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聴雨譚  作者: 木逸昼寝
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雨止み


 やがて郊外の市街へと入り組んだ道にはいり、住宅街へと車を進ませる。美緒の誘導に従った彰人は一軒の古びた戸建ての前に停車させた。庭先から伸びた草木が塀を越え、道路側に雨粒に濡れた鮮やかな緑がこんもり顔をみせている。


 「えっと この家だな。メッセージ入れてみるわ」

彰人がスマホから売り主へと連絡を入れると該当した生い茂る緑の合間の門扉から男がほどなく姿を現した。


 彰人も車から降り、男と挨拶し二人で車の後方へ回り立ち話を始める。雨はどうやら止んでいるようだ。


 車内から物珍しそうに住宅街をキョロキョロと眺めていた美緒は不意にヨウに話しかける。


「ヨウくんって実家暮らしい?」

「いえ、一人です」

「え だって東京でしょ?実家も」

「はい まあ」

「ふーん そーなんだ 学校の近くとか?学生なのにすごいね。え 彼女はあ いないんだよね」

「はい」

 剥き出しの好奇心を宿した美緒は畳み掛けるように質問をし続け、淡々とヨウはそれに答える。


 「えー ちょーもてそうなのに ねえ かおりちゃん」

 此方に話をふらないでよとかおりは美緒をチラリと見返す。

 「ねえ 歳上の女の人とか どう?」

こんな聞き方、若い男の子は困るに決まってる、それもこんなきれいな男の子に。助け舟でも出そうかとも思うがヨウは平然と抑揚なく答え続ける。


「はあ よくわかんないです」


「えー 歳上もいいよお ねえ かおりちゃん」


だからこっちに話をふらないで。


 ヨウへの質問と重なってあまり聞こえはしないが どうやら飼育する際の注意事項など伝えた彰人は封筒を受け取ると車から発泡スチロールを二つ下ろし相手へと渡す。商談は成立したらしい。

 じゃあと挨拶をし、彰人は運転席へ戻り男は発泡スチロールを重ねて二つ抱えて家へと戻って行く。


 「よしよし」そう言いながら封筒の中身を確認し、彰人は車のエンジンをかけ直す。


 


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