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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(81) 「仮面ライダー」不在の時代の記憶

★「仮面ライダー」不在の時代の記憶


●生誕50周年

1971年4月3日。

バイクの爆音と共に放送が始まった異形のヒーロー。

2021年4月3日。

「仮面ライダー」という特撮史に燦然と輝くアイコンは、50周年を迎えた。

今回は、仮面ライダーのテレビシリーズに全く関われなかった私が、50周年を期に「仮面ライダー不在の時代の記憶」をスタッフサイドからその想いと共にぶちまけようと思いますw


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●怪獣から変身へ

少し歴史を振り返ります。

「ゴジラ」という怪獣の代名詞を映画だけではなくて、テレビで毎週提供する為に「ウルトラQ」「ウルトラマン」のウルトラシリーズが生まれ、「怪獣ブーム」が起こります。

その「怪獣ブーム」を土台に、同じ様な子供達に夢を与えるテレビ番組を、というコンセプトの基、予算的に大掛かりなミニチュアも組めず、等身大の怪獣ならぬ怪人と闘う異形のヒーローが「仮面ライダー」という名称と共に怪奇的に誕生しました。

そして、「仮面ライダー」は市民権を得て、更に「変身ブーム」という社会的認知も得て、2年余り98話の長丁場を駆け抜けて行きました。

子供達への人気も高く、「仮面ライダー」はシリーズ化して行く事となるのは言うまでもありません。

今となって「昭和ライダー」と呼ばれるシリーズ群です。


●スーパー戦隊と仮面ライダー

「仮面ライダー」から4年後。現在「スーパー戦隊シリーズ」と呼ばれるシリーズの第1作「秘密戦隊ゴレンジャー」が放送開始されます。

「仮面ライダー」を5人集めて「仮面ライダー」以上のヒーローを創ることをコンセプトに創作された「戦隊」は、途中に2年近くの休み期間があったものの、現在までの45年間で45作品が創られる人気シリーズになっていきました。

さて、方や「仮面ライダー」は今年50周年ではありますが、31作品しかありません。

「昭和ライダー」と呼ばれる第1世代の作品群であっても「仮面ライダーストロンガー」までの5作品まで4年間は続いたものの、次の「仮面ライダー(新)スカイライダー」までの4年間は制作されませんでした。そして、「スカイライダー」の翌年に「スーパー1」が制作されたものの、また暫くの間はテレビシリーズが制作されませんでした。

3年後に「10号ライダースペシャル」が1回限定で制作されたものの、正式には「スーパー1」から6年後に「仮面ライダーBLACK」が制作されるまではテレビシリーズが放送されることはありませんでした。

「仮面ライダーBLACK」「仮面ライダーBLACK RX」を含めて「昭和ライダー」は計9作品となりました。


●「仮面ライダー」TVシリーズ空白の期間

1989年に「仮面ライダーBLACK RX」が放送を終了すると11年間に及ぶ「仮面ライダー」のテレビシリーズが空白となる期間が生じます。

10周年の時には「スーパー1」が放送されていましたし、30周年と40周年の際には「平成ライダー」シリーズが放送されていましたから、20周年だけが唯一10周年単位での記念日にテレビ放送がされていない周年となりました。


●「仮面ライダー」20周年

しかし、東映は「仮面ライダー」を忘れていた訳ではありませんでした。

「仮面ライダー」20周年を記念して「仮面ライダーZO」の企画を立ち上げます。

20周年で企画を立ち上げ、翌年に撮影し公開するという1年遅れの記念作品となりました。


私も撮影所内の知り合いから企画草案のアイデアを提出してみないか?との話しを頂きます。

「仮面ライダーの映画もしくはVシネマの1本分の単発企画」

それが、最低限の条件でした。

私は、当時企画書の書き方すら知らない助監督でしたから、企画草案の端くれにプロットと言うにもおこがましいアイデアシナリオを提出しました。

勿論、採用はありませんでした。

「主人公を含めた改造人間達によるバトルロワイヤル。改造人間達は寿命が短く、他の改造人間達を捕食して寿命を延ばす事が可能となる。そして、生き残った最後の1体には…」というプロットでした。

後に「仮面ライダー龍騎」の設定を見て驚きましたが、バトルロワイヤル自体は良くある設定なので、偶然の一致だと思われます。

まぁ、私が企画を提出した相手は吉川Pだったようですから、「平成ライダー」には関わられていませんので、偶然の産物だと思われますw

そして、私のプロットのもうひとつの特徴的設定は、未だにどの「仮面ライダー」にも反映されていません。

「遺伝子レベルで改造された男女の怪人の間に生まれた複合能力を備えた主人公」「バッタとカブトムシの特徴を併せ持つ仮面ライダー」

まだまだ「改造人間」というワードが「仮面ライダー」と大きく結びついていた1999年以前の発想ですので、現在の倫理観では問題がありそうな設定です。


当時東映の所内に有った撮影スタッフの斡旋会社によれば、私自身「仮面ライダーZO」のサード助監督として仕事をする予定だったようです。

しかし、同じ時期に他社の特撮作品に人身御供の様に参加していましたのでw「仮面ライダーZO」には正式には参加出来ませんでした。

ですが、「仮面ライダーZO」にスタッフ参加していた知人から撮影現場を覗かせて頂け、更には「仮面ライダーZO」の「クラッシャー」のギミック撮影のお手伝いと、ワンカット長回しアクションシーンの吊りのロープを曳く補助人員として無償参加させて頂きました。

私は、参加したくて堪らなかった「仮面ライダー」の名前を冠する作品ですから、自分から「ギャラ無し」を受け入れました。そして、現場のスタッフもそれを快く受け入れて頂き、「ギャラ出ねぇから、ガッツリは仕事に入るなよ」と、差し障りのない場所で参加させて頂けました。

まぁ、助監督根性が身に付き過ぎて、色々と細かなお手伝いはしたと思いますw

良い思い出となりました。


●「仮面ライダー」という冠

「仮面ライダー」の名前を冠する「仮面ライダーZO」という作品は、通常時では「仮面ライダー」の撮影は無い東映東京撮影所に於いて特別でした。

「仮面ライダーBLACK RX」の終了から4年近く経ち、久しぶりに「仮面ライダー」を冠する作品が撮影される。

そんな作品に何らかの型でも携われたのたのは、当時の「仮面ライダー」を好きなスタッフの間でも極少数だったと思われます。

翌年にも「仮面ライダーJ」が制作・撮影されますが、その後「仮面ライダークウガ」が制作・撮影されるまでの6年間は「仮面ライダー」不在の時代が続くこととなります。


今となっては「仮面ライダー」の冠は、当たり前の様に日常的に制作され撮影され放送されています。

私達の世代ならば、「仮面ライダー」を幼少期から知る者がスタッフに関るハシリだったのかもしれませんが、現在では、これも当たり前の様に参加スタッフの中に「仮面ライダー」で育った者も多く居ると思われます。

その様な者達よりも更に昔に、「仮面ライダー」不在の時期を撮影所で過ごした私達「仮面ライダー」好きのスタッフの想いは、現在のスタッフの中に少なからず居るであろう「メタルヒーロー」不在の時代として感じている者の想いと同じ様なモノだと思われます。


●抗えぬ想い

ほとんどのスタッフ達は、自分達では抗う事の出来ない「番組企画」やスタッフ交代の「人事」を甘んじて受けながら仕事をしています。

ですから、彼らも次の「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」や「50周年企画」が運ばれて来るのを、そのレールの脇で待つしか無いのも事実です。

作品に対して、下々のスタッフにも「あぁすれば」「こうすれば」という想いはありますが、「船頭多くして、船山を登る」という諺もありますので、大抵の者は上層部の指示を待つ身です。

自分の与えられた範囲内で最善を尽くす。

それが、自分の好きな作品群ならば尚更でしょう。


●ショッカー

なぜなのかは分かりませんw

滅びの美学が好きなのか、「仮面ライダー」を名乗った役者さんよりも敵の幹部を演じられた役者さんにご縁が多過ぎたのか、私は「ショッカー」が好きです。

仮面ライダーを名乗られた役者さんの中で、私がお仕事を御一緒させて頂けたのは「宮内洋」さんでした。

その御一人のレジェンドヒーローに対して、「潮健児」さん「汐路章」さんと「堀田眞三」さんとはお仕事を御一緒させて頂き、「天本英世」さんにはご挨拶程度でした。


「仮面ライダー50周年」は、すなわち「ショッカー50周年」でもあります。

潮健児さんの演じられた「地獄大使」ではありませんが、「ショッカー軍団(50周年)万歳!」ですww


●あとがき

「仮面ライダー50周年」に「仮面ライダー」不在の時期の記憶をスタッフサイドから振り返る今回のお話は、如何でしたでしょうか?

絶え間なく続く「スーパー戦隊シリーズ」は、それだけで素晴らしいことです。

「仮面ライダーシリーズ」は、「スーパー戦隊シリーズ」とは違いダークなヒーローとして出発し、「スーパー戦隊シリーズ」以上に試行錯誤を繰り返して来ました。


もしかすると「仮面ライダー」には、また不在の時代が訪れる可能性もあるでしょう。

しかし、「仮面ライダー」に憧れる子供達が居る限り、そして、かつて「仮面ライダー」に憧れた大人達が居る限り、更に「仮面ライダー」を愛するスタッフが居る限り、一時的に膝を着く事もあるでしょうが、再び三度どころか永遠に立ち上がり直し、更なる先へと歩み続けてくれるシリーズとなるのでしょう。


50周年、おめでとうございます!


そして、ショッカー万歳!!w

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