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百二十五話 「私にキスをする」

お久しぶりです。

後書きにお知らせと、何があったかの諸事情を軽く書いてあります。


「不死性ってなんですか? あと、どうすれば時の流れは正常に戻りますか?」


 その言葉は本心からか、雰囲気をよくするためかは分からない、

 だが、ブラリのその一言で張り詰められていた空気に針が刺される。


「不死性っていうのは死にたくても死ねない特性を持った人達の事を指すわ。この中だと、アギオ君や、私のような人達の事ね。コウジ君も一歩足を踏み入れているけど」


 イリス姉さんがブラリの質問に答える。


「へー、アギオさんは分かるけどイリスさんもそうなの?」


「ええ、私は死ねない。時が繰り返されるだけ」


「へー……」


 ブラリの返事には含みがあるように感じた。


「ところで、コウジが足を踏み入れているって?」


 真意を悟られないためか、ブラリは言葉を続ける。


「ええ。コウジ君の魂体化、あれは間違いなく不死の可能性を秘めているわ。ただ、能動的に発動しなきゃいけない能力だから、不意打ちや、予測不可能な状況では発動出来ずに死んでしまうという欠点がある。だからまだ、不死性は持っていない」


「だってさ」


 ブラリが俺の方を向きながらそう言った。


 ――この空気感の中に混ぜるなよ。

 本気でそう思いながらなんとか次に出す言葉を探す。


「……俺にとっては、あの方法が限界です。これ以上進化する事もないので、不死性は持たないと思います」


「いえ、あなたは不死性をいずれ持つわ。断言する」


「はあ、そうですか」と気の抜けた返事をし、黙る。

 これ以上この空気感の中、発言したくなかった。


「ねー、ねー、それでどうすれば、時の流れは正常に戻るの?」


 ブラリの口撃(こうげき)が止まらない。


「それはね――」


 イリス姉さんがこちらを見て不適に微笑む。


「私の異形化が解けたら」


「じゃあ、イリスさんの異形化が解けたら、世界の時間が正常に動き続けるの?」


「そうよ」


「どうしたら異形化が解けるの?」


「家族皆の異形化が治ったら」


「…………無理だね」


 ブラリがアギオ兄さんと、スタルギのおっさんの方を向き、俺の膝の上を陣取っているアズモを見る。


「……」


 アギオ兄さんは無言。


「おい、俺は暴走してねえぞ。もう治ってるからな?」


「えー、その身体で言われてもねー、ほら……ね?」


「ぐう……。言い返せねえ……」


 スタルギのおっさんは治ったと言い張るが、ブラリに一蹴される。


 アズモは――


「簡単だ。コウジが私の本体の元に辿り着き、私にキスをする。それで魂竜問題は全て丸く収まる」


「ふーん……」


 ブラリがチラチラと、俺とアズモを見る。


「その本体から分離したアズモがコウジと仲良いのは分かったけど、魂竜――コウジと別れるまでのアズモはどうなの?」


「問題ない。私は物心ついた時からコウジを愛している。異形化したのもコウジと離されたのが原因だ」


 ブラリはアズモの返事を聞き「そっか」と呟き、口を開く。


「うん。そこまで言うなら信じるよ。だいたいの物語では、眠ってしまったお姫様を助けるのは王子様の熱いキスだからね」


 聞いていて頭が痛い。


 アズモの言う事はどこまでが本当で、どこからが嘘なのだろうか。

 キスをしただけで治る? 本当か?


 てか、キスをするのは前提なのかよ……。


「でも本当にそれで治ったらあの子が可哀そうだね……」


 ブラリが気になる事を言った。


「あの子って誰だ。誰か何かしているのか?」


 俺は聞き逃す事が出来ずにブラリに問う。


 俺の他に、アズモに何かしてあげている奴の行動と正体が知りたくなった。


「スフロアちゃんだよ」


「スフロア?」


 俺とアズモの大事な友達だ。


「スフロアが一体何をしているんだ?」


「対話だよ。異形化してしまったアズモの所に毎日行っているんだスフロアちゃんは。それで聞こえるように大声で話しかけているんだ。『コウジが居なくても私が居るでしょ』って」


「……!」


 目を見開いた。

 そんな事を毎日しているとは考えられなかった。


 でも、そんな事をしたら――


「無事なのか!? スフロアはそんな事をして! アズモに魂を抜き取られるんじゃ!?」


 魂竜アズモは魂を集める。

 無差別に、残酷に、見境なく。


「無事だよ。コウジはなんでアズモが異形化した時に近くにいた僕達が無事だと思う? ここにいる僕、ダフティ、スフィラ、ラフティーそれにアギオさん。どうして僕達が魂竜に魂を取られていないと思う?」


「……それは」


 考えてみれば妙だ。

 なんでだ、おかしい。


 だって皆はあの部屋で一緒にいたはず。

 アズモが異形化したすぐ傍にいたはずだ。


 なのに、なんで魂を抜き取られていないんだ。


 ここにいる皆だけではない。


 メッセージアプリで安否の確認が出来たルクダもそうだ。


「なんで皆は魂竜に魂を取られなかったんだ……?」


 俺はそう言った。

 声が震えていた。


「考えても分からないよね。だって僕にも分からないもん」


「なっ……」


 分からないのかよ。


「でもそこにいるアズモになら分かるんじゃない?」


 ブラリは俺の膝の上に座るアズモを見て言った。

 自然と俺の視線も、皆の視線もアズモに集まる。


「分かるのか? アズモ」


 代表して俺が聞いた。

 少し時間が経った後、アズモは口を開いた。


「そこにコウジの魂が無い事を知っているから、だろうな。だから知っている人は襲わない。私の予想だと、観戦席に居た、家族とクラスメイトも無事なんじゃないか?」


「正解、正解、大正解だよ。アズモ。アズモの予想通り、クラスメイトは無事、勿論、竜王家の人達もね」


 ブラリが拍手しながらそう言った。


 答えは残酷なものだった。

 身内以外を狙った残酷な犯行。


「なあ、それだと……」


 竜王家や、クラスメイト達は世間からどう思われているんだ?


「聞きたい事は分かるよ」


 ブラリが俺の口が開く前にそう言った。


「竜王家は魂竜が現れた時から今もずっと、世間から大バッシングを受けているよ。父さんも世間の批判を受けて、国の抑止力を竜王家から混血王家に変えた」


 俺は頭を抱えた。

 もし、アズモの魂取集が真の意味で無差別だったら。

 竜王家が槍玉に上げられる事なんて無かっただろう。


 でももし、そうだったら。

 ここでブラリと会話する事も出来なかったんだろうな……。


 どうなるのが正解だったんだろう。


 考えても答えは見つかりそうにない。


 でも一つだけ現状を変える方法があるとしたら……。


「俺が、あの時現れたテリオ兄さんを警戒しなかったから……」


 俺がテリオ兄さんに刺されていなければこんな事にはならなかった。


「悔やんでも仕方ないよ。起きてしまった事は仕方ない。今から全てを取り返せば良い。それにだけど、悪いのはコウジじゃなくて、型無の連中だよ。彼らが現れてから世界はおかしくなったんだ」


「そうか、型無が、か……」


 ブラリは俺を励ますために言葉を選んで喋ってくれているのだろうが、今の俺には響かない。


 ――バシッ。


 肩に衝撃が走った。


 力加減な下手な奴に殴られたせいで、思わず肩を抑える。

 殴られた方向を見ると、ずっと黙って話を聞いていたラフティリが笑っていた。


「何ヘコたれてんの? 結果的にこうしてあたしに会えたんだから笑いなさいよ」


 ――バシバシバシバシ。


 無邪気に笑いながら、ラフティリが何度も叩いてくる。


「いてーわ、アホ」


 ――バシン。


 ラフティリの手をはたき落とした。


「そう、それで良いわ。その顔で。それでこそコウジよ」


 ハッとして片手で顔を触る。

 戻ってきたこの世界でアズモと会う前までの廃れた顔をしていた。


 ラフティリのおかげ……か。


「うるせー、バカ」


 ――バシ。


 ラフティリの肩を叩いた。

 ラフティリはそれでもずっと笑っていた。


 ラフティリに励まされるなんて……。

 いや、成長したんだ。皆。

 俺がこの世界に居ない間に十年。


 小学生だった子供達が高校生になったんだ。


 俺と同じ高校生に。


「ところで、なんでスフロアは毎日アズモに語り掛ける事が出来るんだ?」


 話を元に戻す。


「まるで、不可視のアズモが何処にいるか知っているみたいじゃないか」


 これも気になっていた事だ。


「これは世間には出ていない情報だが、アズモの移動範囲は俺達で制限している」


 アギオ兄さんが答える。


「アズモちゃんはね、ずっとある所を行ったり来たりしているの」


 イリス姉さんが続く。


「ある所?」


 俺は問う。


「海の上だね。魂竜アズモちはずっと海の上を漂っている。少しでも大陸に入りそうになったら、転移魔法で海の真ん中に飛ばす。それを永遠と繰り返して、これ以上の被害が出ないように立ち回っているんだよ」


 ブラリが俺の疑問に答えた。


「海。海にアズモがいるのか!?」


 興奮して思わず立ち上がった。

 椅子が倒れそうになるのも気にせずに。


「そうだ。魂竜アズモは海に居る」


 アギオ兄さんが答えた。


 俺が行かなきゃならない場所がやっと分かった。

 何が魂竜アズモ警報だよ。

 出鱈目じゃないか。


 ……あれ、でも海って――


「アズモは海に居る。エレオスの支配する海にな」


 エレオス兄さん。

 エクセレと同じ側に居る海神龍。


 アズモの話によれば、俺は土の上から外にいけない、らしい。

 エレオス兄さんに殺されるから。


「魂竜アズモの異形化を解くには、エレオスをどうにかする必要がある」


 淡々とアギオ兄さんが言った。


「魂竜アズモなんていう爆弾を海に投下し続けているからエレオス君はカンカン。異形化も進んで完全に成っているわね。だから、ただ倒すだけで異形化を解く前段階に入れる。お得だね」


 イリス姉さんが補足する。


 そんな……。

 いやでも――


「アギオ兄さんならエレオス兄さんを倒せますよね!?」


 縋るようにアギオ兄さんに問いかけた。


「……無理だ」


 また、淡々とアギオ兄さんは言った。


「どうして……!」


「序列石上位連中――竜王家で言うと、俺、エクセレ、テリオ、イリス、エレオス、アネシスは勝負が出来ない。戦えないんだ」


 戦えない……?

 世界の地形を変える程の大災害でも起こすから戦わないのか?


 アギオ兄さんの言葉に俺は困惑する。


「俺は無限化、エクセレは気体化、テリオは光化、イリスは死に戻り、エレオスは水化、アネシスは緑化。お互いが異形化状態だと、そもそも戦いにならないんだ。死なない身体、不死性を持っているから」


 すとん。

 脱力して倒れそうになるが、椅子が俺の身体を支えてくれた。


「中でもエレオスはトップ10に入る程の実力者だ。素の身体能力が高いのは勿論、海全体を掌握する頭の容量、身体を欠損しても水と一体化する事でいくらでも修復される身体。全てが秀でている」


 ……続く言葉がなんとなく分かった。


「だが、コウジが来た。コウジの魂体化。魂に直接攻撃するその力があれば無力化する事が出来る。倒す事も出来る」


 結局またその話に戻ってくるんだ。


 俺は机の上に突っ伏す。


「どうして俺なんですか……」


 竜王家の人達と戦いたくない。


「俺は戦いなんて好きじゃないんですよ……」


 家族と決死の戦いをする事が出来るか?

 少なくとも俺は出来ない。


「だいたい、戦った時に言っていたじゃないですか、俺が弱すぎるって……」


 アズモが望んだからアギオ兄さんとは一度戦った。

 アズモは善戦したが、俺は一瞬、ほんの一瞬でのされた。


 敵うはずがないんだ。

 竜王家きってのバケモノに。

 序列石三位のこの竜に。


「それに、あんな過去話をされた後に戦うなんて余計に無理です……」


 それぞれが強いのは、それぞれに辛い過去があったから。

 手にした力の代償はその分、大きかったんだ。


「コウジ、頼む。竜王家の一員として、家族の暴走を止めてくれ」


 立ち上がる音が聞こえた。


 見ると、アギオ兄さんが立って頭を下げていた。


「……」


 言葉に詰まる。

 すると、何も言わない俺を見たアギオ兄さんが更なる手段に出る。


「俺もコウジの脳内を見た竜だ。日本では人に物を頼む時、こうするんだよな」


 アギオ兄さんが正座になり、地に頭を擦りつける。


「頼む、不甲斐ない兄姉を助けてくれ」


「~~~~~~ん!」


 両手で自分の頭を搔きむしる。


 どうしてだ。

 どうしてなんだ。

 どうして俺が異形化してしまった可哀そうな人達に引導を渡さければならないんだ。


「は~~~~……。頭を上げてください。分かりました。家族の暴走を止めるために手は尽くします。ですが、期待はしないでください。俺は弱いただの人間なので――」


 最大限の譲歩だ。


 当然、やりたくないという気持ちは強い。

 だけど、家族のためにそこまでするアギオ兄さんの気持ちを無視する事も出来ない。


「――ただの人間ですが、竜王家の一員なので。家族ですので」


 家族が抑えきれない衝動に苛まれているんだ。


 そりゃ、助けられるなら助けたいよ!


「発言良いか?」


 目の前を小さな手が通った。


 アズモだ。

 アズモが挙手し、発言権を求めている。


「良い」


 アギオ兄さんが立ちあがりながら言った。


「もう一度アギオ兄上と戦いたい」


「はっ?」


 アズモが口にした言葉が信じられなくて言葉が漏れる。


「勝算は?」


 アギオ兄上が椅子につきながら言う。


「100%。次で兄上は破壊的衝動から解き放たれる」


「……でかく出たな。自信はあるのか?」


「ちょっ、何言ってんだアズモ!?」


 アズモを掴み、揺らしながら言うが、アズモは止まらない。


「秘策がある。前回の反省点に対する答えだ」


「そうか、なら表に出よう」


「はっ? ……は?」


「全て私に任せてくれれば良い。コウジはただ私に身を委ねてくれ」


 振り返ったアズモが至近距離でそう言った。


 相変わらず何を考えているのか分かりにくい表情だった。

 自信に満ち溢れている顔ではないだろう。


 なんだろう、少しすまなそうな表情をしているように見えた。




本当にお久しぶりです。

夏ぶりです。なんとか年内に出せて良かったです。

先にお知らせです。



◇お知らせ

もっと沢山の人に読んでもらいたいので、明日から背反の魔物二部を一部に統合します。

一部に一日四話毎、二部の話を載せていきます。

その際、推敲して誤字脱字や加筆修正を行うので是非、振り返りながお読みになっていただければと思います。

一部に投稿する話が二部に追いつくまでは、新規エピソードは二部にこのまま投稿し続けます。

一部が二部に追いついたら、二部は閉じます。


◇諸事情

すみません。つまらなくて申し訳ないのですが、普通に病気です。

前に書いた鬱病が悪化して何も出来なくなっていました。

というか、鬱病じゃなくて、躁鬱です。

おまけに、過食症で30kg太り、一年以上続く不眠症で薬を飲んでも夜寝れなくなり、寝れた時は夢遊病で夜中どこかに出掛けていたみたいです。

あと、七年愛用したPCが壊れて背反の魔物や短編のデータが全部消えました。

それと、病気で仕事クビになって、実家に戻ったのですが、家族が離散して一人になりました。

ちょっと立ち直るには困難な事が色々起こりましたね……。

今年は厄年だったので、来年は良い事があると良いなと願います。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

元気な時に少しずつ書いていきますので、お付き合いよろしくお願いします。

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