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余り語られない撮影所のあれこれ  作者: 元東△映助
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余り語られない撮影所のあれこれ(38) リテイク T-1「結髪さんとメイクさん。そして、床山さん」

★リテイク T-1

結髪(ケッパツ)さんとメイクさん。そして、床山さん」


今回は、以前アップしたモノの中で説明不足だったモノを「リメイク」というか「リテイク」しようといった企画の「テイク・ワン(=T-1)」ですw


●結髪さんと床山さん

結髪(=ケッパツ)さんは、日本髪を結う職です。

そして、髷を結うのが床山さんです。

でも、撮影所では結髪さんとしか呼んでいませんでした。

それは、結髪さんが髷も結うからに他なりません。

地毛で日本髪を結う人はほとんどいませんから、結髪さんは基本的に髷や日本髪のカツラの手入れと装着がお仕事となります。

月代(=サカヤキ)と呼ばれる髷髪の額から天頂部分の剃り落とした部分。ここが青く塗られたプラスチック性の様な簡易的なモノではなくて、頭に羽二重と呼ばれる月代を作る布を装着してから髷カツラを装着する本格的なモノであることは、云うにおよびません。


そして、専門職なだけに知識も豊富ですし、その専門知識がなければ結髪さんとして恥ずかしいことになります。

男性の髷の形や女性の日本髪の結い形は、時代や身分や職業によっても微妙な違いがありました。

ですから、役柄に合わせたカツラを装着させるのも結髪さんのお仕事なのです。

それを適当なカツラを被らせていると、たちまち視聴者からのお電話が飛んできます。

視聴者の方が知識が豊富な方がたくさんいらっしゃるのですからw


以前『「太秦でスタッフと仲良くなりたかったら、まず結髪さんと仲良くなれ」という話を聞いた事があります。それだけ結髪さんは重要なポジションなんですね。』と、おっしゃられた方がいらっしゃいました。

東映京都撮影所は、撮影のほとんどが時代劇です。

ですから役者さんは、基本的に髷です。

ということは、結髪さんに御世話になるのは当たり前なのです。

しかも、髷のカツラの下に被る羽二重や髷のカツラを装着するのには時間がかかりますから、長い時間無言のまま結髪さんに対するなんて出来ません。

更にスタッフは、結髪さんの状況をみて現場へのキャストの入り時間を決めますので、結髪さんの気を損ねると大変ですw

つまり、結髪さんと仲良くなるとスタッフと仲良くなれますww


但し、東映の結髪さんは、基本的に京都撮影所にしか居ません。東京撮影所では、日本髪が稀ですので髪もメイクさんが整えます。

東京撮影所をはじめ多くの東京の撮影所では、先ず髷を結えるメイクさんはなかなか居ないでしょう。

女性の日本髪ですら結えるメイクさんは少ないと思います。

でも、ほとんどはカツラで対応するので、お借りするカツラ屋さんが手入れの仕方を知っている程度で良いのです。


●メイクさん

京都撮影所でも顔はメイクさんが行います。

京都撮影所の和装での化粧であるドーランと呼ばれる白塗りもメイクさんのお仕事です。


そして、東西の撮影所共に撮影現場にはメイクさんだけが付き添いますw

顔と髪の他、腕や足といった化粧品やブラシや筆で整えられる箇所はメイクさんの担当となります。

勿論、時代劇ではメイクさんが髷のカツラを整えられないとお話になりませんから、結髪さんの技術を習得されています。


役者さんによっては、専属のメイクさんを抱えている場合もあります。

そこまで出来るのは大御所の俳優さんであり、そこまでするのは大女優さんでした。

しかし、流石に専属の結髪さんを抱えている大御所さんはいらっしゃいませんでしたw


特筆すべきは、切り傷や擦り傷といった血糊を伴うものからメイク用のパテを使ったものまで様々な特殊なメイクを施すことのできるメイクさんもいらっしゃいました。

但し、基本は髪を整えたり顔等のメイクを整えたりすることがメイクさんの仕事ですから、全てのメイクさんができるわけではありません。

ですが、血糊はメイクさんの必需品であり、少なくとも切り傷ぐらいはメイクさんが作ってくれていました。


●撮影現場の男女比

メイクさんの男女比は、圧倒的に女性が多いです。

極端な話、30年も前の撮影現場に居る女性としては、記録(=スプリクター)さん、衣装さん、メイクさんの3人ぐらいでした。

他には、たまに製作進行助手に女性がいらっしゃったぐらいでした。

記録さんは、女性しかお会いしたことがありませんが、衣装さんにもメイクさんにも男性はいらっしゃいますし、男性であっても撮影現場にも付き添われました。

他社の撮影現場であろうとも、30年前のほとんどの撮影現場の衣装さんもメイクさんも女性でした。

それぐらい、メイクさんとは男性の方が珍しい部署でした。

衣装さんの仕事は男性でも行えますが、女性の着替えの手伝いなどでは男性だと嫌がられる場合もありますから、男女の差なくお手伝いできる女性が多くなります。

しかし、メイクさんは基本的に顔や髪に手を触れるだけですから、男性が行って嫌がられる場合はほとんどありませんでした。

ですから、女性である必需性もないのです。

それでも女性のメイクさんが多いのは、メイクというもの自体が男性には縁遠いものであり、多分に女性的なセンスを必要とする職種だからに他なりません。

私のお会いしたことのある男性メイクさんは、親子揃って撮影現場の男性メイクさんで、繊細なセンスを持ち化粧品の知識や用法も良くご存知でした。

まあ、私の見たことのある男性メイクさんは御二人だけでしたが、どちらの方も背の高いイケメンでした…w

しかし、化粧を伴わない結髪さんには男性比率が高いのも不思議なことです。


今やどんな部署にも女性はいらっしゃる様です。

昔から男女比的には少ないですが、小道具さんと製作部さんにも女性はいらっしゃいましたし、撮影現場ではありませんがプロデューサーにも女性はいらっしゃいました。

重いライトを担ぐので男性しか考えられなかった照明さんも、機材が軽くなったことで、今や女性が仕事のできる部署になりました。

撮影部にも女性が助手をしている現場はあります。

演出部にも女性助監督や女性監督はいらっしゃいます。

但し、記録、衣装、メイクの女性比率が高い三職を除けば、まだまだ男性比率が高い職種なのは確かです。


●メイク道具

メイクさんは、撮影現場まで付き添います。

それは、セット撮影だけではなくてロケであっても同じです。

素顔で出演する役者さんが一人でも居る限り、メイクさんは必要です。

ですから、メイク道具もコンパクトに収納されたカバンや荷物キャリーに括り付けてといった持ち運び方をされていました。

ロケ現場でのドライヤーは、ロケセット自体に電源が通っている建築物ならば、そのコンセントを使用させて頂きます。

ですが、そんなロケ現場だけとは限りません。建物すらない岩山等では基本的に照明部さんのコンセントをお借りしていました。

ボルト数にだけは気を付けてw


私の経歴したメイクさんの中には、自前のキャンピングカーを改造して簡易メイク室にしたメイクカーでロケ現場に運転してこられた方もいらっしゃいましたw

確かに、ロケ現場ではちゃんとしたメイク室が確保し辛い場合がほとんどですし、十分な光量もメイク用に確保して貰える現場は稀でしたから、移動メイク室は夢の様な設備なのでしょう。


●メイクさんの立ち位置

撮影現場のスタッフに混じって一番役者に近い位置をキープしている女性がいたら、先ずもってメイクさんです。

メイク道具を入れて置くポケットのいっぱい付いた前掛けエプロンの様な形状のモノを腰に巻いて居れば、確実にメイクさんです。


ロケ現場では、カットから次のスタートまでの短い時間に、立ったままの役者さんに対して、細かな髪の乱れを直し、メイクの崩れを直し、汗を拭き取るのが仕事の大半です。

ですから、夏のロケ撮影では、扇子や団扇といったモノや日傘といったモノまでも用意しているメイクさんもいらっしゃいました。

このように、メイクさんとは役者さんの一番側に居て、あたかも付き人かと思われる気遣いもされている大変な仕事なのです。

そして、そのメイクをしなくてはならない役者さんは、大抵の現場では一人ではないのですから……

大変なお仕事です。

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