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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(76) 「SFX(特撮)」その2「爆発」その1「基礎編」

★「SFX(特撮)」その2

「爆発」その1「基礎編」


●勘違い

特撮作品において、爆発は「華」と呼んでもよい程の派手さがあります。

そして、昔から特撮作品を紹介するスチル(写真)や映像を選ぶ際に、この派手な爆発をバックに立ち並ぶヒーロー達やバイクのジャンプなんていうカットが頻繁に使われています。

その際によく耳にする意見や情報がまことしやかに流れることがあります。

「この爆発の後には地形が変わってしまった」

「この派手な爆発によって予算を使いきった」

「こんな爆発、今やったら大問題です」

「この爆発で大怪我をした」

全てとは言いませんが、ほとんどが「誇大広告」ですw

どれくらい「ほとんど」かと言えば90%ぐらいですw

もしも、関係者が「いやぁ、あの爆発で残っていた火薬をみんなつぎこんでねぇ」とか「いやぁ、あの爆発で大怪我した奴がいてねぇ」等と発言されたことを見聞きした事がある方がいらっしゃっても、それらは「リップサービス」の可能性が高いですw

本当に大怪我をしたのであれば、大問題だし、公の場で発言しませんからw


また、本当のことを語ったことが、伝え聞くことによって尾ひれや背ひれやツノまで付いて曲解されて広まっている可能性すらあります。

また、本人や関係者の語ることでも記憶の脳内美化や脳内誇張、推測、小さな付け足し等が追加されたり緩やかに曲げられて、いつの間にか蟻がドラゴンになってしまっていることもあるのです。

この場合、本人や関係者が語る以上、本当のことが含まれていることで全否定が出来ないので始末が悪いですw


と、いうことで、皆さんの誤解を解く一端になればと想いまして、今回は特撮の「華」である「爆発」を語れる範囲内で書き連ねて行きたいと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。

そして、ここでの意見は、あくまでも個人的な意見です。

東映をはじめとした各社や映像業界の直接的な意見ではありません。その点を予めご理解ご了承下さい。


●資格

まず、爆発物=火薬類を取扱うには、火薬類取扱保安責任者やと火薬類製造保安責任者と呼ばれる国家資格が必要になります。

市販されている花火をそのまま使用する分には資格が無くても大丈夫なのですが、その花火を分解して製造する場合には火薬類製造保安責任者が、使用する場合には火薬類取扱保安責任者の資格が基本的に必要となります。

合格率は30%と狭き門ですが、受験資格が18才以上ということだけという門戸の開かれた資格でもあります。

また、発破技士という免許制度もありますが、いずれも一度取得すれば(取り消し処分を受けない限り)終身有効の制度です。

しかし、実際の火薬類を取扱う現場において実務に従事しようとすると、各都道府県の火薬類保安協会が実施する講習を受講しなければなりません。そして、この講習を受講して修了したことを証明する物が火薬類取扱従事者手帳です。

手帳は実務現場に携帯が義務付けられています。

この手帳は、2年に1回ごとの更新講習を受講しなければならず、更新講習を受講しなかった場合は手帳は失効するため実務に従事できなくなります。

まぁ、国家資格の方の取り消し処分さえなければ、手帳の方は講習を再受講すれば良いだけなのですがw

また、この手帳にはもう1種類あり、火薬類取扱保安責任者や発破技士などの火薬類に関係する免許・資格を持たない者でも火薬類に関係する業務に従事することができるものがあります。

これは、火薬類取扱保安責任者や発破技士の補助的業務を行う者です。この助手的な作業をする人達にも実務に従事する為には講習を受講する事が義務付けられていますので、その受講の証としての手帳が配布されます。

但し、この受講は、あくまでも火薬類取扱保安責任者や発破技士の補助的業務を行う者として登録されている者に限られているようです。


また、火薬類取扱保安責任者や火薬類取扱従事者手帳の所持者だけではなくて、年一回開催される講習会の聴講を義務とした上で発行される「煙火打揚従事者手帳」の所持者も爆発物を取り扱うことが可能です。

但し、社団法人日本煙火協会会員である煙火業者またはその従業員あるいは作業要員が自らの業務遂行の為に最低限取得が必要な資格です。したがって他の様々な「資格」と異なり、社団法人日本煙火協会は広く世間一般の個人または団体に対して取得を促しているものではありません。


●発火

30年前には既に「電気発火」が主流でした。

爆発や火薬といえば、実際に火をつける導火線のイメージがありますが、電気による火花での発火の方が、種火からの延焼等が無くてより安全で発火を制御し易い信頼性のある方法となっています。

配線の途中に釘と釘で接触させるスイッチ部分を作ったモノが基本となり、配線の繋がった片方の釘を複数本横に並べて、もう片方の配線を繋いだ釘によって連続的に発火させる「シャミセン」と呼ばれる装置が基本となっていました。

しかし、特撮作品等では連続的に爆発させる撮影が頻繁で、連続発火をする為に繋いだ配線を外して接続してを繰り返すことになりますから、簡単に配線の取り外しと接続が可能となる装置や、その装置の持ち運び用のボックス等の作成が成されました。

勿論、規定はありませんから各操演さん毎にオリジナルな装置が作られていますw

それらの配線及びスイッチも「シャミセン」と呼ばれています。

但し、未だに釘の「シャミセン」を使っているこだわりの操演さんもいらっしゃるようですw


●爆発との距離

爆発は危険なものです。

爆発単独の撮影の場合ですら、カメラをはじめとしてスタッフやキャストの待機する方向へ小石や破片、火の粉等が跳んで行かないようにしつつ、1番被写体として効果的な「爆発の方向性」「爆発の規模」を考えてセッティングされます。

ましてや、キャラクターやキャストといった人間をカメラフレームに同時に納めようとする際には、その人間に怪我の無いようにするのが1番大切な配慮になります。

ですので、画面上でキャラクターやキャストの物凄く近い場所で爆発が起きた様に見えるカットであったとしても、少なくとも数十メートルの距離を離して爆発させています。

ではなぜ近く感じられるのかは、カメラの被写界深度が関係しています。

夜空の星も、実際には星座の様に平面上に並べられている訳ではなくて、立体的に何光年や何十光年も離れた位置関係にあるのと同じことで、爆発とキャラクターやキャストとの距離は、カメラから見れば前後に大きく離れています。

爆発に巻き込まれたように見せる撮影の場合は、カメラ→爆発→被写体の順に並べ、被写体が爆発で見えなくなることを演出します。

この場合の爆発は、小さくても良いのです。カメラの手間にあるモノは、後ろにあるモノよりも大きく見えることは当たり前なのですからw

爆発が小さくなれば、距離を詰めても安全マージンは確保可能ですが、それでも爆竹ぐらいの小さな爆発じゃなければ数メートルなんて近い距離にはなりません。つまり、爆発の規模によって被写体との距離を調整が可能です。

但し、キャストが生肌を晒しているとかいないとか、プロテクター型のキャラクターだとかタイツのキャラクターだとかという被写体自体の条件によっても爆発と被写体の距離は変わってきます。


●爆発の演出

爆発として有名なのが「ナパーム爆発(通称:ナパーム)」と「セメント爆発(通称:セメン)」があります。

爆薬として使用する火薬自体は基本的に同じモノです。

その火薬の上に「ガソリン系」の入った袋を置くと「ナパーム爆発」になり、「セメント系」の入った袋を置くと「セメント爆発」になる訳です。

この様な火薬意外のモノが追加される爆発は、特に危険が伴いますので、被写体からの距離は更に離されることになります。


しかし、カメラに納める映像が最低でも現状維持、出来るものならば期待以上にすることが求められる世界ですから、特に爆発の花形の「ナパーム」や「セメント」爆発には力が注がれます。

「炎の演出」や「セメント=土の舞い上がりの演出」は、「操演(=そうえん)」と呼ばれるスタッフ(=演出家)が担当します。

炎やセメントの爆発の広がり方を演出するのですが、具体的には、爆発箇所のカメラ側に爆発によって吹き飛ばされない程度の大きさの石をひとつふたつ置くだけでも、炎やセメントの広がり方は変わってきます。


爆発を大きく見せる為には、火薬を追加するのが手っ取り早いのですが、危険性も増します。

ですから、カメラに向かって左右に拡がらせる様に配置するとか、高さを出す為にすり鉢状や筒状の爆発を制限する囲いを作る(現場で急遽簡易作成する場合もありますが、専用の筒等が用意されることもあります)とかといった演出をして、爆発を効果的にします。

また、複数の爆発を同時に爆発させて爆発自体をより大きく見せる演出もあります。


更に単純に爆発を大きく見せる方法として、「ナパーム爆発」では火薬の量をそのままに「ガソリン系」の量を多くセッティングすることで爆発を大きく見せる事が可能です。

また、「セメント爆発」の際には「セメント系」の量や置き方を工夫して爆発を大きく見せられます。

これらの様に爆発物の上などにセッティングされるモノがある場合は、そのセッティングされるモノに予め手を加える様にすることで爆発を調整する事が可能なのです。


つまり「大きな爆発=大量の火薬」ではないのです。

如何に少量の火薬で「カメラに映って大きく見える爆発」を演出できたかなのです。

ですから、「爆発が派手だから予算が凄い」とか「爆発が派手だから大量の火薬を使った」とかは一概には言えないのです。

だからと言って「予算は少ないけれども派手な爆発を」と言われても限度はありますがw


本当に腕の良い「操演」さんは、カメラフレームと被写界深度を理解し、そのカットの効果的な画面を想像し、爆発という大きく自然に左右されるもうひとつのキャスト(=被写体)を創造し演出させているのです。


●使用場所

爆発が可能な場所は、限られています。

基本的には関係官庁や所有者への使用許可が取得されている場所でなければなりません。

勿論、街中での爆発は出来ませんし、許可も下り難いです。

採石場等は、場所として使用許可が取れている場所が大半ですから爆発が可能です。但し、爆発があることは借用する際に借用元へ届けておく必要はあります。

更に、使用許可が下りている場所でも必要以上の音や火薬量での爆発は、近隣住民等から注意やクレームを受ける可能性があります。

昔々は、そんな事も関係なく爆発の撮影をしてしまう反社会的なこともありましたが、今ではコンプライアンスの時代ですからねぇw

まぁ、今ではCGを使用することで、街中でも部屋の中でも爆発させていますがw


●あとがき

爆発においては、まだまだ語り尽くせない部分がたくさんあります。

今回に語らせて頂いた部分だけでもかいつまんでの「基礎編」にしかなりません。

だからと言って、私が爆発の深淵を知っている訳でもないのですがねw

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