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聴雨譚  作者: 木逸昼寝
22/25

雨間


 「かおりちゃん 久々じゃーん」

 バックミラー越しにこちらをチラリと見ながら彰人は車を走らせる。

 「そうですね お久しぶりです」

 「こいつ おれのバイト先のともだち ヨウっていうの」

 「ヨウくんねえ 今まだ学生で超あたまいい大学いってんのお すごくない?え なんだっけえ あの理系のお まだハタチだっけ?」

 美緒がヨウに向かっていつも以上に鼻にかかった甘ったるい声で話しかける。そして少し含んだような微笑み浮かべかおりの顔にちらっと視線を投げかける。


 「いえ 23です」


 長い脚を折り畳み 少し猫背に前屈みな彼は綺麗なよこがおを美緒に向けう低い声でそう答える。なんだ 歳下の学生か 残念となぜかかおりは少しがっかりする。しかし以前紹介したい男がいると言っていたが同じ歳で仕事をしていると聞かされていたので彼ではないのかと 少し混乱しながら 重ねて少しがっかりしている。

 

 「おれのムカデちゃんたちみてみたいっていうからさ 先にうちで見せてきたの。あ ちなみにこれからうしろにのっけてる2匹届けて 代金受け取ってから遊びにいくからさ」


後部座席の後を覗き込むとラゲッジスペースにはクタクタになった毛布やらスコップやらと一緒に発泡スチロールの箱が二つ ポンと置かれているのが見える。

 彰人のもう一つの仕事やらのついでにかおりも呼び出されたというところか。しかしながら引きこもり気味の日々にはこういう誘いは十分に今はありがたい、あの手紙からも少しは離れていられるのだから。


 雨は徐々に止み始めているのか、車のワイパーは止まっている。


 「ここから届け先まで1時間ぐらいかな」

 美緒が彰人に話しかけながらスマホを覗き込んでいる。

 「だな ごめんね かおりちゃん ちょっと付き合ってね」

 

 「あ はい 大丈夫です」

 ヨウは一向にこちらを見向きもせず、愛想笑いも向けずひたすら車窓を流れる景色をぼんやりと眺めているようだ。


 

 


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