6・それが私に、出来ること
「―違うっ!」
『!?』
「分かるっ!分かるのっ!理由なんて分からないっ!でも、駄目なのっ!あの子は、駄目…なの。私も、駄目になる…そんな気がするのっ!いやぁ、もう嫌だぁ!全部、全部、無くなっちゃうよぉ…!」
("分かる"か…それは多分、星姫の前世の記憶のせいじゃろうな…。コヤツが運命に逆らえるなら、それで万事解決。もしも、もしも、星姫が…リディアが悪役令嬢になってしまったら…その時は……)
かつてこの世界の創造神と結んだ契りを思い出して、歯噛みする。
(人間如きに、情など沸くまいと思っていたのにな…)
『星姫よ。お主なら大丈夫じゃ。悔んだって明日は変わらん。レヴィンを愛するなら、何時までだって追えばよい。その上で振られたのなら、その時は"聖域"でのんびり暮らそうではないか』
あやすような声でシロは続ける。
『―が。お前はその女と二人が惹かれ合うのを傍で見ていることとなるじゃろう。選択はお前に任せる。二人が結ばれるのを傍で見たくないのであれば、今すぐにでも一緒に逃げよう。お前の"勘"が外れることを願って、レヴィンの傍にい続けるというのならば、それも一つの手じゃろうさ』
「愛、する……?」
『?』
「わた、し……レヴィンを、愛して、いたの……?」
(そっ、そっからなのかぁああああああああああああああ!)
『きっ、気づいておらんかったのか!?』
「え?えぇ、全く…気づかなかったわ…」
『はぁ………』
(そっか…"愛"……。これが…愛。この、苦しくて切なくて悲しくて…でも温かくて泣きたくなるほど安心する…これが、"愛"…)
「~~~~~~っ!」
(嗚呼、私はバカだ。失ってから気づくだなんて。どうして、どうして。今までの十年間で気づけなかったのだろう。もう、遅いというのに)
「星姫……」
心配そうに名を呼ぶ白虎にリディアは、先の問の答えをゆっくりと呟いた。
「…シロ。私は―――――………」
泣きはらした顔で優しく微笑むリディアの決意に、シロの胸は締め付けられたのだった。