EP4 恋せよ乙女③
キューおばさんの、魔法の矢がギムを・・。
「・・・無理だね」
いきなり却下。
「私はミノムシだってカップリングする自信があるよ。でもギムは無理さ。あれの頭の中には、飲む、寝る、剣を振り回す以外の単語はないね」
およそギルド職員全員が、ギムをよく理解している。
「でもね、先日マリアが不調な時の、ギムの慌てよう。あれは、マリアを意識してるからだと思う」
先日のマリアとの同衾の話を、キューおばさんにする雪姫。
「それゃ・・信じられないね。あの男が、女の隣で添い寝なんて・・」
「あの時のギムは、明らかにマリアを労わっていた。普通ならさ、ギャリソンとかに頼むじゃない。自分で抱きかかえて、マリアの部屋に行ったんだよ」
「試してみるかい?」
キューおばさんの作戦。同じ状況下を作り、反応を見る。ただし、不調になるのは他の女性で、マリアは不在とする。
「と言う訳なんだ。協力お願い!」
雪姫は幹部を集め、協力依頼。
「なるほど、面白いですね。これは良い作戦です」
「あたいは良いよ。面白そうじゃん」
「ガオガオガオ」
「ダイル様は、協力します、と仰っております」
「この依頼、お受けいたしましょう」
良し!全員の協力が得られた。
「・・・私は?」
マリアは近くで待機。
「宴会か?行く」
ギムは確実に参加する。招集には応じなくても、酒の場は絶対に断らない。
「ギム様、今日はマリア様が不参加の為、お酌は私がさせていただきます」
隣に座るのは、同じギア族のリアちゃんだ。
「マリア・・いないのか?」
明らかに、がっかりした表情だ。
「はい。私ではマリア様の代わりは、役不足かもしれませんが、よろしくお願いします」
キューおばさん、隣のテーブルで、ギムを観察。
宴は進み、それなりに盛り上がる。が、みんなの注目はギム。
雪姫が、リアにサインを出す。
前回はシステム調整して、マリアを弱らせたが、今回はリアちゃんの演技だ。
立ち上がろうとしたリアは、ギムに倒れ掛かかる。
「お、おい!リア?」
「スミマセン・・エラーが・・」
上手い。前回のマリアを見ているだけに、リアちゃんの演技は完璧だ。
「ルル!リアを見てくれ!」
機械担当はルル。ギア族の事は、ルルが一番理解している。
「これは・・・ギム様。リアは休憩が必要です」
前回の流れをなぞる。
「参ったな、雪姫!リアを部屋に連れて行ってくれ!」
(やはり!マリアの時と違う)
雪姫がリアを連れ出す。
「こりゃ、もしかすると、もしかするね」
キューおばさん、勝負に出る。
取り出した弓矢。
マリアに矢先に触れさせると、弓を構えた。魔法弓「恋する時間ですよ」が放たれる。
「スパン!」
叩き斬る。
恋の弓矢を切り落とす、剣士ギム。
そう彼は、背後からだろうと、不意だろうと攻撃を許さない。例え、それが恋の弓矢でも。
「攻撃か?」
違うよ!!!!
「奇襲?」
的外れ!!!
身構えるギム。気配を殺すキューおばさん。
キューおばさんが動く。
立て込む酒場の中を、素早く横に移動しながら、立て続けに弓を放つ。その動き、トップ冒険者クラス。
放たれた弓は、ギムが剣で捌く。
テーブルの下に潜り込み、8本の矢を持つと、間合いを伺うキューおばさん。敵の動きを見失い、全方位に警戒を張り巡らすギム。
酒場は緊張に包まれていた。
決着の時!
8本の矢を同時に放つ、キューおばさん。
全弾叩き斬るギム。勝負あり。キューおばさん敗北。
「流石だねギム。あたしの弓を完ぺきに躱すとはね」
「キューおばさんか、道理で手ごわいと思ったぜ」
「また勝負だよ」
「ああ、楽しかった」
何故か、これで収まる。ギムだから収まる。
「やはりあいつに、不意打ちは無理だね」
矢が使えないとなると、作戦そのものがフイ。マリアの顔に、落胆の色。が、矢は射る必要はない。要は矢先が体に触れればいい。
矢先を外し、誰かがギムの体に触れさせる。それで事が足りる。
「あたいがやるよ」
サマンサが引き受けてくれる。
剣士同士、このような事でも、素人がやれば、気配が変わり、ギムの警戒を誘う。達人の相手は達人。
サマンサが、手の平の中に、矢先を隠し持ち、ギムに近寄る。
・・・が通過。
「マリア・・・お前なんか可愛いな」
振り返って戻るサマンサは、マリアの体に手を触れながら抱き着く。
作戦失敗。
手に持った矢先が、サマンサの肌に触れた。3時間、サマンサはマリアに好意を抱く。
「こりゃダメだね」
キューおばさん、弓の予備がなくなり、本日の作戦は此処迄。
マリアは3時間の間、サマンサの熱烈な攻撃に耐える。
宴は盛り上がりの中、終了。それぞれが帰路へと付く。
ギルドに住むのは、雪姫、アーロン、マリア、テレサ、ギャリソン。
付き人と共に、夜道を歩く。自宅の方向が同じ、ギムも一緒だ。
まだ桜が咲いていた。
桜並木の中、マリアはギムと並んで歩く。
マリアは、ギムの腕を両手でつかみ、首を肩に預ける。
後ろから見る雪姫たちは、仲のいいカップルにしか見えない。
「そうだ。マリア様。お部屋なのですが、203号室に変わってもらって、いいでしょうか?」
無粋なタイミングだが、リアは思い出したように言う。
マリアの部屋は206号室。
アーロンの部屋の隣だが、アーロンの付き人、ブルックが帰ってくるらしい。ブルックの体は大きく、2部屋を統合して対応する。
「はい。良いですよ」
マリア、快く快諾。が
「マリア様、203は・・・」
ギャリソンが、割り込む。
「あ!」
リアも気が付いた。
203号室。出たことのある、いわくつきの部屋。
昔、203で自殺した冒険者が居た。
それ以来、でる。ギア族のマリアは、機械。幽霊など気にはしない。
「リア、203はダメです!」
気にしないわけでもない。機械でも気に成る。
「でも、他のお部屋が・・・」
空き部屋は多くある。が、マリアの付き人ララは妖精族。
方位や風水を気にするため、部屋が限られてしまう。
このままでは、マリアたちは、他に住み移らなくては成らない。
「住むとこ無いのか?来るか?」
ギムの助け舟。
ギムの家は、国王から提供された、元貴族の館。
大きくて広い。
「それいいね!マリア、ギムのお家でお世話になりなよ」
雪姫、ある単語が閃く。
「押しかけ女房」
マリアの顔が素晴らしく輝いた。
次回、マリアはギムの家を訪問。そこで見たモノは?




