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百二十三話 災厄の時 5


 扉を開けると凄い光景が広がっていた。


 アンデッドが壁中に張り付けられている。

 それも大小様々なナイフやノコギリで。

 アンデッドからは血が流れており、凄惨さに拍車をかけている。


 そして、とにかく臭い。


「凄まじい死臭だ」

「うん……」


 私は顔を顰めて鼻を押さえる。


「これをやった者は余程恨みを持っていたのだろうな。そしてやられた者は余程恨みを買っていたに違いない」

「そうだね。どんな事をしたらこんな目に……」

「見回してみたがディスティアがいない。下か?」

「うん。ここにはいないみたいだね。降りよう」


 階段を下りて地下へ向かった。

 相変わらず死臭が凄い。

 階段の壁一面も血で赤く染まっている。


 誰がこんな惨い事を……。


「あ、パパー、おねーちゃん」


 地下室に降りたら、知った事のある声に歓迎された。


「ディスティア……」

「ディスティアちゃん……」


 ディスティアちゃんは何かをしている様子だった。


「ひっ」


 よく見ると、ディスティアちゃんは自分と年齢がそこまで変わらなさそうな子供の口を鋸で十字に割いていた。


「なにしているの……」


「あ、これはね! おにーちゃんに酷い事をしていた人に罰を与えているの! でもね、もう死んじゃったんだ……首を切ったら死んじゃった……。でも関係ないよね。こうして死なないようにしたらいつまでも罰が与えられるから!」


「異形化、している……」


 ギニスお父さんが呟いた。

 横を見ると、顔面がこれまで見た事ないくらい蒼白していた。


「うー………………ああああああああああ!」


 ギニスお父さんはしゃがみ込み、地面を殴る。

 地面がひび割れ、家が傾いた。

 ここが崩れるのも時間の問題だろう。


「何故、我は傍に居てやれなかった!」


 ギニスお父さんが地面を連続で殴る。

 割れに割れて、もう殴る物がなくなった所でギニスお父さんは立ち上がった。


「ディスティア、他者を殺したり、死なないようにしたりするのは悪い事なのだ」


 いつの間にか、ディスティアちゃんの前にしゃがみ込んでいたギニスお父さんは、ディスティアちゃんの両肩を押さえそう言った。


「なんで?」


「その人達の人生があるからだ。強い存在が、弱い存在を傷つけるのは駄目なのだ。強い力を悪い事に使うのは駄目なのだ」


「でもこの人達は、おねーちゃんとおにーちゃんをめちゃくちゃにしたよ?」


「それも駄目だ。弱いからって言って、強い者に何をしても良いという訳でもない」


「じゃあどうすれば良いの?」


「皆が笑顔で過ごせる空間作りを意識すれば良いんだ」


「おとーさんの言っている事、難しくて全然分かんないよ! おにーちゃんとおねーちゃんをおかしくしたんだからこの人達は悪者なんだよ!」


「悪者だからと、必要以上の罰を与えるのはいけない事なんだ……」


「……ディスティアは今、いけない事をしているんだ」


「ディスティア、悪い子?」


「今は」


「そんな訳ない! おにーちゃんとおねーちゃんをあんなにしたんだ! ディスティアは正義だよ!」


「ああ、ああ……場合によってはそうなのかもしれない。詳しい事は家で話そう。だから、今は家に帰ろう」


「うるさい! まだ足りない! まだ罰を与えきれていない!」


 そう言ってディスティアは鋸を持つ手に力を込める。


 お願い、もう止めて! そう叫ぼうとした時、ギニスお父さんが動いた。


「口下手な親父ですまない」


 ギニスお父さんがディスティアちゃんの首を叩き、ディスティアちゃんを失神させた。


 ディスティアちゃんを抱えたギニスお父さんが、空いている手で私を抱える。


「出よう。この家はもう直ぐ崩壊する」

「うん……」


 家を飛び出し、空中に出る。


「こんな小屋は壊してしまおう」


 そう言うと、ギニスお父さんは業火を吐き、小屋を焼き尽くした。

 これで小屋と同時に、ディスティアちゃんが不死かさせた存在も燃え尽きるだろう。


 これからどうなるんだろう。

 一抹の不安を抱えながら帰路についた。



―――――



「アギオがあちこちで王や貴族を殺害して周り、エクセレが人間の国を等しく滅ぼしていっているだと……」


 ギニスお父さんが頭を抱えながら、話す。


「それは大変だ。私が出向こうか?」

「良い。我が出る」

「それなら家の事は私に任せるといいさ」


 テリオ兄さんが出向く事を提案し、ギニスお父さんに拒否された。


「テリオ兄さん、なんか変わった?」

「私は特に何も変わってはいないさ」


 テリオ兄さんが少し大人びて見えるようになった。

 一人称が「僕」から「私」になったからだろうか?

 とにかく、ありえないくらいの光のオーラを感じる。


「まさか、異形化した?」

「む。そうなのか?」


 一人称だけはまだしも、光のオーラを常に纏っているのは流石に怪しい。


 頭を抱えていたギニスお父さんも「異形化」というワードが聞こえ、こちらを向く。


「だって、影がない。それに、テリオ兄さんには後光がさしている……」


「まさか貴様も変な力に目覚めて、力に支配されて……」


「おっと、心配はいらないさ。私はこの力に支配もされていないからさ。それに思い通りに使える」


「善の異形化という物か。共感性能力が優れている者が、誰かの為に力を欲した時、異形化と同じ事が起きる。テリオは何の為にその力を手に入れたのだ?」


「家族のためさ」


 光を輝かせながらテリオがいった。


「……我と一回戦ってみろ」

「私を測るためなら、かまわないさ」


 二人が外に出て空中を駆け回る。

 テリオ兄さんが異形化している事は直ぐに分かった。

 テリオ兄さんは自身を光にしてギニスお父さんの攻撃を回避している。

 それどころか、光化させた自身の身体を射出して攻撃にも転じている。


 勝負はなんと……引き分け。


 ギニスお父さんはテリオ兄さんを倒す術を持っておらず、テリオ兄さんは決定力に欠け押し切る事が出来なかった。


「異形化ってそんなに強いんだ」


 チラとディスティアちゃんを見る。

 ディスティアちゃんは気絶させられてからあの力を使う事は無かった。

 毎日寂しそうにしながら二人の帰りを待っている。


「テリオ、貴様なら戦力になる。我と一緒にあの二人を止めに行くぞ」


 ギニスお父さんがテリオ兄さんにそう言った。


「分かった。こうなるとは思っていたよ。なんて言ったって私の力は家族のためにあるからさ」


「決意は本物か」


「うん。あの日から私の気持ちは固まっている」



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