知夢で見た通り。

 帰る途中で交わした母との会話、夕食のメニュー、テレビのニュース──どれ一つとして狂い無し。



 まるで予知能力者になったような気分だが、どうせならこんな面白みの無い入学式などではなく、受験やテスト期間に見たかったな、などと思いながら、その日は眠りに就いた。



 明日は4月2日、始業式だ。

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