世界は少女を(7)
昔の将来の夢はかめさんでした
華宮桜視点
「き、禁忌………?」
「時を操るなんて、やっちゃいけない事じゃあないかい?」
全くもって正論だと、口を噤む。
確かにタイムマシンとかポンポンあったら時空の歪みが歪みまくって世界崩壊真っしぐらだと思う。
そんな私の考えを他所に、隣は隣同士で会話を進めていた。
「久しぶりだねぇ、亜嵐。相変わらず天鏡のお使いかい。」
「うるせぇ黙れカス。相変わらず気持ち悪い話し方しやがって。」
「相変わらず天鏡に御熱心だねぇ。そんなに頑張っても天鏡の愛は変わらないのに。」
凄く地雷がたくさん埋まってある草原に1人取り残された気分だ。けど、あの会話の中に入りたくない。なんか変なところで起爆しそう。
「で、其奴らは何してんだ?色情狂。」
薄々気付いてたけど、さっきから亜嵐さんと話してるのって西の死神の……なんとか丸さんじゃ。
どうしよう、亜嵐さんが名前を呼ばないから誰か分からない。
「狂ってはいないと思うんだがねぇ……過去を見せられてるんだよ。……とある少女の」
「少女………」
誰かなんて聞かなくても分かる。貴女はいつだって話の中心にいる。貴女がいなくても、貴女中心に世界は回っている。
「まるで、呪みたい。」
ポツリと呟いた言葉は、辺りの静寂さのせいで木霊してしまった。
「まるで、じゃねぇよ。」
それを否定したのは、死神さんだった。
さっきまでの飄々とした雰囲気は消え去り、化けの皮が綺麗に剥がれたような存在感を出している。はっきり言って、怖い。
「間違いなく、呪だ。呪じゃないと言うなら……化物の祈りが届いたとでも言うか?」
「し、死神さん…?」
あまりにも違う死神さんの雰囲気に圧倒される。
けれど、さっきまでの飄々とした死神さんが偽物だとか、そんなのじゃなくて…丸々、顔が同じ人が入れ替わったみたいな感じだ。
「気にすんじゃねぇよ単細胞。此奴の性格破綻は今に始まった事じゃねぇ。」
「せ、性格破綻?」
「多重人格、というよりも…そうだな、此奴が今まで溜め込んできた内側が徐々に徐々に出てきた。」
「理解出来るか?単細胞。」いいえ、理解出来ません。という視線で訴えたら目を逸らされた。
等々匙を投げた、と思ったけど、どうやら違うらしい。
亜嵐さんは死神さんを睨み付け、幼い声で毒を吐く。
「呪を撒き散らしてんのはテメェ等だろうが……テメェ等の呪みたいなクソったれた愛が
ーーーお彼岸太夫を蝕んでんだろうが。」
「……うるせえ。」
「妖樹の方が賢明な判断をしたまでだ。妖樹は己を犠牲にして此奴等にお彼岸太夫の過去を見せている。……お彼岸太夫の為じゃねぇ、これ以上、被害を拡大させない為だ。」
被害を拡大させない、まるでお彼岸太夫が病原菌のよう扱いだ。けど、天鏡さんもそんな風に言っていた。
お彼岸太夫は悪と言えば悪なのか。
それとも、何も悪くないと言えば、そうなのか。
けれど、もし、お彼岸太夫を悪だと言ってしまったら
ーーー彼女は生き続ける事自体が罪だと、言っているようなものだ。
「ぽん。」
「………え?」
後書きを書きたくない今日この頃