表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エイプリル・ループ ~僕と彼女の4月0日~  作者: 尾久沖ちひろ
ループ4 4月1日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/21

#10 「今日は何回目?」

「居ない……」



 ハラリハラリと舞う桜の花弁が、僕の肩にそっと乗る。

 校門とその道中に植えられた桜の木々は、当然ながら「九分咲き」。



「みんな、もうちょっと寄ってね~」

「だってさ。オリオン、もっと真ん中に寄ってよ。僕が見切れちゃう」

「やめろ伯雅(はくが)、そんなに強く押すな……」

「ほらほら七香(ななか)も。もうちょっとオリオンの方に詰めなさいって」

「ちょ、ちょっと晴蘭(せいらん)……!」

「フフッ、良い感じよ。じゃあ撮るわね~」



 記念撮影をしている四人の生徒──間も無く僕のクラスメイトになる者たち。

 そして、スマートフォンを向ける美人ママ。



 目当ての彼女の姿は──校門のどこにも見当たらない。



「これで決まりだ。僕が影響を与えていないのに、吉野さんはループ前と違う行動を取っている」



 ループの法則から外れた人物が、僕の他にもう一人。

 もしかしたら他にもまだ居るのかも知れないが、少なくとも僕の身近では彼女以外に確認できない。



「確かめてみよう。何か知っているのかも知れない」



 今、彼女がどこに居るのかは分からない。

 既に一年A組の教室で入学式を待っているのか、それともまだ登校前なのか。

 或いは──今回は登校する気自体が無いのか。



「せっかくですから、五人一緒に映ってはどうですか?」

「いいわね。じゃあ、お言葉に甘えてもいいかしら」



 勿論、今回も記念撮影を申し出て美人ママと接触しておく。

 何度も繰り返されて飽き飽きするループに於ける、唯一の癒しだ。



 入学式には出る。

 サボッても無意味だということは前回証明済みだ。



 そして──吉野さんの姿を確認した。

 誰にも邪魔されず、彼女と接触できる最善のタイミングは、全ての予定が終わって解散、全員が帰り出す頃。



 そのための布石を自己紹介の場で打っておく。



染井春一(そめいはるかず)です。今日、4月1日の入学式は『五回目』です。この意味が分かる人とお話ししたいです。最初に出会った場所で待ってます。宜しくお願いします」



 当然ながらクラスメイトたち、そして居並ぶ父兄たちも、何言ってるんだあいつ、意味不明、とばかりに首を傾げ、表情を微妙に崩していた。



 一人だけ──予想通り、明らかに異なる反応を示した者が居た。

 やはり、彼女だけはこのメッセージの意味を理解したようだ。



 全ての予定が終了、全員が解散し、多くの者は帰宅を開始する。



「じゃあ母さん、先に帰っててよ」

「あまり遅くならないようにね」



 これまでは母と共に帰宅していたが、今日は大事な待ち合わせがある。

 メッセージを理解してくれたとは言え、彼女が本当に来てくれるかどうかは分からないが、来なかったら次の4月1日で、こちらから攻めていくつもりだ。



 そして、彼女と最初に出会った場所──校門で待機。



「いやー、代表の挨拶は緊張したな~」

「全然そんな風には見えなかったがな。で、あれ本当にAIで作ったのか?」

「嫌だなぁ。ちゃんと自分の頭で考えた、エイプリル・フールのネタだって言ったじゃないか」

「あれ、優莉奈(ゆりな)さんは?」

「何か先生と話があるんだってさ。気にせず先に帰って、って言ってたわ」



 佇む僕のすぐ近くを、新入生とその父兄たちが続々と通り過ぎ、それぞれの帰るべき場所へと向かって行く。



 まだかな、何をやっているんだろう、親と話しているのか、別の門から帰ってしまったか、などと頭の中で様々なことが巡りながらも、じっと待ち続ける。

 実際に経過した時間はそれほどではなくとも、体感では妙に長く感じられてしまう。



 そして、ようやくその時が来た。



「あ、あの……」



 掛けられる小さな声。

 眼鏡越しに僕を見つめる瞳には、不安と緊張の色が窺える。



 待ち合わせの相手、吉野仁香(よしのにか)がそこに居た。

 親は先に帰ったのか、彼女一人だけだ。



「良かった、来てくれたんだ。ありがとう」



 僕の感謝に、彼女は言葉を発さず一礼で応じた。



 やはりお喋りは苦手なようだ。

 僕も人見知りする方だから得意とは言えないのだが、僕以上に苦手意識を持っているようだ。



「じゃあ吉野さん、早速訊くけど……今日は何回目(・・・・・・)?」



 こうして待ち合わせに応じて僕の元まで来てくれたのだから、この問いの意味は間違い無く伝わっている。



「ご、五回目、です。染井君と同じ……四回、戻りました」



 指を立てて、彼女が答えてくれた。

 ここまでの言動を見れば明らかだったが、言葉にしてくれたことで完全に確定した。



 彼女は僕と同じ、ループの法則から外れた存在。

 やっと真実を話せる相手と接触できた。



「取り敢えず中で話そうか。いい?」



 春とは言え、屋外はまだ少し肌寒さが残る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ