EP13 慰安旅行⑧
何かをすると、大事になる。それがスノープリンセスです。
枕投げだ!
枕投げとは、主に修学旅行などの必須行事で、会社の慰安旅行では、行われることは少ない。が、それは私の世界の話。
この世界に、枕投げが無いことから、私が歴史を作る。
「大勢の仲良しでのお泊りには『枕投げ』」
枕投げのルールは特にない。
目に留まった相手に向かい、枕を投げつける。
勝者なき戦いなのだ。
飛び交う枕。
狙う者、狙われる者。追いかける者。逃げ纏う者。
参加せずに酒を飲む者。酒を注ぐ者。
思い人に寄り添う者。日頃のうっ憤を晴らす者。
無秩序の中に、秩序のある時間が過ぎていく。
「結構面白いな。またやろうぜ」
サマンサ、お気に入りに決定。
「10発貰った…2発しか当てられなかった」
サマンサの付き人、ノアちゃん。サマンサに真っ向勝負の結果、惨敗。
「トーマ様をお守りしました」
トーマの付き人、クレアちゃんは、トーマの周りに付き、飛んできた枕に当る役。好感度を上げる作戦。
ギムとマリアは参加せず。
飛び交う枕の中、ただ酒を飲み、酒を注ぐ二人。
流れ弾が来ると、ギムは鞘で跳ねのける。
酒を注ぐマリアは、ギムに守られていると信じ、キュンキュン。
「枕投げ」高評価をいただいた。
次のイベントは「肝試し」
夜も更け、いい感じにフクロウの鳴き声がする。
場所は、少し離れた岬。その崖の下にある洞窟。
女将曰く「古から伝わる、封印の洞窟。その中には「邪」が封じられているという。邪に惹かれ、あまたの悪霊が訪れる場所」
管理霊スポット入場料1S
「私とリアちゃん、カウラちゃん、ララちゃんで先に行って、脅し役をやるからね」
そう、脅されるより脅す側。先に言いだすことが肝心。
「あたいたちは、脅されればいいんだね」
サマンサ納得。
肝試し、特にルールはない。
脅す側と脅される側。力関係は一方的ではあるが、勝者なき戦い。
驚けば負け、驚かなければ勝ち程度の、あいまいなルール。
「良し!脅され組は、私に続け!脅し組を叩き斬ってやる!」
待て待て!違うから。叩き斬られちゃ堪らない。
ルール設定。
2人1組で中に入り、洞窟の奥にある、コインを持ち帰れば勝ち。
脅し組に脅され、リタイアなら負け。攻撃、魔法一切禁止。
「トーマ様・・・怖いです」
最初はトーマ、クレア組。
「クレアちゃん、僕にしがみ付いているんだよ」
「よし来た。カウラちゃん、ララちゃん、右から大きな声で脅かして」
私は二人にサインを出す。
「わぁ!」
「・・・・」
大きな声で飛び出すララちゃん。
無言で飛び出すカウラちゃん。
「ひゃ!!!!」
驚くクレアちゃん。
「あははは」
動じないトーマ。
そーっと闇に紛れ、近づくリアちゃん。
不意に前に出て、目を点滅させる。
「きゃーーー!」
飛び跳ねるクレアちゃん。
「あはは、リアちゃんだよ」
丸で動じないトーマ。
なら私が驚かせて見せる!
奥にコインを置いてある。
コインを取った瞬間、人は「ホッ」とする。一瞬スキが出来る。
そこを突く!
前からはいかない。前は警戒心が強い。
敢えて後ろからだ。
「ほら、クレアちゃん、コインだよ。これを持ち帰れば勝ちだからね」
「はい。後は戻るだけですね」
今だ!
「わぁ!!」
「びゃ!!!」
驚いたクレアちゃんが、暴走した。
前の壁に突っ込む。
「おやおや、クレアちゃん、大丈夫?」
トーマは全然普通。驚くという感情あるのか?
「いたたたた…大丈夫です。体が丈夫なのが取り柄ですから」
壁にめり込んでいるが、クレアちゃんはギア族。無事なようだ。
クレアちゃんの、めり込んだ壁から、なんか禍々しい煙が流れ出す。
!?
「下がって!」
私は、良からぬモノの気配を感じた。
禍々しい煙は、どんどん噴き出してくる。
そして形を形成する。クマのような体に、複数の触手、影のように揺ら揺らとしながら、禍々しさを滲み出す。
「あれは、封印されていた「邪」です。邪悪なエネルギー体です」
リアちゃんの分析。
「邪が怖くて、マムシ酒が飲めるか!」
よくわからない理屈だが、サマンサが斬りかかる。
剣は空を切る。
「あれは邪念のエネルギー体です。普通の物理攻撃は通用しません。聖なる攻撃が必要です」
「なら僕が。タマムシ召還!」
リアちゃんのアドバイスで、トーマが召喚魔法を放つ。
が、効果はない。
何でタマムシなんだ?・・縁起がいいからか?それは聖なる攻撃じゃないぞ。
「テレサ!聖なる攻撃ってないの?」
「すみません。私、属性は「魔」なんです」
テレサもダメだ。
邪念体は、攻撃を仕掛けてくる。
複数の触手が伸び、私たちを襲う。
「避けて!」
私は叫んだ。
ーーー王宮ーーーー
「ゴルノバ国王!陰陽部より、邪念体の反応を確認との報告です。
場所は『ヨコス海岸』」
衛兵から報告を受ける王と女王は、直ちに動く。
「今度は邪念体だと?祈祷部隊に集結命令!」
「各ギルド、冒険者で祈祷能力のある者を招集させなさい。至急、雪姫さんにも連絡を」
王宮が慌ただしく動き出す。
「女王陛下、スノープリンセスは『本日の営業は終了しました』とのメッセージが流れて、連絡が取れません」
普段なら、夜間の対応は、マリアとリア、クレアのギア族が行うが、今は旅行中。
起きて居れば、ブルックたちが出るはずである。
ーーーーーーーーー
ーーーギルド スノープリンセスーー
「ゴォォォォ・・グーグー」
「zzzzzzzzzzz」
「むにゃむにゃでございます」
「ガオガオガオ」
強制送還された4人は、飲んだくれた後、爆眠中。
連絡に気が付かない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーー王宮ーーーーー
「パパ、リアちゃんのメアドなら知ってるよ。連絡してみるね」
壁を這いながら、クラリスは、リアの直通アドレスにメールを送る。
「頼む雪姫・・・出てくれ」
王の祈りは通じるか?
ーーーーーーーーーーー
長くなりました慰安旅行回、次回で終了です。




