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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第七話「ヴァルエメラルドの正体は誰だ?」
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ダイヤモンドVSエメラルド

 ダイカルアの怪物を倒したことで、ボクは一息つく。老若男女、バラエティーに富んだ人々が倒れているが、バグカルアの素体であろう。そして、羽毛にまみれている眼鏡をかけた大学生くらいの男性がピジョンカルアの正体だと思われる。

 予定外の邪魔が入ったけど、カードも手に入ったし、これで帰ることができる。しかし、そうは問屋が卸さなかった。一息入れる暇も許さず、エメラルドがにこやかな顔でボクの肩に手を置いている。

「邪魔がいなくなったから、これで心置きなく戦えるね。ヴァルダイヤモンド、ぼくと勝負だ」

「ちょっと待ってよ。君と戦う理由なんてないじゃないか。それに、さっきは助けてくれたし。ボクを倒したいなら、見殺しにするなりすればよかったんじゃないの」

「ダイカルアの怪物に倒されたら意味ないじゃん。ぼくが直々に攻略したいんだからさ」

 ダメだ。この子、完全なゲーマー脳だ。


「反射の魔法が厄介なのは分かったぞ。そいつを発動させなきゃ勝機はあるってことだ」

 さすがはゲーマーというか、即座に弱点を探ってきた。いや、張り合うつもりはないんだけど。でも、話が通じるような相手ではなさそうだ。

「あのさ。ちょっと待ってくれない。君と戦うつもりなんて毛頭ないんだ」

「逃げようたってそうはいかないよ。無限なる幻影よ! 音速を超越し我が身に集え! 超速分身マッハファンタズマ

 呪文を詠唱し、エメラルドは十人近い分身体を出現させる。どこへ逃げようとも先回りしようという魂胆か。本当にどうしよう。ダイカルア相手ならともかく、魔法少女相手に傷つけるわけにはいかないし。


「ええい、鏡映魔射ミラージュリフレクティア

 思考停止して、とりあえずバリアを展開する。反射されると分かっていれば、わざわざ攻撃してこないだろう。なんて、高を括っていたのだが、

「やっぱり。魔力は強いけど戦法は単調だね」

 エメラルドはあちらこちらへと高速で飛び回った。本体がどこかにいるはずだけど、もはや見当がつかない。そのうち、背中に激痛が走った。


 振り返った途端に、またも背中に衝撃を受ける。どうなってるの。ちゃんとバリアの魔法が発動しているはずなのに。

「思った通りだね。君のバリアは全方向をカバーできるわけじゃない。的確に死角を狙っていけば、本体にダメージを与えることができるってわけさ」

 そんな。完全防御できると思っていたのに、弱点があったなんて。ダイカルアより先に魔法少女によって見破られたってのが救いか。


 でも、安堵している場合ではない。バリアが通じないとなると、エメラルドを黙らせるにはあの魔法を使うしかなくなる。回復や魔力増強が意味無しとなると、もう分かるよね。

 けれど、直撃したら大怪我では済まされない。ならば、相手に自ら降参を選ばせるか。でも、エメラルドを屈服させるなんて、どうやればいいのやら。


 悩んでいる間にも、エメラルドの猛襲は続く。

「守ってばかりじゃ勝てないよ。さあ、もっと君の力を見せてみなよ」

 だから、本気を出したら危ないんだって。とりあえず、全治全能オーラルリカルバリアで回復してお茶を濁すけれども、問題の先送りにしかならない。


 殴られては回復するという堂々巡りが続く。そのうちに、エメラルドに異変が現れだした。動きが緩慢になり、肩で息をしている。まさか、スタミナ切れか。エメラルドも人間だから、無尽蔵に攻撃できるわけではない。どこかで体力が尽きるはず。

 そうか、その手があったじゃん。回復魔法を連打していれば、勝手に降参してくれる。ただ、うまく事が運ぶとは限らなかった。魔法を発動するたびに、ものすごい倦怠感に襲われる。RPGでいうところのMPが底をつこうとしているのだろう。


 もし、魔力が尽きたらバリアを張れないどころの話じゃなくなる。強制的に変身が解除されて、一方的に蹂躙されてしまう。それ以上に、エメラルドに正体がバレちゃう。

 意図的に変身を解除して、戦う意思はないって示すのも一つの手だった。でも、そんなことはできない。ダイヤモンドの正体が男だったなんて、素性の分からない相手に明かしたらどうなることやら。マスコミにリークされでもしたら生きていけないよ。


「ぼくと根競べをしようだなんて、いい度胸だよ。でも、君の方が先にへばってるじゃないか。さあ、とどめだよ。やられたくなかったら、君の本気を見せてよ」

 地面を蹴って、エメラルドが跳躍する。そして、右足を突き出して突っ込んでくる。ただの飛び蹴りではない。日曜朝のあのヒーローが得意としている、有名なあのキックだ。


 バリアを再展開しようにも、燃料切れを起こしかけている機械よろしく、なかなか構築することができない。固執していると、もろにキックを受けてしまいそうだ。だからって、逃げようにも間に合わない。

 迫るショッカーよりもたちが悪い暴力。もうおしまいなのか。ボクは苦し紛れに右手を振り上げた。


 すると、不思議なことが起こった。ロボライダーやらバイオライダーに変身したわけではない。なんていうか、とんでもないものを目撃してしまったのだ。

 ボクの右手は偶然にもエメラルドのスカートに引っかかってしまったらしい。突っ込んでくる勢いも合わさり、勢いよくスカートをめくりあげてしまったのだ。

「ひゃぁ! な、なにしてんだよ!」

 空中で慌てて裾の乱れを直そうとする。それがいけなかった。変に体勢を崩したものだから、蹴りの標的がずれてしまう。そして、嫌な音を立てて、ボクの傍に落下してしまったのだ。


 ほんの一瞬とはいえ、ばっちりと中身を目撃してしまった。縞パンだった。なんて不埒な感想を抱いている場合ではない。スカートを抑え、頬を膨らませながら俯いている。

「君さあ、いくら女同士だからって、二回もセクハラするなんてダメだかんね」

「ごめん。でも、完全な事故だったじゃん」

「事故で済めば警察はいらないよ」

 ですよね。取り繕うとしても、恥辱を前面に押し出した顔を前にしては告げるべき言葉がない。誰か助けてください。この状況、どうやって打開すればいいんだよ。

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