エピローグ
国会議事堂へ向かう前日の朝。功は、泉を誘って近所にある運動公園を散歩していた。
「今度の選挙でいくら遣ったか教えてよ」
途中にあるベンチで、出掛けにコンビニで買った缶コーヒーを泉に差し出しながら訊いた。
国政選挙はとにかくお金が掛かる。党の公認でもそれなりにまとまった額が必要なのに知名度も何もない新人の無所属となると生命保険だけでは足りないことは百も承知だった。
「ざっと、見積もって1000万くらいかな?まず、出馬で300万でしょ。それから、ポスター代や選挙カーのレンタル代等々で500万」
「残りの200万の内訳は?」
「武藤さんは、新規事業の宣伝代も兼ねたからって100万しか受け取らなかったわ。それと、五十嵐さんと大野さんもこれでようやくあなたに昔の借りが返せたからって2人で100万でいいって言ってくれたわ」
「俺、恵まれているな」
「そうよ。あなたはこの国の代表者になったのよ。公約通り誰もがささやかな幸せを掴める世の中を作ってください。でも、その前に1つだけ忠告します」
「なに?怖いんですけど」
「今度の選挙で我が家の家計は火の車です。よって、今後は自販機で飲み物を買うのは禁止。コンビニやスーパーで買う場合は、最安値だけ。あと、引き締めるところは引き締める。それは、体も同じ。そうと決まればここから家まで私とダッシュよ」
華奢だとばかり思っていたけど、意外にがっしりしているな。
軽やかに前を走る泉の後ろ姿は、あの日、見た、新平の後ろ姿にどことなく似ている気がした。




