余り語られない撮影所のあれこれ(72)「SFX(特撮)」その1「ブルーバック合成とグリーンバック合成」
★「SFX(特撮)」その1
「ブルーバック合成とグリーンバック合成」
●SFXとVFXの違い
先ずは、混同してしまっている可能性が高い「SFX」と「VFX」の違いからご説明させて頂きます。
大雑把に言えば「SFX」はフイルム撮影やビデオ撮影での美術的・光学的な特殊な視覚効果であり、英語では「SPFX」「FX」とも略され、日本語では「特殊効果」とも表記されます。
主に「撮影現場で映像効果を加える」ものです。
これに対し、「VFX」は「Virtual Effect」の略で、コンピューターグラフィック等のデジタル技術を用いて「映像を後から加工する映像技術」で「視覚効果」とも表記されます。
因みに「CG」はコンピューターグラフィックの略ですが、「CG」のみだと「VFX」とは呼びません。「CG」と実写映像をデジタル合成処理することで「VFX」と呼ぶことになります。
今回は「SFX」の方に偏った技術のご紹介となります。
ああ、やっと特撮っぽくなってきた…かな?w
尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw
今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。
●SFX
「SFX」は特殊撮影(特撮)を意味する英語の「Special Effect」の略称で、前途したように美術的や光学的な特殊な視覚効果です。
古くは「トリック撮影」や「特殊効果(特効)」とも言われたものでしたが、1980年代頃から「SFX」が一般的に認知されて行き、同時期に発生した「VFX」と共に広まっていった為に混同されやすくなっています。
具体的に云えば「ストップモーション・アニメーション」や「特殊メイク」を用いたアナログ的な美術・舞台装置による技術や「ブルーバック」や「マットペイント」といった撮影技術・光学処理技術を指すものです。
●ブルーバック合成
「ブルーバック合成」とは、ブルー=青色1色に塗られた背景を前に被写体を撮影し、フィルムやビデオの映像の中で背景と被写体を切り離して処理することで、映像をマスキングする合成の方法を言います。
俗に「クロマキー合成」と呼ばれている合成方法でもあります。
この「ブルーバック合成」の技術はフィルムがモノクロの時代から存在していました。
ブルーに対する感度が鈍いフィルムを使って撮影をすると、モノクロですからブルーの部分が真っ暗に写ることになります。
そのフィルムを適正な露出で転写するとブルーの部分とそれ以外の部分とを区別するマスキング用のマスクを作ることができます。
それらの素材をオプティカルプリンターを使って光学合成を行い、ブルーの部分(モノクロなので、黒くなっている部分)に別の映像をはめこんで「合成」が成立します。
この「ブルーバック合成」は、日本において1950年代後半に円谷英二監督により初めて使用され「ブルーバック・システム」と命名されました。
また、「ブルーバック合成」は、フィルムがカラーになっても行われ続けていました。
●ブルーとグリーンの違い
ブルーバックとグリーンバックは、基本的には同じ用途で用いられるモノです。
「合成」時にブルーを背景に使うことは、日本人にとっては利点でも有りました。
特にカラーフィルムに変更された後には、黄色人種の肌の色に含まれるオレンジ系の補色にあたる色がブルーだったので、何の問題もありませんでした。
しかし、欧米の白人種の肌の色に含まれるピンク系色によって、ブルーでは補色に成りえず、どうしても合成時点で不具合が生じていました。
そこで、ピンク系色の補色として「グリーン」を背景に使って処理するようになったのです。
まあ、ブロンドの髪は「グリーンバック」では抜けてしまうので向かないとかの被写体による調整はあるようですw
現在のデジタル化された撮影機材にとっては背景色が「ブルー」でも「グリーン」でも余り関係なくなってしまっています。
スーパー戦隊をはじめとしたブルー系が配色された被写体が頻繁に出る作品等では、「グリーンバック」にする場合の方が多くなってきています。
但し、ほとんどの映像業界が「グリーンバック」に変えてしまっているのは、「グリーン」の方がデジタル的にノイズが出難いとか、照明が微細でも明るく発色しやすいとか、と云った理由があったことも原因だと思われます。
因みに、このデジタル化した撮影機材から作り出す「合成」作業は「VFX」です。
●グリーンとブルーのヒーローが並んだら
勿論、特撮ヒーロー作品においても「ブルーバック合成」は使用されていました。
但し、スーパー戦隊の様にヒーローの基本色に「ブルー」が用いられる場合がある場合は、その部分のみ「グリーンバック」で処理されていました。
なぜならば、「ブルーバック」はあくまでも「消してしまう色」としての「ブルー」という指定色なので、青いモノが「ブルーバック」の前にあれば諸共に「消して」しまい「透明化」してしまうのですw
ですので、「ブルーバック」の前面にブルーのヒーローを置いてしまうと「透明化」してしまいますwので、「グリーンバック」の前に「ブルー」の被写体を置いて撮影します。
では、「グリーンバック」の前に「グリーン」のヒーローや被写体が置かれた場合はどうでしょうか?
これも「ブルーバック」の前の「ブルー」と同じく「透明化」してしまいます。
さて、では「ブルー」も「グリーン」も居る現在の「キラメイジャー」の様なスーパー戦隊が居たとして、合成処理をするのに同時に背景の前に立たなければならなくなったらどうするのでしょうか?
この場合は、メインとなる「ブルーバック」もしくは「グリーンバック」の背景色の前に「もう片一方の色のバック」である板を用意して、背景色を途中から変更するのです。
例えば、現在では「グリーンバック」が主流になっていますから、その前に「グリーンのヒーロー」が立つ際には「ブルー」に塗られた板を「グリーンバック」の前に置いて、一部分だけ「ブルーバック」にしてしまうのです。
実際、現在放送中のスーパー戦隊には「グリーン」も「ブルー」も居ますから、同時に「合成」しなければならないのならば、微妙な調整が必要になります。
もしも「ブルー」と「グリーン」の被写体が直ぐ横に並ばれての「合成」などであれば、現在のデジタル化した「VFX」でも手間取ります。
ですから、合成作業を考えて「名乗り」で並ぶ際も基本的には「ブルー」と「グリーン」は隣同士には並ばない様にしていたりしますw
そんな眼で歴代「スーパー戦隊」の「名乗り」を観てみるのも面白いかもしれませんw
●余談
因みに、「ブルーバック」も「グリーンバック」も、ステージセットの場合は天井付近からカーテンレールを使って、「ブルー」や「グリーン」の長い長い布や紙を吊り下げて使用していました。
このカーテンレールには「暗幕」「白幕」等もセットされていて、用途によって準備されていました。
尚、そのカーテンレールの後ろのステージのセット奥の壁には「ホリゾント」と呼ばれる「マットホワイトの背景」が塗られています。
この「ホリゾント」に様々な色で照明を施すことで、イメージ的な背景を作り出すのです。
●あとがき
今回は、今まで余り触れて来なかった技術的な部分にメスを入れてみましたw
技術的な部分は、現場で実践的に教わることもありましたが、「自分で勉強して、現場で検証して、判らなければ先輩方に聞く」といった感覚でしたから、今回の様に他部所の技術に関しては間違っていないか、調べながらの作業でもあります。
ですから、自分の記憶していた事や考えていた事等が違っている場合もあります。
だからこそ、いくら下調べしていても「間違っているよ!」からの「訂正作業」が発生しそうで、今からビクビクしています。
私はネット世界には「厳しいチェック体制」が存在していると思っていますから、「訂正作業」なんてドンと来い!と涙を流しながら、皆さんの「暖かい叱咤激励」を受け止めるべく「肉襦袢」を重ね着してお待ちしておりますw




