↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/71

兵士との交流と露天風呂改善案

露天風呂の試作は、

薬湯室とは別の、中庭の一角で行われていた。


囲いのない湯船。

空を仰げる開放感。


――だが同時に、大きな問題もあった。


「……やっぱり、丸見えだな」


リュウが苦い顔で呟く。


城壁に囲まれているとはいえ、

通路の角度によっては、

湯に浸かる姿がはっきりと見えてしまうのだ。


もちろん現在は

実験段階につき“軽衣(うす出しの湯着)着用”

――裸ではない。


男女も一緒に試験に参加するための配慮だった。


(それでも、気になるよな……)


ユウトは内心で頷く。


「これは……公開には使えませんね……」


ミリアも頬を赤らめながら小声で言った。


(そりゃそうだよね……)


そこへ――


「失礼します!」


兵士二名が敬礼して現れた。


彼らは王命により、

薬湯および露天風呂の“安全確認”を担当しているらしい。


そして――


「おう、リュウ!」


片方の兵士が気安く声をかけた。


「この前の稽古、助かったぞ。肩の使い方、目から鱗だった」


「ああ。こちらこそ。護身の型、参考になった」


二人は軽く拳を合わせる。


――そう、

最近リュウは兵士たちと剣術の意見交換をしていたのだ。


(いい関係、築いてるな)


ユウトは少し嬉しくなった。


「さて、本題ですが」


兵士は露天風呂を見渡し、率直に言った。


「これは……防犯的にも、丸見えですね」


「やっぱりそうですよね」


「はい。

弓兵が城壁からでも見えますし、

場合によっては城下からも角度次第で……」


つまり――

心からリラックスできない。


「それと、防衛上も死角が多い」


もう一人の兵士が言う。


「囲いがないのは解放的ですが、

外部潜入者の隠れ場所にもなりやすい」


「なるほど……」


ユウトは額に手を当てる。


(露天風呂って、

ただ屋外に置けばいいわけじゃないんだよな)


「もしよければ、意見を出しても?」


「ぜひ!助かります!」


兵士たちは少し考え、順に提案していく。


「まず――

周囲を半円状の高い岩壁で囲うのはどうでしょう」


「完全に塞ぐんじゃなく?」


「ええ。

空は見えるが、視線は遮る形です」


次にもう一人。


「生垣も有効です。

低木と高木を組み合わせれば、

“目隠し兼装飾”にもなる」


さらに――


「入口を“くの字”に曲げることで、

中が直線で見えなくなります」


「おお……!」


ユウトの目が輝く。


(プライバシーと安全性、

同時に解決できるじゃないか)


「それと――」


リュウが岩を指差す。


「視線の高さは、人によって違う。

兵士が警戒で歩く高さ、

城下の人間、子ども――」


兵士たちは頷く。


「だから、

段差と曲線を組み合わせた壁にすれば、

“どの角度からも見えにくい”造りにできる」


「なるほど……!理にかなってる!」


ミリアは目を輝かせた。



「それから」


兵士は照れたように笑った。


「露天風呂の利用は、

必ず男女別――あるいは時間を分ける形が良いと思います」


「……はい……」


ミリアは耳まで赤くなった。


(軽衣とはいえ、恥ずかしいのだ)


「実験だから一緒でも……と聞きましたが」


「ええ、実験ですから……」


ユウトは苦笑い。


(公開したら完全に分けよう)


「それと――」


ユウトが紙を広げる。


「湯が上から落ちてくる“打たせ湯”も作りたいんです」


「上から……滝のように?」


「そう。

肩や背中に当たることで、

身体の強ばりがほぐれるんだ」


兵士たちは互いに顔を見合わせた。


「……それは、兵士に人気が出そうだな」


「特に重装歩兵は肩が重く感じる者が多いので」


ユウトは笑った。


「鍛冶屋さんにも相談して、

安全な水路と落差調整装置を作ってもらう予定です」


「面白い試みですね」


兵士たちは素直に称賛した。


「……ありがとう」


ユウトは頭を下げた。


「俺たちだけじゃ、

ここまで考えられなかった」


兵士は笑う。


「我らも同じです。

“国を守る”方法は、剣だけじゃないと分かりましたから」


「癒しも――国を強くする」


「ええ」


言葉が、自然に繋がった。


・露天風呂は

曲線石壁+生垣+くの字入口


・利用は

男女別、または時間帯分け


・警備導線を確保しつつ

死角を作らない内周通路


・打たせ湯は

調整可能な落水装置


――こうして、

新たな改良案がまとまった。



「兵士のみなさん、優しいですね」


ミリアが微笑む。


「ああ」


リュウも静かに頷く。


「ただの警護じゃない。

国の未来を守ろうとしてる目だった」


「……素敵だね」


ユウトは空を仰ぐ。


(剣を持つ者も

祈る者も

薬を扱う者も

俺たちも)


(みんな――同じ場所を見てる)


(“誰かが笑って過ごせる国”って場所を)


やがて――

露天風呂も、打たせ湯も、

安全で穏やかな形へと整えられていく。


公開の日は、確実に近づいていた。


だがそれは――

もう少しだけ先の物語。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。