余り語られない撮影所のあれこれ(39) 「アフレコとアテレコ」
★「アフレコとアテレコ」
コロナ禍の影響下において、総集編としての特別番組を放送するテレビ局が日常化しています。
そんな特別番組でも、アフレコやナレーション録りは行わなければならなかったりします。
今回は、そのアフレコやナレーション録りの裏側をご紹介します。
尚、例によって情報のほとんどが30年前ですw
今となっては変わっていることや、無くなっていることもあります。また、記憶の内容が30年の間に美化されたり劣化してしまっているものも存在しますwwその点をご理解の上、あらかじめご了承下さい。
●アフレコとアテレコ
アフレコは、アフターレコーディングの略です。
単純な話、映像に後から音声を収録することです。
基本的には本来言葉を発しないモノや自分自身の姿に音声を吹き込む事を言います。
アニメは勿論、ヒーロー番組の怪人やロボット等に声を付ける場合等が一般的です。
これに対してアテレコとは、アフレコから派生した造語で、本来言葉を発している人物等の声を上書きする様に新たな声を付けることを言います。
外国映画の吹き替えは、アテレコの代表です。
口元の動きに“アテ”てアフターレコーディングするのでアテレコというらしいです。
厳密にはアテレコもアフレコの一種であることに違いありません。
特撮作品では「仮面ライダー電王」の中で、イマジンに憑依された主人公・良太郎の声を、イマジンのアフレコを担当している声優さん達がアテレコしているのが、メジャーで分かりやすいかと思います。
このアテレコの際は、口元の動きに合わせなければいけないという難しい作業が生じてきます。
その為に声を“アテ”られる役者さんは、口元を合わせ易い様にハッキリと開けてセリフを発しなければなりません。
つまり、自然な演技でありながら口元は分かりやすくしなければならないということになります。
役者としての演技力も要求されますし、アテレコをする声優さんにも洞察力と共感力が問われる作業となります。
勿論、アニメではかえって口元の動きに曖昧さを付けたり、逆に細かいくらいの動きにしてみたりしてアフレコを助けようとしています。
実写では、アフレコの際もアテレコの際も演じる役者さんやキャラクターのスーツアクターさん達は、実際のセリフを喋っているのが通例でした。
時としてスーツアクターさんは、声だからこそ画像で見れないし、口元すら映らないのであればと、細かな身体や手足の動き等でセリフの内容や抑揚を伝えようとするのです。
それは、アフレコに不馴れな俳優陣がいる場合、大いに助けになっているのです。
●アフレコルーム
通例では、この録音室(=録音ルーム)の事を「アフレコルーム」と呼んでいました。
アフレコ以外にもナレーション録りもアフレコルームで録音していました。
完全防音の密閉型の録音ルームなのですが、それでも振動は伝わります。
車等の大型車輌が部屋の横を通過すると、部屋自体が振動してしまうのです。
ですから、1階にある録音ルームでは通りに面した場所に赤ランプとベルが設置されていました。
録音開始前に赤ランプの点灯と同時にベルを短く鳴らします。それは車輌通行禁止の合図ですから、もう一度ベルが鳴って赤ランプが消えるまでの暫くの間、車輌は録音ルーム側で待機しなくてはなりませんでした。
余談ですが、このシステムはステージセットの建物にも設置されていました。ステージセット内で録音がある場合に使用されていました。
メタルヒーローやスーパー戦隊や仮面ライダー、不思議コメディシリーズ等は、特撮部分の無い本編部分も含めて全編アフレコでしたから、アフレコルーム以外では縁遠いシステムでしたが、他の同時録音(=同録)の作品では当たり前のシステムでした。
ご丁寧に製作進行や助監督が、セットの通用扉を開けて「本番で~す!」と叫ぶ作品もありました。
さて、30年前には東京撮影所には最低2ヵ所にアフレコルームがありました。
ひとつは、技術部の建物だったと思います。2階にあって、周りに車が通っても振動は来ませんので安心して録音できました。
そして、もうひとつは、テレビプロの製作ルームの並びの角に有りました。
こちらは1階でしたし車の往来も頻繁な場所でしたが、アフレコ作品は全てこのアテレコルームでアフレコを行っていました。
前室に入るにも外扉と密閉防音の内扉があり、そこから更に完全防音されたアフレコルームに入るには、重い密閉防音扉がありました。
良く声優さん達のアフレコ風景を映像で見る時に映っている、ガラスで仕切られた防音録音室と前室兼調整室で構成されていました。
録音室にはスクリーンが張られていて、そこに映像が流され、その映像に合わせて録音するのです。
昔はフィルムでしたから文字通り映写していましたが、今はデジタルですからモニターに変わっているのかもしれません。
●アフレコ参加メンバー
アフレコに参加するスタッフは、基本的には監督、記録、録音、セカンド助監督ぐらいで、セカンド助監督が進行させます。
このスタッフ達は全て録音室内には入らずに、前室で録音室の中の人達にマイクを使って指示をしていました。
そして、実際に声を発する俳優陣と声優陣が、アフレコするシーン毎に録音室内に複数人数が入り、同時に録音をしていました。
流石に今回のコロナ禍の影響下では、録音室内に1名しか入れずに録音したのだと思われます。
スタッフの居る場所はまだ換気出来ますし、セカンド助監督を除く最低3人で…最悪、監督と録音部の2名だけでも作業は可能です。
但し、効率は無茶苦茶悪いですw
まあ、30年前のテレビプロのアフレコルームは取り壊されて建て直っている様ですので、キレイに成っているでしょうし、場所自体も移動してしまっているのかもしれません。
●アフレコ台本
アフレコには「アフレコ用台本(もしくは、アフレコ台本)」という通常の台本とは違った台本が用意されました。
これは、撮影時に記録さん(=スクリプター)が記録したセリフを基に、撮影台本とは違うフィルムに映した映像に則したセリフで台本を作り直したモノでした。
このアフレコ台本を手にするのは、本当に関係者だけなので配布冊数は少なくなりますが、基本的には製本されて配布されていました。
しかし、時間が無い場合等では製本版ではなくてコピーが配られる時もありました。
その最たるモノは「予告用ナレーション台本」です。
とは言ってもコピー用紙1~2枚程度の紙切れでしたw
基本的にはアフレコの際に予告のナレーションも録音するので、予告用ナレーションのセリフもアフレコ台本に記載するのですが、予告を作成する助監督がナレーションのセリフの入稿を落とすと、アフレコ台本には記載されずに、
予告ナレーション「━━━━━」
と表記さるだけとなります。
過密スケジュールで撮影が続いている場合等では、たまに有りました。
●プレスコ
プレスコアリングの略で、映像よりも前にセリフを録音してさしまう作業のことです。
映像よりも前ということで、口元を合わせることはほぼ不可能です。
ナレーション録りの際や、俳優さんや声優さんのスケジュール上の都合で仕方なく行われる場合がありました。
但し、映像よりも前の録音の為には撮影台本が完成していないと無駄となる可能性もありました。
まあ、ほとんど見かけません。
●オンリー
サウンドオンリーの略で、撮影現場で周りの雰囲気を録音する場合や、俳優さんに撮影現場でセリフを喋ってもらい録音する場合等が有りました。
大抵は、同時録音の作品に多くみられる「簡易アフレコ」です。
撮影現場で録音マイクがセリフを拾える位置にセッティング出来なかった場合。
俳優さんが微妙にセリフを間違えていて、芝居をやり直す程のことでもない場合。
録音の鮮明さが足りないが、芝居をやり直す程のことでもない場合。
等が一般的なオンリーです。
フィルム撮影では本当に録音(=サウンド)オンリーですが、ビデオ撮影やデジタル撮影では録音と映像が同機していますから、映像も一緒に撮ることになります。
余談ですが、その際のカチンコのボードナンバーは「SO(=サウンドオンリー)」を付けて「SO-S54-32-1」等となりました。「SO-1」とかだけでも良いと言われる記録さんもいらっしゃいました。
そんな映像も同時収録する場合でも「オンリー」としての言い方に変わりはありませんでした。
通常は、撮影現場のその場でスタッフに手を止めさせ口を止めさせて収録してしまっていました。
それは、出来るだけ前に録音した音源の周囲の音と繋がるようにする為でもありましたし、俳優さんとしても気持ちが作りやすいだろうという思いからでもありました。




