EP6 出来すぎる者たち①
一休みの章^^
自己嫌悪。
昨日、酔っ払って昼まで寝てた、と思っていたら、あれ夜だった。
マリアの出してくれた食事は、夕飯だ。
丸1日休んで、みんなに迷惑かけてしまった。
そのシワ寄せ、と言う訳でもないと思うが、今日は忙しい。
救援要請が立て続けに入り、私の部屋は、リアちゃんと私だけだ。
「雪姫様、受付より、緊急援護要請です。
バッカスのチームが、ダンジョン内で行動不能の恐れあり。救援ランクB でございます」
メンバーは全員で払っている。私?いくか?
「リアちゃん、私が行ってもいいかな?」
「ダメです、ギルドマスターが出張る案件ではありません」
即答。即却下。
とは言え、だれも居ないし・・あまり時間はかけられない。
「Bチームを編成します。ララとノア、ギャリソン様のチームで、援護へ向かって貰います」
Bチーム?
「はい。幹部が入るチームはAチーム。付き人のみで構成されたチームがBチームです。Bチームに、一般職員や、冒険者が加わると、Cチームになります」
なるほど。
「でも、ギャリソンたちで大丈夫?」
「救援ランクがBなので問題ありません。ゲートルームには、クレアとルルを配置し、ギャリソン様の代わりの連絡係は、受付から一人来ます」
マックスが考えた救援システム。しっかりしてるな。
基本、みんなできる子たちだから、私は椅子に座っているだけ。
「コンコン コンコン」窓を叩く音。
振る向くと、そこには大きなヤモリ。ヤモリ姫だ。
窓を開けると、スルスルと中に入って来た、第一王女クラリス。
通称ヤモリ姫。
「こんにちわ」
第一王女でありながら、気さくで明るい、いい子だ。
「ママから、依頼を持って来たよ。親書を渡されたんだ」
伝書でね?親書って、相手は国主かそれ相当の人宛だよね?
ポケットに手を入れると、折れ曲がった手紙が出て来た。
「はい。ママからの親書」
親書と言う大事な手紙が折れ曲がり、しわくちゃ。
受け取るとペーパーナイフを使い・・・・何?ネバネバが付いてるけど。
「あ、ごめん、鼻かんじゃった」
リアちゃんが、テッシュと消毒液を手渡してくれる。
丁寧に封を開け、中から手紙を取り出す。
(女王陛下ごめんね。封筒はゴミ箱にポイ)
手紙には
「前略、雪姫様。先日の御礼も済まぬままの依頼、お許しください。
我が王「ゴルノバ」の、よからぬ噂を耳にしました。夜な夜な、複数の侍女と、密会をしているとの噂です。
真偽のほど、確かめて頂きたく、依頼させていただきます」
(まったく、男ってやつは・・・)
確かに、この調査は、身内には依頼できないわな。
うちの情報部ならいけるか?
「分かった、この依頼、引き受けるよ」
「でね、雪姫。ママから依頼料が入るでしょ。私からの依頼と抱き合わせてさ、ただでお願いできないかな?」
あ~甘いな。世の中、舐めてるな。月100Gも小遣い貰って、ただ要求はないわ。
「ダメ。これはビジネス。たとえ王女でも、依頼料無料はない」
口をとがらせるクラリスだが、雪姫は譲らない。
「分かったよ。なら正式に依頼する。最近気に成る子がいてね。「ホロ」君って言うんだけど、王国警備隊の見習いで、下級貴族の4男なんだ」
うぁ、禁断の身分差恋。
「上手く取り合ってくれないかな?」
まぁ、これなら良いか?
「5Sで、この依頼受けた」
クラリスは、しぶしぶだが、5Sを支払う。
「リアちゃん、情報部のジェームス係長と、食堂のキューおばさんを呼んでくれるかな?」
「かしこまりました。両名に出頭を命じます」
ジェームス係長。
彼もまた、幹部の椅子を蹴った男。現場主義で、情報収集以外は興味なし。筋金入りの「知りたがり屋さん」なのだ。
「雪姫様、ジェームス係長です」
リアちゃんがドアを開ける。
「雪姫様、お呼びとあり、参上いたしました」
イギリス紳士を思わせる容姿に、ジェントルマン的口調。
そして独身。人気も高い。
(でも、クラリスの前で、女王の依頼は不味いか・・)
「ご苦労様です。先に済ませたい案件があるので、少し待っていただけますか?リアちゃん、ジェームス係長と、クラリス王女に、何かお飲み物を」
「かしこまりました」
クラリスの方を、キューおばさんに引き渡してから、女王の依頼だよね。
「ジェームスさんだよね?」
クラリスがジェームスを知っていた。
「これは第一王女、光栄です」
出来る人だから、有名人ではある。
「時にクラリス様、現在想いを寄せている方でございますが、当方調べにより、クラリス様に見合う相手ではないと思われます。再考をお勧めいたします」
おっと、情報部もこの情報を持っているか‥流石だ。
「えええええなんで?ホロ君可愛いよ」
「では失礼ながら、お耳を拝借」
ジェームス係長が、クラリスに耳打ちを始める。
「ひそひそ」「え?」
「ひそひそひそ」「ええ?」
「ひそひそひそひそひそ」「ヴぇ?」
なにを聞いてるか?段々クラリスの顔が曇って行く。
「とっておきのひそひそ」「・・・・・ヴぇぇぇぇぇ」
口から半分、魂が出た。
「申し訳ありません、この情報はSSランク。たとえ雪姫様であっても、許可なくお教えすることが出来ません。ご理解宜しくお願いします」
SSランク。。確か、本人ですら知らない情報、だったよね?
「・・・あの子・・止める。無理」
クラリスの恋、わずか数分で断念。
恐るべし情報部。クラリスは何を聞いたんだよ。
「雪姫様、キューおばさまが、おいでです」
(あ~~でも呼んだ以上は、入って貰わないと失礼だよね)
「どうぞ」
「恋の伝道師、愛の架け橋、キュー参上だよ」
「あはははは。依頼主ね、着た時は、真っ赤に燃える太陽だったんだよ。でも今は、津軽海峡冬景色かな?依頼完了しちゃったんだ」
「あれま?恋は熱しやすく、冷めやすいからね。って、クラリス様じゃないかい。丁度良かったよ。王様に伝言を、お願いしたいんだよ」
伝言?
「あの王様は偉い方だね。兵隊さんが侍女に恋してさ、私に依頼してきたんだよ。3人分まとめて、お願いしますって」
王様、食券買って並んだの?
「頑張った甲斐が合って、3人ともカップリング成功って、伝えてほしいんだよ」
ほうほう!王宮に春の風だね。
「王様が、自ら侍女を呼び出しては、庭に連れ出してくれてね。私に弓を射る機会を、作ってくれるんだよ。出来すぎ王だよね」
・・・もしかすると、それが女王の言う「密会」?
「こちらでも、その情報は入手しております。キュー様が担当されている案件ですが、ギルド的には王族依頼なのに、あまり美味しくないので、『王が浮気している』との情報を、王宮内に流しておきました。女王陛下より、依頼が入ると思われます」
「これ」
私は手紙を見せた。
「流石はマスターです。椅子に座っているだけで、2件の依頼を完了してしまうとは」
リアちゃん、私が出来る子じゃなくて、周りが凄いんだよ。
流石にこの案件で、依頼料は取れないな。
嘘情報流したの、うちだしね。
クラリスは魂抜けてるから、今の話は聞こえてないと思うけど、直接女王陛下に、お詫びした方がいいかな?
「リアちゃん、ちょっと出かけるね。クラリス送って来るよ」
「では私も」
「リアちゃんは残って、運営をお願い」
「でも護衛は、お付けしないと」
結局、護衛に一般職員選出「タタラ」公安部部長が付いた。
公安部は、ギルド内での警察的部署。
冒険者同士のトラブル等、幹部が出張る程ではない問題の対処に当る。
落とし物係なども担当している。
私はクラリスを引きずって、タタラ部長と王宮へと行く。
EP6は3本。まったりの話です。




