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40話目

足が、爆ぜた。ように思えた。つま先だが、確かに爆ぜた感覚に襲われた。先と同様に見た目の変化はない。指先が飛び散ったとか、一緒に地面が爆ぜたなどの目に見える変化は起きていない。それでも、痛みは本物だ。

俺は、必死に口を押えた。少しでもレイスに居場所を悟らせないためにも。もしかしたら、もうばれているかもしれない。ばれているから攻撃されたのかもしれない。それにしては攻撃場所が適当だから、多分ばれてはいないと思うが。攻撃を受けた位置と角度から・・・いた。レイスは静かに佇んでいる。

俺は他の木の影に移動しながら、レイスの様子を見ていた。レイスは、俺とは逆の方向を向いている。やはり、俺の位置は掴めていないらしい。

「でもくそ・・・・これじゃ不用意に近づけねーじゃねーかよ」

距離を詰めるのは簡単だ。そこから攻撃をするのも、この短剣を突き刺せばいい。大した時間じゃない。だが、レイスに気が付かれれば話は変わってくる。当たり前か。奴も、生きることに必死だ。やすやすとやられはしないだろう。奴への攻撃をしくじった時、こちらは一瞬にしてやられる。それは確実に言える。しくじった方が死ぬ。

「・・・・!!!!!」

木から木に移動しながらレイスの様子を窺っていたのだが、突然、レイスの姿が消えた。・・・消えたか。しまったな。木々に、俺の心を映してしまったように、ざわめき出した。ばき・・・ばきばき・・・ばきばきばきばき・・・どこかで木の枝が折れていく。レイスが移動しているのだ。消えているくせにこんなにも痕跡を残す奴も珍しい。

レイスは、産まれながらにして王なのだ。血筋?違う。では、なんだ?というと、単なる性格。王であるために、その性格に見合うべく、力を手に入れ、権力を、地位を、何もかもも手に入れるべく、レイスは貪欲だった。元は、ノウンやマリ・アと変わらないただの一介の神だった。むしろ、ノウンやマリ・アよりも後に生まれた、神としては最後の神だった。

神とは、一体何から生まれるのだろう?人は、神から作られたらしい。ほんとかどうかは確かめるすべはないけど。俺に言わせれば、「ふざけるな」の一言。それ以外にはない。

では、悪魔は何から生まれたのだろうか。悪魔は人・・・そして神だ。人や神から生まれたり、もしくは、人になれなかった魂・・・神のできそこないなどが、悪魔になったりもするらしい。人になれなかった魂とは、産まれるはずの命が何らかの原因で死産してしまったときなどのこという。・・・なんだこの説明は?

人間よりは、悪魔の数は少なく、人になれなかったゆえに、知能も低い悪魔も多い。無邪気と言えば無邪気だ。その無邪気な悪魔たちを操っているのが人や、神から悪魔になった奴や大人の人間が何らかの形で悪魔になった奴らだ。こいつらは知能も無駄にある。ようはずるがしこいのだ。

俺が初めに戦った・・・初めて殺した悪魔がそれだ。もっとも、そのことを知ったのはもっと後になるが。悪魔にはもう知っていると思うが人と会話もできる奴もいる。基本的には喋れても会話しようとする者はめったにいない。なぜなら、やつらは人間や神の魂を喰らうだけ。馴れ合いなのか、悪魔同士では殺し合いや争いもしないらしい。

昔は、悪魔の王がいたからそれなりに治安はよかった。悪魔の王も、どことなくレイスに似ていた。だが、一つだけ決定的に違っていた。悪魔の王に名前がない。なんてことはどうでもいいが、もう一つ違いがある。これこそ、本当に決定的な違いと言える。

悪魔の王には、レイスのような力はあっても野心はなかった。それ以上に、悪魔たちの勝手も許さなかったが、それは支配したかったからではない。秩序を守ろうと思っていたのだ。レイス以上に、悪魔の王はこの世のことを考えていた。人間も悪魔も神も、無駄な争いはする必要がないと思っていたから。

一つに、悪魔の戦力が明らかに低いことにあった。神の力は悪魔にとってそのまま弱点であったし、人間も集まれば厄介だった。人間の血や体液は、悪魔だけでなく神にも弱点だった。道徳的にはえげつないが、悪魔が人を殺して行けば行くほど、その返り血や人間を捕食すればするほど、人間に対しては力が衰えていく。逆に神々に対しては強くなっていくが、それでは三つ巴だ。

その構図は、流石に避けたかった。最終的には負けるのは悪魔だろう。レイスもそのことには気が付いていた。ほかの神々は、争うこと自体を考えていなかった。本来、神々は弱き者や傷ついた者を助け、人でも悪魔でも皆助けていた。それは動物でも自然でもなんでもそうだ。とにかく、その昔、神々は本当に正義の味方だった。

それを変えたのは・・・分かっていると思うがレイスだ。レイスはまず、神の中でも一番強き神に近づいた。そして、それを殺した。正確には力と知恵をいただいた。レイスはその死を人と悪魔の所為にした。誰もそんなことは信じないだろうと思っていたし、実際に誰も信じなかった。だが、レイスはそれを人間と悪魔を一時的に監視するという条件で納得させた。でもやはり本当は誰も納得なんかしていなかったし、誰もが従おうとはしなかった。

しかし、その時点でレイスには協力者がいたのだ。神の中で二番目に強かった神と悪魔の王だ。二番目の神はレイスが一番目の神を殺し、力と知恵を手に入れたことを見ていた。いや、見せつけられていた。残酷に殺される様を、ただ黙って見せられていた。そんなのを見せられたら従うほかない。さっきも言ったが、神々は力があっても争いはしないのだ。それに、神に神は殺せないはずだった。神にも知らない力を、レイスは持っていた。

ついでに、悪魔の王も手なずけた。悪魔の王は簡単だった。ただでさえ、悪魔は神の力に弱いのだ。2~3匹の悪魔を連れてきて、悪魔の王の前で公開処刑をするだけでよかった。そのあと、少し脅せば素直に言うことを聞いた。それでも、悪魔の王には「何もするな」としかレイスも言えなかったが、これで完璧だった。戦えばレイスとて無事ではないから。だからこれで完璧なはずだった。あの男とあの裏切り神が現れるまでは。

神々がどんどん姿を消している情報が入ったのはかなり時間が経ってからだった。何より、神々は別々の場所で人間たち、悪魔たちを見張っていたし、人間が神には普通は会えない。神々もそうは互いに連絡を取り合わない。ノウンはそれも計算に入れていた。何しろ、ノウンは臆病だったから。いくらこの俺が桁外れに強くても、レイスとほかの神々が共同で抵抗してきたら、簡単に負けていた。その上、ノウンが裏切りに加担していたこともばれる。それはまずかった。

レイスがその事実を知った時には、すでにノウンの計画は出来ていた。まずは、悪魔の王からだ。この力がなくてはレイスには絶対に勝てない。計画の第一段階であり、最大の作戦でもあった。悪魔の王の力は圧倒的だ。しかし、付け入る隙も大いにあった。なんせ、奴はそもそもが平和主義だ。少しおかしいかもしれないが、レイスや人間なんかよりよっぽど平和を好んでいた。しかし、それが最大の弱点であった。


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