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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第六話「謎の天才ゲーマーと自由の戦士ヴァルエメラルド」
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あの出来事が早くも報道されているようです

 ロックフェスにおけるダイカルア襲撃事件から数日後。世間ではある話題で持ち切りだった。五宝町で巨大怪獣が出現した。もちろん、ダイカルアの仕業ではあるが、インパクトがまるで違う。これまで人間と大差ない背丈の敵ばかりだったのに、いきなり数十メートル級の化け物が出てきたのだから当然だろう。

 ダイカルアの司教クロコダイルカルア。ボクたちとの戦いの末、強制的に巨大化させられ、そして敗北した。巨大クロコダイルカルアの目撃者は町内だけにとどまらず、周辺市町村で多数挙げられていた。そりゃ、倒すために郊外へ誘導したんだから当然だろうな。


 そして、怪物以上に話題になっていることがあるんだけど、それがボクの悩みの種だった。今朝も、穂波が用意してくれた朝食を頬張りながらテレビのニュースを見ていたところ、例の事案が取り上げられた。

「では、次のニュースです。五宝町で謎の怪物が出現した問題で、警視庁は『今後、同様の被害が生じる可能性がある』と会見し、より一層の警戒を呼び掛けています。

 この事件は、先日日曜日、五宝町で開催されたロックフェスにおいて、体長二十メートルほどの謎の怪物が出現したとのことです。その後の調査で、宗教集団ダイカルアによるものと断定。また、怪物の行方については未だはっきりとはしていないとのことです」

 テレビで謎の怪物って単語が出る度にご飯を吹き出しそうになる。連日同じ話題をやるのも無理はないよな。巨大怪獣なんて、大地震並の災害だもん。


「お兄ちゃん、よく無事でいられたわよね。ロックフェスってダイカルアの怪物に乗っ取られて、みんな怪物にされちゃったんでしょ。遊びに行ってた友達が言ってた」

 穂波がたくあんを口に運びつつ報告する。クロコダイルカルアの仕業で、観客たちが軒並みバグカルアにされちゃったもんな。諸悪の根源が完全消滅したおかげで、どうにか元に戻ることができたみたいだけど。

 ただ、会場そのものは修復できなかったので、現在急ピッチで工事が行われているそうだ。父さんが朝からいないのもそのせいである。建築業界からすれば食い扶持が増えて大助かりなのかな。


 巨大怪獣が現れただけでもお腹いっぱいだけれども、ニュースはそれだけに留まらなかった。テレビの画面が切り替わり、郊外の森が映し出される。空中に漂う光源に、ボクはご飯を吹き出しそうになった。

「巨大怪獣事件に関しまして、謎の光を放つ存在が多数目撃されております。真偽のほどは定かではありませんが、この謎の存在により怪物が消滅させられたとの話もあるそうです。現在、怪物の行方とともに謎の光の正体につきましても調査が進められています」

「謎の光だって。あれって、魔法少女って噂でしょ」

「う、ん。そうみたいだね」

 歯切れが悪いのは心当たりがありまくるからだ。どうということはない。正体はボクだ。


 ヴァルダイヤモンドに変身したボクは「悪行退散セイバーダクネロンド」でクロコダイルカルアを倒したんだけど、一部始終を報道機関のヘリコプターが撮影していたみたい。ただ、発する光が強すぎて、画面全体に煌々と光が灯ったのち、あっという間に怪物が消えるという陳腐な特撮映像となってしまっている。

 撮影したと思われる記者が「巨大怪獣を魔法少女がやっつけた」とリークしたことから、主にネット界隈で「怪獣を倒した魔法少女がいる」とお祭り騒ぎになっているのだ。光の巨人が三分かけて倒してきたような存在を一瞬で消し去ってしまったのだ。その衝撃は計り知れない。


「巨大怪獣を倒せる魔法少女か。あまりにも強すぎて、もはや化け物ってレベルよね」

 実の妹に化け物呼ばわりされて複雑な気分だ。ボクとて、逆の立場なら同じ感想を抱くだろう。

「でも、町を救ってくれたから、きっといい人よ。私も会ってみたいな、魔法少女に。お父さんも見たっていうし、私だけじゃないかな、見てないの」

「そうかな。うーん、魔法少女はどんな人だろう」

 棒読みになってしまったのも仕方ない。そんなに見たいのなら、ここで披露することもできる。絶対にやらないよ。お兄ちゃんが魔法少女って穂波の精神を破壊しかねない狼藉だ。


「いけない、そろそろ行かないと遅刻しちゃう」

 穂波の一言で時計を確認する。もうすぐ八時を指そうとしている。まずいな、ゆっくりしている場合じゃない。残りのご飯を流し込むと、盛大にむせた。

「もう、ドジなんだから。お兄ちゃんも魔法少女みたくしっかりしてよね」

 その魔法少女当人なんだけどな。まあ、ご飯を喉に詰まらせる奴と怪物を討伐している奴が同一人物だなんて夢にも思わないだろう。

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