雨見
「いや、特に聞いたことないですね。なんて書いてあったんですか?」
こちらに顔を向け真っ直ぐに言葉をぶつけられる。あちらこちらに枝葉を伸ばした木立のようにボサボサとした長めの髪からのぞく切れ長な大きな瞳に思わずドキマギしつつかおりは目を逸らし答える。
「いや特に嫌がらせっていうほどのことでもないんですけど、なんか 雨はまだふっているか とか書いてあって。。」
「雨? 外の降ってる?」
怪訝そうにこちらを見ながらヨウはかおりを見つめ続ける。
「そうです 雨 ははは へんですよね 意味わかんなくて ははは 送り主の名前も住所も書いてあったんですけど 知らない人で」
普段接しない類いの男性との会話は焦って 変な愛想笑いが出てしまい声がうわずってしまう。
「ふーん」
ヨウはそう答えたきりまた前を向き直し口をつぐむ。
「えー でもお なんかあ 意味ありげで気持ち悪くないい?かおりちゃん その手紙捨てちゃったんでしょお?」
「あ まじ 捨てちゃったの?なんで?あれじゃん 証拠品じゃん」
「やだあー 犯罪のにおいなのお」
大袈裟に美緒が彰人の肩をたたきながら言葉を挟む。
「いやでも きみわりーんだからさ 十分犯罪じゃんね で そんなの流行ってんの? いまどきは?」
彰人が再びヨウに話をふる。
「いや わかんないっすね 聞いたことないです。」
そう答えてそんな手紙にもかおりにも興味を失ったかのようにヨウはふいと顔を背けて、再び雨粒のついた車窓をぼんやり眺め始めてしまった。
愛想笑いを浮かべながらかおりは自分が相変わらず男にとって魅力ある女性として、興味の湧く異性としての魅力に欠けているのだなと少し悲しくなる。可愛い女の子であったらもっと身の心配をされ親身に話を聞き相談に乗ってもらえるのだろうか、と余計な想像をして自分を更に蔑ろにしてしまう。
「あー そうなんだ うーん あて先間違えたとかかね そういえば俺 この前 LINEで荷物の不在通知きてさ 家にいるのにびびって。。。。」
彰人と美緒が最近流行っているフィッシング詐欺についての世間話をしはじめる。
車はカンパチからおうめカイドウに入り西へと進んでいる。




