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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(71) 監督の三種の神器?

★監督の三種の神器?


●監督の三種の神器?

昔から「監督」の役をキャストに演じさせると聞いて、その雰囲気を作る為に使用されるステレオタイプの備品に「台本」と「ディレクターズチェア」と「メガホン」という三種の神器の様なモノがありますw

今回はこの三種の神器から「台本」は「台本カバー」として、後は「ディレクターズチェア」と「メガホン」を語ってみようと思います。


尚、例によって情報のほとんどが約30年前ですw

今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。


●メガホン

監督をすることを「メガホンを取る」とか「メガホンを握る」とも称されるくらいに、「メガホン」は監督のアイテムとして認識されていて、「メガホン」だけを持ってカメラの隣に立つだけで、「あの人は監督かな?」と思わせてしまうくらいです。

しかし、何十年も前の無声映画のような時代なら露知らず、30年ぐらい前でも実際の監督で「メガホン」を使っている人なんてほとんど見たことがありませんでした。

何十年も前の撮影現場の「メガホン」は、声が届かない程に遠距離のキャストに指示を出すための非電気式の「拡声器」という役割と、スタートやカットの合図を出す為に叩いて音を出すといった形で使われるくらいの使用頻度だったのですが、電気式ではない「メガホン」では届く距離にも限界があり、実際の撮影現場では「電気式のメガホン(=電気式拡声器)」や「トランシーバー」といった機械式の形へと移行して来ました。

実際、30年前でも撮影現場で広範囲に指示を出す際には「メガホン」は電気式でしたし、遠距離にはトランシーバーを使っていました。

現在でも多くのキャストに指示を出す際等には「電気式拡声器」は使っているようですが(昔と比べて物凄く軽量小型化していますが)、トランシーバーは携帯電話へと移り変わっているのではないかと思います。

ですから、野球をはじめとするスポーツの応援の際に用いられる様なプラスチック製の非電気式「メガホン」を、首から紐で下げている監督などは、現在ではまずいませんw


尚、電気式メガホンを使用するのは監督だけではなくて、エキストラ等へ指示を出す助監督や、広範囲のスタッフへお知らせする為に使う制作部や、アクション時にキャストに指示を出すアクション監督やアクションコーディネーター等も使用していました。

たまにカメラマンが使用する場合もありましたが、その場合のほとんどが怒号でしたw


●ディレクターズチェア

監督が使うとされる折り畳み式の椅子の事で、挟み込むアクションで左右を折り込んで畳みます。

シートと背もたれの部分はキャンバス生地や同様の丈夫な生地でできています。

フレームは木が多かったようですが、現在ではより丈夫なスチールや軽量なアルミ等の金属や強化プラスチック等でできている物もあります。

「ディレクターズチェア」と称されるデザインでは、背もたれは通常低く、肘掛けが付いていて、脚の部分はクロスしています。

この「ディレクターズチェア」は、デザインとしては映画というモノが発明される300年近く前から存在していた様ですが、頻繁に場所移動を繰り返す監督等に便利な為に使用されていた事で、映画監督の座る椅子という認識が広まり、名前の由来になった様です。


ロケ現場やセットでの撮影の際に使用されているイメージがありますが、映画会社で用意しているモノではありませんので、あくまでも個人所有のモノとなります。

普通のスタッフやキャストが撮影現場で座るモノは、良くてパイプ椅子、普通は「箱馬」でしたw

「ディレクターズチェア」を所有して、現場で座るというのは映画の現場の監督か、映画監督出身のテレビドラマの監督か、大御所の俳優や女優さんぐらいでした。

大抵は、背もたれの裏に名前等が大きく印字されていたりして、他の「ディレクターズチェア」と見分けられる様にする工夫がされていました。

まぁ、大抵は場所取りなだけで、拡げる場所が限られてしまいますから、現場に持ち込む人はスタッフやキャストにはほとんどいませんでしたw


記録さんは、座って台本に書き込むことが多い為に、背もたれの無いクロスしたフレームに布等を張っただけの小さな折り畳みチェアを持ち歩いている方もいらっしゃいました。

また、メイクさんがキャストの髪やメイクの直しの際に座って貰う「ディレクターズチェア」を現場に持ち込む場合もありましたから、「ディレクターズチェア」が皆無という訳ではありませんでしたが、本来の「ディレクター=監督」の「チェア」としてはあまり見かけませんでした。


●台本カバー

今までの二品は、監督が常時現場に持っていなくても何とかなるモノでしたが、台本だけは無くてはならないモノであることは、疑いようもありません。

しかし、台本の中にどんな内容が書いてあるのか等の台本の話については以前お話しましたが、台本カバーのお話はしていませんでしたので、今回はあらためてその部分をお話しましょう。


台本は、作品に関わるスタッフやキャストに配布されます。

流石にエキストラさん達や、アクション補助のキャストさん達までには配布されていませんでした。

その台本を一番長期間使用する役職は誰かと問われれば、主役キャストではなく、記録さんと監督という答えになります。

撮影前の準備段階から使用し始め、撮影が終了した後も編集作業等で使用され、作品が完成するまで持ち続けるのです。

そんな長期間使用され続ける台本は、あくまでも紙ですし、表紙裏表紙共に少し厚みのある紙を使っているとはいえ、簡単に破れてしまいますし、水濡れも大敵です。

ですから、長期間使用する記録さんと監督には「台本カバー」を使用する方もいらっしゃいました。


そもそも台本のサイズは、B5規格のサイズである横182mm×縦257mmよりもひとまわり小さいサイズで、横175mm×縦245mmという微妙な大きさとなります。

ですから「台本カバー」を用意するのにB5サイズを流用すれば、縦横共に10㎜近い差がある為にガバガバになってしまいます。

その為、台本に被せる「台本カバー」は、ほとんどが特注品ということになってしまいます。

水滴を防ぐ為に素材には合成皮革や本革等を使用し、通常の本のカバーの様にブックマーカーである栞紐(=しおりひも)を付けたり、ペンを差す場所を設けたり、台本を閉じる為のフックやベルトを設けたりといった機能的な拡張から、カバー自体に柄を刻んだり名前を入れたりといった装飾的な「台本カバー」も存在しました。

たまにご自分で購入したという監督もいましたが、大抵は御祝いにプレゼントされる物でした。

今では「台本カバー」をネット等から簡単に注文することができる様ですが、市場としては大きくありませんので、やはり高級品といった感覚になるのは仕方ないことだと思います。

しかし、本革の「台本カバー」は、長年使い続けることで深い色合いに変化して行き、「味」が出てくる物でもあります。

ですから、長年監督業をされている方の中には「味」のある「台本カバー」をお持ちの監督もいらっしゃいました。


今お話しているのは監督の持ち物としての「台本カバー」なのですが、勿論台本を大切に扱いたいというキャストやスタッフもいらっしゃいました。

そんな方達は、やはり高級品の本革カバーに向かうか、合成皮革やB5版のブックカバーで代用する場合もありました。


尚、助監督のぺーぺーのサード助監督ぐらいになると、汗と埃を被って、端も折れたり破れたりした台本をカバーもなく使用していました。

大半は、ズボンの後ろポケットに二つ折りにしたり、丸めたりして差して持ち歩いていました。早い話がボロボロでしたw

但し、台本は一人一冊ではなくて予備を分けて貰える場合もありましたから、最初から仕事用と保存用の2冊を貰ったり、破れてしまったり紛失してしまったりして2冊目を貰う人もいました。

尚、30年前では最低印刷ロットと云われる最低印刷に必要な部数があったり、ある一定部数を超えると1冊の単価が下がる為に、予備の台本を多く抱える作品もありました。

現在の台本の取り扱いは厳重になっていると聞きますが、30年前等は余って時間の経った台本は、古紙回収業者行きでした。


●あとがき

結局は、いずれも三種の神器どころか持っていてもいなくても良いモノばかりになってしまいましたw

では本当に監督の三種の神器とは何なのでしょうか?

監督の持ち物には他にも「鉛筆orシャープペンシル」「赤青鉛筆」「消しゴム」といった筆記具があり、コレらはどの監督も確実にお持ちでした。

また「タバコ」「飴」「ガム」といった嗜好品を常に携帯されている方もいらっしゃいました。

そう云った意味では、三種の神器と云うモノは三種ではなくて、もっとあるのかもしれません。

しかし、最低でも「台本」と「鉛筆orシャープペンシル」「消しゴム」は持っていないと仕事になりませんでしたから、コレが三種の神器なのかもしれませんね。

まぁ、その「鉛筆」や「消しゴム」を記録さんに借りる監督もいらっしゃいましたがねww

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