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43話目

そんなこと覚えているのか。と、俺が苦虫を噛み潰したような表情で尋ねると、レイスも真似して変な顔をしながら応じる。当然だね。と。

「・・・お前とは、なんだかいい関係になれそうな気がするよ」

「・・・そう・・・でしょ?」

「・・・ただ、タイミングさえよかったらな」

「・・・じゃあ今は?」

「そりゃー・・・」

「・・・そりゃー?」

「最悪」

「最悪」

レイスは一度はやめた、だがしかし、俺の殺害を再び繰り返そうと手を頭の上に乗せた。けど、すでにそこには俺の頭はなく、俺は、俺の魂はすでに自分の体に戻っていた。魂から肉体に戻った瞬間、レイスの魂の場所が分からなくなった。けど大まかな場所は分かる。でも、すでにそこにはレイスはいないかもしれない。いる保証はどこにもない。

「!そこか?」

俺が走った場所は、やみくもに目を向けた場所じゃない。片足がなかったから全力疾走という訳にはいかなかったが。レイスは冷静ではなかった。本気で殺しにかかったのに、それを外され、頭に来てしまったのだ。意外と子どもなんだな。なんて思いながらも、そんな余裕がないほどにダメージを負っていた。

腹の魂が削られた。激痛が走る。しかし、ダメージを受けた方向は分かった。前方上空右斜め45度付近。ダメージが伝わるより早く、勘で動いた。動いていた。これ以上はもうダメージを受けられない。それに、またあいつの居場所を探すのは面倒くさい。足には自信があった。とはいえ、レイスも動きが素早いし、何より片足だ。だけど、レイスが反応できないほどに早く、動かなければならない。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

触れている感覚はない。だが、確かに俺はレイスの魂を掴んでいる。逃がさん。絶対に逃がさない。魂ではないにしろ、レイスの魂と俺の肉体は今繋がっている。丸裸の魂ではないにせよ、俺の中にも魂が入っている。

「お前が、魂だけでよかったよ」

これは本音だ。レイスに肉体があったのなら、こうもうまくはいかなかっただろう。

「・・・今回は、僕の負けか」

「今回もな。・・・次回があれば、あっても俺が勝つに決まってる」

俺はニヤッと笑った。レイスの魂もにやりと笑う。俺のは虚勢だが、レイスは本音だ。

「今回は、肉体がある君に軍配が上がっただけなのにね」

「・・・負け犬の遠吠えかよ。素直に負けを認めろよ」

「・・・ああ。そうするよ。負けたよ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「また・・・」

俺はレイスの魂に短剣を突き刺す。何もない空洞なのに、短剣は突き刺さる感覚を持って、静かに進んでいった。一瞬、光が散った。散った光はノウンの元へ戻って行くようだ。

「終わった・・・」

リビィズの中にレイスの魂が戻ってくるのを私もリビィズも感じていた。もはや、リビィズの体力は限界だった。暴れ、暴れてもなおその勢いをとどめることを知らない悪魔の王の魂は、リビィズの肉体も精神も魂もボロボロになるまで追い込んでいた。

「これで、一安心か」

私が安堵のため息を吐くも、リビィズの様子は相変わらずだ。相変わらず、今にも死にかけている。どういうことだ?まるで、死にかけの修行僧のように、信条のみで王と戦っているようで、いつ事切れてもおかしくはない。しかし、何故だ?

「リビィズ!しっかりしろ!・・・あ」

悪魔の王の背後に何かが立っていた。その姿は、よく知る男だ。私はその姿を見ると、・・・分かってはいたけど安堵のあまり涙が溢れていた。抑えることなく、うれしくて涙が流れ出している。その顔、その表情は・・・優しかった。しかし、すぐにその表情が一変する。リューキが私たちが仕掛けた結界の中に入ろうとしていたのだ。

「や・・・やめて!!」

もう遅かった。今さら止められもしない。リューキの存在に気が付いたのは私だけだ。リューキが私だけに合図を送ったからだ。リューキが結界に手を添える。添えた瞬間にリューキが吹き飛ぶと思ったのは私の想像にすぎない。リューキは何事もなく結界の中に入って行った。

「なんで?」

当然の疑問だ。私たち神が4人がかりで作り出した結界だ。レイスや悪魔の王ですら、・・・もし破れるとしたら破れるのはこの2人ぐらいなものだ。それを人間であるリューキがいとも簡単に、何ら障害もなくすんなり入って行った。

「よう」

リューキがこともあろうに悪魔の王の魂に呼びかける。それに伴い、今までとち狂ったように暴れ回っていた王が、ピタッと暴れるのをやめた。ゆっくりと振り向き、リューキと目が合う。リューキを見た瞬間、何かを思い出したような顔をしたが、何を思い出しているのかわからない。リューキにもそれは分からないし、知る必要もない。ここで初めて、リビィズもリューキがここにいることに気が付いた。

「・・・来ていたのですか」

「・・・遅いから、俺から来てやったんだよ」

「・・・そうですか」

「・・・本当は、本当に殺したいんだが、今は我慢だな」

「・・・そうしてください」

結界の中で悪魔の王がリューキに食らいつこうとしている。リューキはそれを避けようともせず、その首を刎ね飛ばした。ただ刎ね飛ばした。払い除ける訳でもなく、一瞬で刎ね飛ばした。心臓に突き刺せば、悪魔の王は死んでいた。首を刎ねた時点で悪魔の王の魂は必然とリビィズの体に帰って行った。


読んでくれた方、ありがとう

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