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TS魔法少女は戦いたくない  作者: 橋比呂コー
第五話「優輝の苦悩! 逆襲のクロコダイルカルア!」
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ルビィとクロコダイルカルア、リベンジマッチ

 魔法少女の装束は所々破れかかっていた。皮膚には無数の切り傷がつけられている。対して、クロコダイルカルアは傷一つ負っていない。いくら司教相手とはいえ、ここまで一方的に蹂躙されるなんて。

 しかも、前に対面したから分かるが、クロコダイルカルアはまだ本気を出していない。なぜなら、あいつが魔法で出した例の武器を出現させていないからだ。

「白けるぜ。噂の魔法少女とやらも弱っちいじゃねえか。雑魚どもには興味はねえ、さっさとダイヤモンドを出せ」

 奴の狙いはボクか。でも、ダイヤモンドが出てくることはない。なにせ、変身しようがないからね。君みたいな危険極まりないやつと真っ向からやりあうなんて御免だよ。


 満身創痍のサファイアはルビィに肩を借りてどうにか起き上がる。

「情けない姿を晒しちゃったね。いくらお姉さんでもあいつはどうにもできなかったわ。正直、強すぎる」

「そんなのは分かってるわよ。あなたはゆっくり休んでいなさい。私が仇を討ってあげる」

「言うようになったじゃない。まあ、今はお言葉に甘えさせてもらうわ」

 ルビィからサファイアを押し付けられ、ボクは肩を回される。サファイアは防御力の高さを売りにしていたはずだ。そんな彼女が傷だらけになるなんて、あいつは一体どんな力を発揮したんだ。


 ヘッジホッグカルアからの連戦となるも、ルビィに疲労の色はない。むしろ、強敵を前に意気揚々としている。そして、クロコダイルカルアも新たなる標的を定め、意地汚く涎を垂らしているのだった。

「そこのワニ! 前と同じように行くと思ったら大間違いだからね。私だってレベルアップしてるんだから」

「ギャッハーッ! 俺様に刃向ってくるってことは、ヘッジホッグカルアを倒したってことか。やはり見込んだ通りだぜ。ますます配下に加えたくなった」

「お断りよ。あんたの仲間になるぐらいだったら、組織ごと壊滅させてやるわ」

「ほざけ。意地でも抵抗するなら、完膚なきまでに叩きのめす」

 あぎとを開くクロコダイルカルア。討伐せんと、ルビィはディザスカリバーを構えて飛びかかる。


 脳筋タイプ同士ということで条件は五分。いや、ルビィの方が若干不利か。愛刀を活用し果敢に攻めるものの、クロコダイルカルアは素手で剣裁きを防いでいる。あいつには悪夢の武器を召還する魔法がある。そいつをまだ使わずルビィの猛攻に対抗できているということからして、ポテンシャルの高さを嫌でも実感させられる。

 悉く一閃を防御され、ルビィは肩で息をしている。彼女のスタミナは決して低いわけではない。ただ、バグカルアとヘッジホッグカルアとの連戦で着実に体力を削られているのだ。


「俺様に喰らいついてくるとは、なかなかやるじゃねえか」

「あんたに褒められてもうれしくないわよ。ちまちま攻撃しても埒が明かないか」

 ディザスカリバーを支えにして、ルビィは作戦を練る。ついに彼女も頭脳プレイに目覚めたか。


 ただ、作戦といっても大層なものではなかった。一旦距離をとると、両腕に魔力を蓄積させた。同時に地面を蹴って跳躍する。そして、堂々と構えるクロコダイルカルア目がけ、上空から襲いかかった。

「大地を穿つ大剣よ、鋭利なる刃を以て貫け! 斬撃一貫ゾルドストレイト

 今度は奇策なしの真っ向勝負。剣先を巨大化させ、相手を一刀両断する必殺魔法だ。


 並大抵の雑魚なら一撃必殺できるだろう。しかし、クロコダイルカルアは腰を引いたものの、両手を掲げて正面から受け止めた。

 白羽取りをしているのなら失敗している。クロコダイルカルアの両手にもろに切っ先が触れているのだから。しかし、明らかに傷を負っているのも厭わず、力づくでルビィの必殺魔法を止めようとしている。腕力で剣を防ぐって滅茶苦茶だ。


 ルビィも無理やり押し切ろうとしているものの、クロコダイルカルアの膂力の方が勝っていた。咆哮と共に腕を振るわれ、剣先が逸らされてしまう。

 必殺魔法を用いた攻撃が力業で防がれてしまった。先にダメージを与えたとはいえ、ルビィの精神的衝撃は計り知れない。前は拮抗していたはずなのに、力の差は歴然だった。

「あんた、いつの間に強くなったわけ。こんな馬鹿力持っていなかったはずでしょ」

「どうやら勘違いしているみてえだな。前はてめえの実力を見定めるために力を抜いていただけだ。俺様が本気になればてめえなんざいつでも倒せるんだよ。もちろん、本気で倒しに来ているってのは自覚してるよなあ」

 嫌悪感を丸出しにさせるように、クロコダイルカルアは舌なめずりをする。本来の実力を制御してルビィと互角。その言葉が本当なら、本気のあいつに勝てる見込みなんてない。


 相手の言葉はハッタリだと念じているのか、ルビィは果敢に太刀を振るう。しかし、腕力にものを言わせ、簡単に往なされてしまう。奴の顔に焦燥の色はない。むしろ、余裕さえ感じられる。やっぱり、本気を出していなかったというのはハッタリじゃなかったんだ。


 余裕綽々でルビィの猛攻を躱すクロコダイルカルア。もちろん、回避しているばかりではなかった。僅かな間隙を見定め、ルビィの手首を掴む。そして、腕力にものをいわせ地面に叩き付けたのだ。

 単なる力業とはいえ、とんでもない衝撃を受けていることは想像に難くない。ルビィはどうにか立ち上がろうとしているものの、受け身を取った際に重傷を負ったのか腕に力が入らないようだ。


 相手を卑下し、クロコダイルカルアはルビィの手首を踏みつける。

「もう終わりか。生意気を言っていた割に大したことねえな」

「まだよ。あんた、本気を出しているわりに全然学習していないじゃない」

 怪訝に眉を潜めるクロコダイルカルア。すると、やつの足もとが燻りだした。咄嗟に足を退けようとするが遅かった。

「燻る情熱よ! 爆炎となりて覚醒せよ! 情熱思慕バニラディザイア

 ルビィの手元から炎が巻き起こる。近距離から相手を焼き尽くすお得意の魔法だ。


 効果範囲が狭い分、威力は高い。例えサファイアの魔法を完封できたと自負していたとしても、彼女の渾身の魔法は防ぎきれないだろう。

「てめえ、こざかしい真似を」

 憎悪を吐き捨てるもクロコダイルカルアの肉体は炎に包まれていく。よし、このまま焼き尽くせばあいつを倒せる。

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